3:30 PM - 5:00 PM
[S15P-08] Concept of Earthquake Disaster Prevention Infrastructure Simulator for the Variety of Occurrences of the Great Earthquakes along the Nankai Trough
地震調査研究推進本部(以降「地震本部」と称す)の長期評価は、南海トラフでは、約100~200年間隔で繰り返し大地震が発生し、同じ領域で同じような地震が繰り返し発生するのではなく、その規模や震源域の広がりは多様性に富んでいることを指摘している。また、これまでの科学的知見等に基づき、M8クラスの大地震が発生し、残りの領域においても連動して大地震が発生する可能性が高まることや、通常と異なるゆっくり滑り等が観測される可能性が中央防災会議防災対策実行会議報告書等において示されている。このような国難級の南海トラフ地震に備えるため、科学的・定量的なデータに基づき、「通常と異なる現象」の把握とその推移予測を、迅速かつ精度よく評価することを目指した評価・情報発信手法の開発や、発信された情報を被害軽減に最大活用するため、「通常と異なる現象」が観測された場合、住民や地域、企業等の防災対策のあり方や、防災対応を実行する方策について研究を実施する「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」が開始された(小平・他;地惑連合2021年大会)。 本研究では、前述の研究プロジェクトにおける将来を予測する基盤的情報として、「通常と異なる現象」発生後の時間推移についてもその地震発生の時空間的な多様性の一例として取り込み、地震や津波のハザードやそれによって引き起こされるリスク情報を提供可能とする地震防災基盤シミュレータの開発構想について述べる。具体的には、「通常と異なる現象」を地震発生の多様性の一例としてとらえ、それが起こった後の時間推移を考慮した条件付きリスク評価手法の開発を行う。また、地震本部の知見を採り入れつつ、地震発生の多様性を表現するために構築された時空間的に膨大な組み合わせからなる断層モデル群に対して、長継続時間・広帯域強震動(長周期地震動を含む)や津波遡上を安定的かつ効率的にシミュレーションできる手法を開発し(前田・他、土肥・他;本秋季大会)、これらのハザード情報に基づいたリスク評価から事前避難、産業活動、大都市機能維持のそれぞれの地域性の観点から南海トラフの地震像を類型化する手法の開発を行い、類型化毎の代表的な広域災害シナリオを構築する(時実・他;本秋季大会)。このように創出したハザード・リスク情報を格納する情報基盤を、防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)、津波ハザードステーション(J-THIS)、リアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)と連携できる形で地震防災基盤シミュレータとして構築し、想定する利用者の目的に適した形態で提供可能とするとともに、利活用を推進する活動を通して防災対策に活かすことを計画している。 謝辞:本研究は文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として行われた。