The 2021 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Oct. 14th)

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

P

Thu. Oct 14, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P5 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S15P-05] Source Process of the Off Fukushima Earthquake of February 2021
- Analysis considering 3D subsurface structure -

〇Kazuhito HIKIMA1 (1.Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. , TEPCO Research Institute)

【はじめに】
 2021年2月13日に福島県沖で発生したMj7.3の地震では福島県および宮城県では最大震度6強に達し多くの被害が発生した.この地震は西北西-東南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型で,太平洋プレート内で発生した地震である(地震調査委員会,2021).スラブ内地震による生じる強震動を考える上で震源過程を知ることは重要であり,防災科学技術研究所(2021)による速報解をはじめ,既にいくつかの詳細な解析が行われている(津田・他,久保・他,染井・宮腰; 2021 JpGU,など).
 本発表では,既報と同様に強震記録を使い震源インバージョン解析を行った結果を報告する.解析に当たっては,余震の震源を再決定しその結果を考慮して断層面を設定するとともに,太平洋プレートを含む3次元速度構造の影響についても検討する.
【震源再決定】
 震源インバージョン解析に先立ち,本震を含めて一連の地震の震源再決定を行った.本震発生後4週間以内に発生した地震について,防災科研のWebサイトで公開されている気象庁一元化処理による検測値を用いて,DD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により震源決定を行った.以下の解析に用いた本震の震源位置は(37.7259°N, 141.6894°E, 55.17km)である.
 再決定された余震分布は主に北北東-南南西方向に並びその範囲は40 km程度に及ぶ.多くの余震は東南東側に高角に傾き下がる面上に分布しているが,一部ではより低角な面上に並ぶ余震群も見られる.これは気象庁(2021)などによる再決定震源分布と同様である.なお,本震震源は震源域の北東端に近い位置にあり,破壊は南南西方向にユニラテラル的に進展したものと考えられる.
【震源過程解析】
 震源域が海域に位置するためやや遠い観測点も含まれるものの,震源から120 km程度以内のKiK-netの波形記録を震源インバージョン解析に使用した.また,福島県内にある東京電力の地震観測点での観測記録も解析に加えた.なお,浅部地盤による影響を軽減するために地中記録の使用を基本とした.
 通常の震源インバージョン解析の際には,グリーン関数の計算はKohketsu (1985)により行い,計算に用いる1次元水平成層構造は,全国1次地下構造モデル(JIVSM-V1; Koketsu et al., 2012)の各観測点直下の速度構造を抜き出したものを余震記録で若干のチューニングを行ったモデルを使用した.
 震源解析には,加速度波形に0.03~0.6 Hz をフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を用い,インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; 引間, 2012)により行った.
 解析の際の断層面は,再決定した余震のうち,本震後24時間以内程度に発生した余震の分布をもとに,F-netによるメカニズム解なども参考にし,さらに予備的解析を行い観測波形と合成波形との残差も考慮して設定した.余震分布全体に拡がる主断層面は走向:37°,傾斜:45°の長さ40km,幅24kmの1枚の矩形断層とした.さらに,この面を仮定した解析に加えて,これらから離れた低角な余震の並びを考慮し,長さ14km.幅12kmの傾斜:20°の副断層面も付加したケースについてもインバージョンを実施した.なお,小断層サイズは2 km×2 km とした.
【解析結果(1次元構造)】
 主断層面のみを考慮した解析では,破壊は震源から南東側にほぼユニラテラルに進展し,震源から12~20 km程度離れたやや浅部に大きなすべりが求まった.その分布は既発表の解析結果と概ね整合している.最大すべり量は2m程度,地震モーメントは4.7×1019Nm (Mw7.0)となった.一方,副断層も設定した場合には,主断層面の最大すべり量は約1.8m,副断層では約1.6mのすべり量が求まり,全体ではM0=5.3×1019Nm (Mw7.1)とやや大きな値になった.
 観測波形の再現性の観点では,副断層面を設定した場合には特に福島県内での観測点の再現性が主断層面のみに比べると良好であった.インバージョン結果では副断層面上にも有意なすべりが求まっており,また,副断層面近傍の余震は本震直後から発生していることから,本震時には副断層面に相当する断層面もほぼ同時に活動したものと考えられる.
【3次元速度構造による波形計算】
 1次元速度構造による震源インバージョン結果を用いて,3次元速度構造モデル(JIVSM)を使い波動伝播シミュレーションを行った.暫定結果ではあるが,観測波形の主要な特徴が良好に再現されることを確認した.これにより仮定した速度構造モデルは震源インバージョン結果を大きく変える程は影響を及ぼさないものと考えている.ただし,細部では再現が不足している地点も見られるため,3次元速度構造を用いた震源インバージョンを実施し,より詳細な震源過程を求める予定である.

謝辞:本検討ではKiK-netおよびF-netメカニズム解,JMA一元化データを使用させて頂きました.