[S01] AM-2

[S01-10] Amplitude dependence of seismic wave attenuation

*Hayato Tero¹, Junichi Nakajima¹ (1. Tokyo Institute of Technology)

　Q値とは非弾性減衰を表し，過去の観測や室内実験から弱い周波数依存性があることが知られている． そして実験的研究により，非弾性減衰の主なメカニズムは粒界すべりであること，Qは大きなひずみ振幅 に対して非線形な応答を示すことが明らかにされている．しかし，現在行われているあらゆる地震波の 解析において，非弾性減衰が振幅に依存しないことを前提としている．そこで本研究では，地震波の非弾 性減衰は本当に振幅に依存しないのかを，地震波の解析から求めることを目的とした．

　2003 年宮城沖地震の余震と 2008 年岩手・宮城内陸地震の余震を解析対象とした．マグニチュードの 幅は 3.0-5.3 である．まず震源が 5km 以内にある地震ペアを選択し，同一観測点における P 波初動のスペクトル比を計算した．次にそのスペクトル比を 2 つの地震の観測走時の平均で割り算し，震源距離の影響を取り除いた．最後に観測された振幅比がある幅（振幅比の常用対数で 0.2 毎）の中に入る全ての地震ペアをスタックすることで観測スペクトル比を計算し，それに理論スペクトル比をフィッティングすることで，観測振幅比の異なる地震間における平均的なQ^-1の差を決定した．

　その結果，観測振幅比が 1 の地震ペアでは平均的なQ^-1の差はゼロであるのに対し，振幅比が大きくなるとその差が徐々に大きくなることがわかった．この観測振幅比とQ^-1の差に正の相関があるという結果は，地震波が非弾性減衰の振幅依存を強く示唆している．