14:30 〜 14:45
[S15-10] MeSO-net観測記録を用いた東京湾直下M7級スラブ内地震の強震動シミュレーション
首都圏に被害をもたらし、かつ発生頻度の高い地震として、関東直下のM7級の地震が懸念されている。中央防災会議(2004)ではそのようなM7級地震として「東京湾北部地震」や「多摩地震」といったフィリピン海プレート上面で発生するプレート間地震を想定していた。その後、中央防災会議(2013)は「東京湾北部地震」や「多摩地震」を想定していたプレート境界域では1923年関東地震により応力解放されていて、フィリピン海プレート内部の地震の方が蓋然性が高いとして、想定する地震のタイプをスラブ内地震に変更している。全国を均質にカバーする強震観測網K-NET及びKiK-netが構築されて以降、トリガによる強震記録の得られた東京湾を震央とする地震はいくつか発生している。2015年9月12日にはMJMA5.2、深さ57 kmの地震が発生し、南関東地域を中心に加速度計が展開されているMeSO-net(首都圏地震観測網)により高密度の強震動データが得られている。F-netメカニズム解によればこの地震は北西―南東方向に伸張軸をもつ正断層型であり、震源深さを考慮するとフィリピン海プレート内のスラブ内地震と考えられる。この地震の近傍、震源間の距離10 km未満で、2004年8月25日に同様のメカニズム解を持つMJMA4.4の地震が発生している。フィリピン海プレート内部に正断層構造が発達している可能性が示唆され、この震源メカニズムによる大規模地震を想定することは防災対策上必要と考えられる。本研究では関東直下の複雑な地下構造の影響やスラブ内地震特有の震源特性を適切に取り込んだ強震動評価を図るため、MeSO-net観測記録を用いた経験的グリーン関数(EGF)法による強震動シミュレーションを実施した。
2015年の地震の強震記録をEGFに用いるため、始めにその断層サイズとライズタイムを仮定する必要がある。鈴木・他(2021、連合大会)ではスケーリング則に基づきそれらのパラメータを仮定したが、本研究では2004年の地震の強震記録のEGFシミュレーションから、2015年の強震記録を再現するパラメータをグリッドサーチにより推定した。2004年にはMeSO-netが構築されていないため、K-NET及びKiK-netの強震記録を用いた。推定された断層サイズは1.0 km×1.8 km、ライズタイムは0.04秒であり、断層サイズはスラブ内地震のスケーリング則(岩田・浅野、2010)を外挿して想定される大きさ(7.5 km2程度)と比べて有意に小さかった。
続くM7級スラブ内地震の強震動シミュレーションについては中央防災会議(2013)が設定した強震動生成領域のサイズ(150 km2)と応力降下量(62 MPa)を参考に強震動生成領域を設定した。EGFの足し合わせ個数は強震動生成領域と2015年の地震のサイズの比より決定し、EGFの振幅の増幅倍率(応力降下量比)は強震動生成領域の地震モーメントと振幅を調整せずにEGFを足し合わせた場合の地震モーメントの比より決定した。始めの2015年の強震記録の再現も含め、Irikura (1986)によるEGF法を用いた。2015年の地震の南北走向と東西走向の2つの節面それぞれについて強震動シミュレーションを行い、それぞれ北方向と西方向に、断層の深部から浅部に向けて破壊が伝播すると仮定した。MeSO-netでは地震計が地中20 mに設置されており、強震動評価のためには地表相当に変換する必要がある。本研究ではMeSO-net観測点の地表における臨時観測により地表と地中で同時に観測した地震記録から推定した震度増分を用いて、地表相当の計測震度分布を推定した。
MeSO-net観測点におけるシミュレーション結果では地中20 mにおいても1,000 galを超えるような最大加速度が得られた。東京都西部から神奈川県北部や埼玉県南部にかけての地域や東京都の東部から埼玉県南部の地域に最大加速度の大きい領域が広がる様子が見られる。東西走向の断層モデルでは特に東京都西部の最大加速度が大きい領域が広くなり、地下構造特性に加えて破壊伝播の効果が影響したと考えられる。加速度応答スペクトルを見ると、周期0.2~0.3秒にピークを持つ観測点が多いが、1秒前後にピークを持つ観測点や0.2~0.3秒と1秒前後の2つのピークを持つ観測点も散見される。また、地表相当の計測震度分布では震度7となる点もみられ、南北走向の断層モデルでは千葉県や茨城県でも大きな計測震度が推定された。このように稠密なMeSO-netの観測記録を用いたEGFシミュレーションにより、想定される東京湾直下地震の地震動の様々な特性を面的に評価することができた。
2015年の地震の強震記録をEGFに用いるため、始めにその断層サイズとライズタイムを仮定する必要がある。鈴木・他(2021、連合大会)ではスケーリング則に基づきそれらのパラメータを仮定したが、本研究では2004年の地震の強震記録のEGFシミュレーションから、2015年の強震記録を再現するパラメータをグリッドサーチにより推定した。2004年にはMeSO-netが構築されていないため、K-NET及びKiK-netの強震記録を用いた。推定された断層サイズは1.0 km×1.8 km、ライズタイムは0.04秒であり、断層サイズはスラブ内地震のスケーリング則(岩田・浅野、2010)を外挿して想定される大きさ(7.5 km2程度)と比べて有意に小さかった。
続くM7級スラブ内地震の強震動シミュレーションについては中央防災会議(2013)が設定した強震動生成領域のサイズ(150 km2)と応力降下量(62 MPa)を参考に強震動生成領域を設定した。EGFの足し合わせ個数は強震動生成領域と2015年の地震のサイズの比より決定し、EGFの振幅の増幅倍率(応力降下量比)は強震動生成領域の地震モーメントと振幅を調整せずにEGFを足し合わせた場合の地震モーメントの比より決定した。始めの2015年の強震記録の再現も含め、Irikura (1986)によるEGF法を用いた。2015年の地震の南北走向と東西走向の2つの節面それぞれについて強震動シミュレーションを行い、それぞれ北方向と西方向に、断層の深部から浅部に向けて破壊が伝播すると仮定した。MeSO-netでは地震計が地中20 mに設置されており、強震動評価のためには地表相当に変換する必要がある。本研究ではMeSO-net観測点の地表における臨時観測により地表と地中で同時に観測した地震記録から推定した震度増分を用いて、地表相当の計測震度分布を推定した。
MeSO-net観測点におけるシミュレーション結果では地中20 mにおいても1,000 galを超えるような最大加速度が得られた。東京都西部から神奈川県北部や埼玉県南部にかけての地域や東京都の東部から埼玉県南部の地域に最大加速度の大きい領域が広がる様子が見られる。東西走向の断層モデルでは特に東京都西部の最大加速度が大きい領域が広くなり、地下構造特性に加えて破壊伝播の効果が影響したと考えられる。加速度応答スペクトルを見ると、周期0.2~0.3秒にピークを持つ観測点が多いが、1秒前後にピークを持つ観測点や0.2~0.3秒と1秒前後の2つのピークを持つ観測点も散見される。また、地表相当の計測震度分布では震度7となる点もみられ、南北走向の断層モデルでは千葉県や茨城県でも大きな計測震度が推定された。このように稠密なMeSO-netの観測記録を用いたEGFシミュレーションにより、想定される東京湾直下地震の地震動の様々な特性を面的に評価することができた。