The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S01. Theory and analysis method

[S01] AM-1

Tue. Oct 25, 2022 9:45 AM - 11:00 AM ROOM C (8th floor (Training Room 820))

chairperson:Kiyoshi YOMOGIDA(Earth and Planetary Dynamics, Grad Sch Science, Hokkaido University), Atsushi Nozu(Port and Airport Research Institute)

9:45 AM - 10:00 AM

[S01-01] Required conditions for the formulation of seismic interferometry under simultaneous incidence of P, S and Rayleigh waves

*Atsushi NOZU1, Yosuke Nagasaka1 (1. Port and Airport Research Institute)

著者らは,常時微動 H/V スペクトルを実務上多用する者として,常時微動 H/V スペクトルに関する正しい認識を得たいと願っている.常時微動 H/V スペクトルの波動論的な解釈のうち最も興味深いものはSanchez-Sesma et al. (2011)によるものであり,そこでは,常時微動H/Vスペクトルは載荷点と観測点が等しい場合のグリーン関数の比の平方根であると解釈されている.この解釈は,Wapenaar and Fokkema (2006)による地震波干渉法の定式化から直ちに導かれるので,Wapenaar and Fokkema (2006)による地震波干渉法の定式化が正しい限り,Sanchez-Sesma et al. (2011)による常時微動 H/V スペクトルの解釈も正しいということになる.そこで,Wapenaar and Fokkema (2006)による地震波干渉法の定式化を逐一追ってみると,遠方からP波,S波が入射する場合の定式化となっており,自由表面の存在を考慮する場合でも,Rayleigh波入射は考慮されていないことに気付く.Wapenaar and Fokkema (2006)による定式化では,遠方では媒質は均質であると仮定しているが,この均質媒質は地震基盤であると考えると,Sanchez-Sesma et al. (2011)の解釈を適用する上で都合が良い(図).そのためには,この均質媒質は全無限でなく半無限であると考えることが望ましく,それに伴い,Wapenaar and Fokkema (2006)による定式化を拡張して,Rayleigh波入射も考慮できるようにすることが望ましい.
そこで,本研究では,遠方での媒質は半無限であると考え,Wapenaar and Fokkema (2006)による定式化を拡張し,P波,S波,Rayleigh波の同時入射の下での地震波干渉法の定式化を行った.Wapenaar and Fokkema (2006)による定式化が成立するための条件として,外部から入射するP波とS波の単位体積あたりのエネルギーの比は,ES/EP=2*(α/β)3でなければならないことは広く知られている.同様に,Rayleigh波の入射も考慮する場合は,Rayleigh波の単位面積あたりのエネルギーをERとすれば,ER/EP=(π/ω)*α3/CR2でなければならないことが本研究の結果として示された.ここにωは角周波数,CRは半無限媒質におけるRayleigh波速度である.この比は,Weaver(1982; 1985)が拡散波動場におけるRayleigh波とP波のエネルギー比として示した値と同じである.
ただし,Weaverの論文は,ある周波数の近傍にある複数の振動モードのエネルギーがすべて同じになった状態を拡散波動場と定義した上で,その場合のRayleigh波とP波のエネルギー比に言及したものであり,現実の媒質においてそのようなエネルギー比が実現されることをどの程度期待して良いかは,Weaverの論文を読んだだけではわからない.P波とS波のエネルギー比については,これまで,媒質内部における散乱の観点(Ryzhik et al., 1996)や媒質表面における反射の観点(Egle, 1981; Nagasaka and Nozu, 2022)から検討がなされ,上述のエネルギー比が実現することの確からしさについて研究が進められているが,Rayleigh波とP波のエネルギー比については研究が不足していると言える.そこで,本研究では,その端緒として,P波とS波のエネルギー比に関連したAki(1992)の研究を拡張し,Rayleigh波とP波のエネルギー比について検討した.Aki(1992)の研究は,全無限媒質中に局在する任意形状の散乱体を考え,この散乱体によるP波からS波への変換率とS波からP波への変換率の比が,P波速度とS波速度の比によって簡単に表されることを示したものである.その結果から,このような散乱体によって弾性波が繰り返し散乱されるうちに,S波とP波のエネルギー比は上述の割合に収束していくことが期待される.本研究では,半無限媒質の表面付近に局在する任意形状の散乱体を考え,この散乱体によるP波からRayleigh波への変換率とRayleigh波からP波への変換率の比について検討した.その結果によると,このような散乱体によって弾性波が繰り返し散乱されるうちに,Rayleigh波とP波のエネルギー比は上述の割合に収束していくことが期待される.