11:45 AM - 12:00 PM
[S01-04] Passive seismic reflection imaging for local earthquakes: RTM application to MeSO-net data
地震観測網の整備が進み、地震計の稠密展開や光ファイバーケーブルを用いた地震観測など、リアルタイム地震観測の機会とその重要性が増している。そのデータは、地震活動のモニタリングに加え、地震トモグラフィやレシーバ関数、雑微動解析など、地下構造の解析にも活用される。しかし、自然地震の反射波を用いた地下構造イメージングは一般的には行われていない。自然地震は地中を伝わるエネルギーが大きく、人工震源では調査の難しい深部の構造情報を得られる可能性がある。また、反射波を利用することで、地震波トモグラフィや同じ周波数帯を用いたレシーバ関数よりも高分解能な地下構造プロファイルの獲得が期待できる。そこで、自然地震記録に含まれる反射波を用いた地下構造のイメージングを目的として、これまでに、観測点の情報だけに基づくイメージング手法を開発し、数値シミュレーションを通じて理論的検証を行ってきた(Shiraishi, 2015; Shiraishi and Watanabe, 2021)。本研究では、首都圏地震観測網MeSO-netによる近地地震の観測データへ適用し、関東地方の深部構造イメージングを試みる。
自然地震を対象とする受動的反射波イメージング(Shiraishi and Watanabe, 2021)では、地中で生じた地震波が地表面と地下の境界面の間で反射する波群を構造イメージングに利用する。反射法地震探査で用いられるリバースタイムマイグレーション(reverse time migration, RTM)を応用し、地表付近の観測点で得られた波形記録を入力にして、すべての観測点から時間の進む方向に順伝播させた波動場と、時間を巻き戻す方向に逆伝播させた波動場をそれぞれモデリングし、各時間ステップにおける波動場の相関結果を時間積分する。この方法では、正確な震源情報を必要とせず、地震イベント毎に得られる構造断面イメージを多数加算することにより、有意な反射境界が結像して地下構造プロファイルが得られる。
本研究では、陸上稠密地震観測網の一つであるMeSO-netにより観測された近地地震データに対して提案手法を適用した。関東地方ではこれまでに、地震波トモグラフィやレシーバ関数解析を中心に、フィリピン海スラブと太平洋スラブの深度や形状ならびにそれらの相互関係、地殻内部の構造推定が行われてきたものの、反射波による深部構造の解析例は稀である。ここでは、MeSO-net観測点が概ね線形に配置されている西南西-東北東に190kmの解析測線を設定し、測線から5kmの距離範囲にある72観測点を利用した。まず、2017年4月から2020年3月までの気象庁一元化震源リストに基づき、観測点を含む180km×110kmの範囲内に震央がある、マグニチュード2.5以上の近地地震722イベントを抽出し、そのうち信号ノイズ比の高い方から200イベントを選択して解析に用いた。次に、信号を含む60秒間の鉛直方向成分記録に対して、0.5H-3Hzのバンドパスフィルタと自動振幅補償を適用した。波形記録の中には、構造不均質に起因する反射波と考えられるコヒーレントな波群を初動以降に確認することができた。解析に用いる二次元モデルは、Matsubara et al. (2019)の三次元地震トモグラフィによるP波速度構造から、測線に沿って水平距離190km×深度100kmを抽出し、グリッド間隔100m×100mに空間内挿した。そして、P波反射波を解析対象とし、スカラー波動方程式の有限差分法による音響波RTMを適用した。
解析の結果、深度20-40kmに複数の連続的な反射面がイメージングされた。これらは、地震波トモグラフィによる速度構造と調和的であり、また、既往研究で報告されているフィリピン海スラブの深度域に対応することから、スラブに起因する反射面を含む深部地殻構造を示唆するものと考えられる。この結果は、近地地震に含まれる反射波を利用することで、従来よりも高分解能な深部のイメージが得られ、詳細にスラブ形状の推定ができる可能性を示すものである。今後はイメージ品質の改善に向けた工夫や三次元的な解析により、自然地震を用いた従来の解析結果と相補的に、かつより詳細に深部構造の推定に貢献することが期待される。
謝辞:本研究はJSPS科学研究費基盤研究C(JP19K04028)の助成を受けたものです。また、気象庁一元化震源リストおよび防災科学技術研究所のMeSO-net観測データを解析に利用しました。
自然地震を対象とする受動的反射波イメージング(Shiraishi and Watanabe, 2021)では、地中で生じた地震波が地表面と地下の境界面の間で反射する波群を構造イメージングに利用する。反射法地震探査で用いられるリバースタイムマイグレーション(reverse time migration, RTM)を応用し、地表付近の観測点で得られた波形記録を入力にして、すべての観測点から時間の進む方向に順伝播させた波動場と、時間を巻き戻す方向に逆伝播させた波動場をそれぞれモデリングし、各時間ステップにおける波動場の相関結果を時間積分する。この方法では、正確な震源情報を必要とせず、地震イベント毎に得られる構造断面イメージを多数加算することにより、有意な反射境界が結像して地下構造プロファイルが得られる。
本研究では、陸上稠密地震観測網の一つであるMeSO-netにより観測された近地地震データに対して提案手法を適用した。関東地方ではこれまでに、地震波トモグラフィやレシーバ関数解析を中心に、フィリピン海スラブと太平洋スラブの深度や形状ならびにそれらの相互関係、地殻内部の構造推定が行われてきたものの、反射波による深部構造の解析例は稀である。ここでは、MeSO-net観測点が概ね線形に配置されている西南西-東北東に190kmの解析測線を設定し、測線から5kmの距離範囲にある72観測点を利用した。まず、2017年4月から2020年3月までの気象庁一元化震源リストに基づき、観測点を含む180km×110kmの範囲内に震央がある、マグニチュード2.5以上の近地地震722イベントを抽出し、そのうち信号ノイズ比の高い方から200イベントを選択して解析に用いた。次に、信号を含む60秒間の鉛直方向成分記録に対して、0.5H-3Hzのバンドパスフィルタと自動振幅補償を適用した。波形記録の中には、構造不均質に起因する反射波と考えられるコヒーレントな波群を初動以降に確認することができた。解析に用いる二次元モデルは、Matsubara et al. (2019)の三次元地震トモグラフィによるP波速度構造から、測線に沿って水平距離190km×深度100kmを抽出し、グリッド間隔100m×100mに空間内挿した。そして、P波反射波を解析対象とし、スカラー波動方程式の有限差分法による音響波RTMを適用した。
解析の結果、深度20-40kmに複数の連続的な反射面がイメージングされた。これらは、地震波トモグラフィによる速度構造と調和的であり、また、既往研究で報告されているフィリピン海スラブの深度域に対応することから、スラブに起因する反射面を含む深部地殻構造を示唆するものと考えられる。この結果は、近地地震に含まれる反射波を利用することで、従来よりも高分解能な深部のイメージが得られ、詳細にスラブ形状の推定ができる可能性を示すものである。今後はイメージ品質の改善に向けた工夫や三次元的な解析により、自然地震を用いた従来の解析結果と相補的に、かつより詳細に深部構造の推定に貢献することが期待される。
謝辞:本研究はJSPS科学研究費基盤研究C(JP19K04028)の助成を受けたものです。また、気象庁一元化震源リストおよび防災科学技術研究所のMeSO-net観測データを解析に利用しました。