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[S02-06] Linked Dataを用いた地震データ整理と語彙の構築
本研究では,Linked Dataと呼ばれるWeb上のデータを互いにつなげることのできる形式で公開,共有する仕組みを用いて,地震データの整理を行う.また,地震データをLinked Dataで表現するために,地震に関する語彙を作成する. 地震動は波形データとして記録され,震源パラメーターの推定,地下構造の推定などさまざまな研究に使われている。またこれらの大量に蓄積された波形データは近年地震学の分野で盛んに用いられる機械学習において,震度予測や,観測波形の分類,P波/S波の検測等の機械学習を用いた研究の教師データとして利用されている.機械学習には大量の良質な教師データが必要であるため,地震観測網で観測されたデータは有用だが,それらの収集には困難が伴う. 例えば,防災科学研究所の波形データの取得サイトにはAPI等は用意されておらず,ユーザが日付時刻や震源,観測点等を指定して手動で波形データをダウンロードする必要がある.また,研究者が独自に観測した波形データや,気象庁や地方自治体の観測網を横断して検索するためには,波形データを集約したデータベースの作成等が考えられる.しかし,波形データの再公開はできず,また波形データを一意に指し示すURIを持たないため,研究者独自のデータベースが乱立することとなり,再利用可能なオープンな波形データベースの作成は難しい.そこで,地震動を観測した観測点の情報や震度,観測時刻,また観測された波形から推定された震源の位置やマグニチュードなど,「地震」のメタデータを収集し,Linked Dataの形式で公開する.Linked Dataは事物や概念が一意のURIを持ち,リンク構造を持つことでデータ同士をつなぐことができる.Linked Dataでは,事物や概念のリンク構造をトリプルと呼ばれるモデルで表現し,Webサイトのリンクを辿ることと同様に,プロパティ(リンク)を辿ることで,データを辿ることができる.ここで,Webサイトのリンクは,単なるつながりを示しているが,Linked DataのトリプルではリンクとなるプロパティもURIを持ちリンクの関係性を示している.本研究では,地震データに特化したプロパティとして,震源や震度,観測時刻など地震動に関する語彙や観測点に関する語彙を新たに定義する.例えば,「地震動」は,「震度」「マグニチュード」「発生時刻」等の語彙をプロパティとして持つ.また,「観測した波形」という語彙をプロパティとすることで,ある地震動を観測した波形のトリプルが作成され,「地震」そのものを観測することは難しいが,観測された地震動のリンク構造から「地震」を表現することが可能となる. 本研究では,地震語彙の作成,観測波形や震源の情報をもとに地震にURIを付与することでLinked Dataの形式で公開し,地震データおよび学習データとして利用可能な地震カタログの可用性と流通の可能性を検討する.