日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

PM-1

2021年10月14日(木) 13:30 〜 15:00 C会場 (C会場)

座長:野田 雄貴(京都大学)、中野 優(海洋研究開発機構)

14:30 〜 14:45

[S09-16] 鬼界カルデラにおけるDASを用いた地震動、エアガン観測

〇中野 優1、杉岡 裕子2、荒木 英一郎1、中島 倫也1、伊藤 亜妃1、松本 浩幸1、横引 貴史1、利根川 貴志1、山本 揚二朗1、木村 俊則1、藤江 剛1、田中 聡1 (1.海洋研究開発機構海域地震火山部門、2.神戸大学海洋底探査センター)

鬼界カルデラは130ka、95ka、そして7.3kaにカルデラ形成を伴う巨大噴火を起こした火山として知られる。鬼界カルデラは九州南方に位置し、そのほとんどが海底下にあるため、火山の構造や活動については不明な点が多い。我々はその構造調査及び現在の活動把握のための新しい観測手法開発のため、鬼界カルデラ周辺に設置された光海底ケーブルを用いた分布型音響センシング(DAS)観測を行った。DASは光ケーブルにレーザー光を入射した際に生ずる後方散乱によって、ケーブルの軸方向の歪変化を検出する技術であり、ケーブルに沿った高密度多点の振動計測が可能なことから、近年地震観測への応用が進んでいる。海域火山において光海底ケーブルを用いたDAS観測が行われたのは、我々が知る限り本研究が初めてである。 鬼界カルデラ周辺の海域には、鹿児島県三島村が保有、管理する、三島村の竹島、硫黄島、黒島と本土の枕崎を結ぶブロードバンド通信のための光海底ケーブルが設置されている。我々はこれを活用し、鬼界カルデラにおいてDASによる地震動観測を行った。測器を薩摩硫黄島および枕崎に設置し、それぞれと竹島、黒島を結ぶ光海底ケーブルでのDAS観測を行った。観測はこれまでに2021年4月と7月の二回行った。4月の観測ではトカラ列島や種子島沖で起きたマグニチュード2~4クラスの地震の記録が得られた。枕崎からの測線では地震動の振幅は比較的一様であった。一方、硫黄島から延びる鬼界カルデラに近いケーブルでは、振幅に大きな地域性が見られた。これはケーブル直下の減衰構造もしくはケーブルと海底のカップリングに大きな地域性があるためであると考えられる。7月の観測では、同時に鬼界カルデラ周辺海域で行われたエアガン探査のシグナルを観測した。エアガンのチームと協力し、鬼界カルデラを挟んでDAS測線の反対側でエアガンを発振することで、カルデラ内部を通る波線のシグナルの観測を試みた。観測が終了したのは本稿作成の直前であり、今後詳しく解析を進めていく予定である。また、観測開始からエアガンが始まるまでの期間に、種子島沖や九州西方で起きた地震を多数観測した。また気象庁一元化カタログに無いローカルと思われるイベントも複数観測した。これらのイベントの解析により、鬼界カルデラ周辺の構造や火山活動を調べていく予定である。 謝辞:本研究にあたっては鹿児島県三島村の光海底ケーブルを利用させていただきました。記して感謝いたします。