2:00 PM - 5:30 PM
[S02P-05] Estimating crustal movements during slow slip events from ocean bottom pressure gauge data using oceanic models
1.はじめに
海底圧力計(OBP)は、海底の上下変動を連続的に観測でき、スロースリップ(SSE)などのゆっくりした変動を捉えることにも有効である。しかし、OBPの観測データには、地殻変動以外に、海洋潮汐、海洋変動、機器の永年変化(ドリフト)などが記録されていて、これらを適切に取り除く必要がある。清水、他(JpGU、2021)は、観測データと海洋モデルをマルチチャンネル特異スペクトル解析(MSSA)を用いて成分に分解し、相関のよい成分のみを用いて観測データから海洋変動を取り除くという方法を開発した。これは、海洋モデルの不完全さを取り除き、より観測データから地殻変動を取り出しやすくする方法である。本研究では、更新された海洋モデルにこの方法を適用し、SSEによる変動の抽出を試みた。
2.方法
解析に使用した更新された海洋モデルは、気象庁気象研究所が開発した日本沿岸海洋再解析データセット 「MOVE/MRI.COM-JPN Dataset」(広瀬、他、2020)である。OBPデータは房総沖SSE領域で観測したデータ(2013~2015、2016~2018)を使用した。このデータには、2014年と2018年のSSEが含まれている。
OBPデータからは、潮汐モデル「Baytap08」(Tamura et al. 1991)を用いて潮汐成分を取り除き、直線フィットでトレンドを取り除いた。潮汐とトレンドを除いたデータと海洋モデルを用いてMSSAを行い、成分ごとにデータとモデルの相関を出し、相関の良い成分のみを用いて海洋モデルを再合成し、これを潮汐とトレンドを除いたデータから差し引いた。その後、SSEによる変動や季節変動等を見積もるため、パラメトリックモデル(Sato et al, GRL 2017)を当てはめ、スロースリップによる変動の抽出を試みた。
3.結果
更新された海洋モデルは、従来の海洋モデルと比較して非常によく観測データと合っていることがわかった。潮汐とトレンドを除いたデータから再合成した海洋モデルを差し引いたデータは、変動の標準偏差が1.81 hPaとなった。単純に海洋モデルをそのまま差し引いた場合の標準偏差は2.41 hPaであり、本研究の方法によって海洋変動がよりよく除けている可能性がある。再合成した海洋モデルを差し引いたデータに、パラメトリックモデルを当てはめると、残差の標準偏差は0.76 hPaとなった。推定されたスロースリップによる上下変動は、2018年のSSEに対して隆起域と考えられる場所で 1.48 mm(-1.49 hPa)の隆起となった。
謝辞
本研究の遂行にあたり、海洋研究開発機構「白鳳丸」、「なつしま」、海洋エンジニアリング(株)「第三開洋丸」、「第五開洋丸」を使用させて頂きました。各船長以下、乗組員の方々に感謝します。本研究は文部科学省の「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援および科研費(25287109) の補助を受けました。
海底圧力計(OBP)は、海底の上下変動を連続的に観測でき、スロースリップ(SSE)などのゆっくりした変動を捉えることにも有効である。しかし、OBPの観測データには、地殻変動以外に、海洋潮汐、海洋変動、機器の永年変化(ドリフト)などが記録されていて、これらを適切に取り除く必要がある。清水、他(JpGU、2021)は、観測データと海洋モデルをマルチチャンネル特異スペクトル解析(MSSA)を用いて成分に分解し、相関のよい成分のみを用いて観測データから海洋変動を取り除くという方法を開発した。これは、海洋モデルの不完全さを取り除き、より観測データから地殻変動を取り出しやすくする方法である。本研究では、更新された海洋モデルにこの方法を適用し、SSEによる変動の抽出を試みた。
2.方法
解析に使用した更新された海洋モデルは、気象庁気象研究所が開発した日本沿岸海洋再解析データセット 「MOVE/MRI.COM-JPN Dataset」(広瀬、他、2020)である。OBPデータは房総沖SSE領域で観測したデータ(2013~2015、2016~2018)を使用した。このデータには、2014年と2018年のSSEが含まれている。
OBPデータからは、潮汐モデル「Baytap08」(Tamura et al. 1991)を用いて潮汐成分を取り除き、直線フィットでトレンドを取り除いた。潮汐とトレンドを除いたデータと海洋モデルを用いてMSSAを行い、成分ごとにデータとモデルの相関を出し、相関の良い成分のみを用いて海洋モデルを再合成し、これを潮汐とトレンドを除いたデータから差し引いた。その後、SSEによる変動や季節変動等を見積もるため、パラメトリックモデル(Sato et al, GRL 2017)を当てはめ、スロースリップによる変動の抽出を試みた。
3.結果
更新された海洋モデルは、従来の海洋モデルと比較して非常によく観測データと合っていることがわかった。潮汐とトレンドを除いたデータから再合成した海洋モデルを差し引いたデータは、変動の標準偏差が1.81 hPaとなった。単純に海洋モデルをそのまま差し引いた場合の標準偏差は2.41 hPaであり、本研究の方法によって海洋変動がよりよく除けている可能性がある。再合成した海洋モデルを差し引いたデータに、パラメトリックモデルを当てはめると、残差の標準偏差は0.76 hPaとなった。推定されたスロースリップによる上下変動は、2018年のSSEに対して隆起域と考えられる場所で 1.48 mm(-1.49 hPa)の隆起となった。
謝辞
本研究の遂行にあたり、海洋研究開発機構「白鳳丸」、「なつしま」、海洋エンジニアリング(株)「第三開洋丸」、「第五開洋丸」を使用させて頂きました。各船長以下、乗組員の方々に感謝します。本研究は文部科学省の「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援および科研費(25287109) の補助を受けました。