3:45 PM - 4:00 PM
[S03-01] Experimental characterization of sensor drift of pressure gauges using a pressure standard
DONETやS-netの圧力計は圧力変化を高分解能で計測できるため、巨大地震発生の準備過程で発生する鉛直方向の地殻変動を計測できることが期待されている。しかしながら、圧力計はドリフト(校正値の経時変化)が発生することが知られており、地殻変動を計測するためには圧力校正が必要である。このドリフトによる誤差を補正するために、加圧-大気圧開放(ゼロ)-加圧のパターンを繰り返し、ゼロ点でのドリフトで加圧時のドリフトを補正する手法(A-0-A方式)があり、すでに海域での試験報告がある(太田ほか、2021)。
本研究では、複数タイプの圧力計に重錘形圧力天びんから一定圧力を連続印加して、ドリフト特性について考察する。室内実験ではDONETやS-netで採用されている水晶振動子を受圧部にもつ「水晶振動式圧力計」と主に産業分野で採用されてきたシリコン単結晶の半導体素子を受圧部にもつ「シリコン振動式圧力計」を計測した。水晶振動式圧力計は3式の8B7000-2-005(Paroscientific社)を、シリコン振動式圧力計は4式のEJX610A(横河電機社)ならびに3式のMT300(横河計測社)を準備して、合計10式の圧力計に重錘形圧力天びんから同時に加圧した(図1)。圧力計はすべて室温環境に設置して計測を行った。8B7000-I-005とEJX610Aは絶対圧力計であるのに対し、MT300はシールドゲージ圧計である。室内実験では、A-0-A方式の加圧パターンで印加した。具体的には、水深2,000 mに相当する20 MPaを約1ヶ月間連続印加して、1日1回約15分間だけ大気圧(ゼロ点)に開放する(図2)。20 MPaを連続印加しているときは重錘形圧力天びんによる基準圧力と圧力計の出力値との偏差を計算し、ゼロ点に開放したときは約10分間待機した後、4分間計測し重錘形圧力天びん内の大気圧計による基準圧力との偏差を計算する。
それぞれの圧力計について、加圧時とゼロ点の基準圧力との偏差の時系列変化の一例を図3に示す。黒点は加圧時の計測データ、赤線は加圧2日目からの指数項と線形項を組み合わせた近似曲線である(Watts & Kontoyiannis, 1990)。薄い黒点はゼロ点の計測データ、青線はその近似曲線である。シリコン振動式圧力計はゼロ点に開放することで、再加圧の直後には一時的にヒステリシスが観測されるが、間もなく元のドリフト曲線に漸近することがわかる。図3は圧力計の種類にかかわらず、一時的にゼロ点に開放しても連続印加の特性は保持されることを示唆する。約1ヶ月間の計測でそれぞれの圧力計のドリフト特性が認識できる。図4に圧力計の雰囲気温度を示すが、8B7000-I-005とEJX610Aの圧力偏差は温度変化に相関していることがわかる。MT300に長周期のゆらぎが観測されているが、雰囲気温度との明瞭な相関は見られない。図3の赤線の線形項の係数がドリフトの特性を表すが、20 MPaを連続印加したときの圧力計の係数は、(a) -0.09 hPa/日、(b) -0.12 hPa/日、(c) -0.10 hPa/日となっている。なおこれらは代表値ではなく、圧力計により個体差がある。
次に、ゼロ点の偏差の時系列変化について考察する。図3に青線で示した近似曲線の線形項の係数は、 (a) -0.10 hPa/日、(b) -0.19 hPa/日、(c) -0.09 hPa/日となった。これは上述の20 MPa印加時の係数と調和的である。室内実験でA-0-A方式により、水晶振動式圧力計のドリフト特性を評価した研究はある(Kajikawa & Kobata, 2019)が、シリコン振動式圧力計でも加圧時とゼロ点のドリフト特性が一致することを確認できた。実験室の温度環境で温度特性が計測データに重畳されたが、本研究の室内実験の結果はシリコン振動式圧力計でもA-0-A方式が適用可能なことを示唆する。
謝辞: 本研究の一部は、JSPS科研費(JP19H02411)の支援を受けている。
本研究では、複数タイプの圧力計に重錘形圧力天びんから一定圧力を連続印加して、ドリフト特性について考察する。室内実験ではDONETやS-netで採用されている水晶振動子を受圧部にもつ「水晶振動式圧力計」と主に産業分野で採用されてきたシリコン単結晶の半導体素子を受圧部にもつ「シリコン振動式圧力計」を計測した。水晶振動式圧力計は3式の8B7000-2-005(Paroscientific社)を、シリコン振動式圧力計は4式のEJX610A(横河電機社)ならびに3式のMT300(横河計測社)を準備して、合計10式の圧力計に重錘形圧力天びんから同時に加圧した(図1)。圧力計はすべて室温環境に設置して計測を行った。8B7000-I-005とEJX610Aは絶対圧力計であるのに対し、MT300はシールドゲージ圧計である。室内実験では、A-0-A方式の加圧パターンで印加した。具体的には、水深2,000 mに相当する20 MPaを約1ヶ月間連続印加して、1日1回約15分間だけ大気圧(ゼロ点)に開放する(図2)。20 MPaを連続印加しているときは重錘形圧力天びんによる基準圧力と圧力計の出力値との偏差を計算し、ゼロ点に開放したときは約10分間待機した後、4分間計測し重錘形圧力天びん内の大気圧計による基準圧力との偏差を計算する。
それぞれの圧力計について、加圧時とゼロ点の基準圧力との偏差の時系列変化の一例を図3に示す。黒点は加圧時の計測データ、赤線は加圧2日目からの指数項と線形項を組み合わせた近似曲線である(Watts & Kontoyiannis, 1990)。薄い黒点はゼロ点の計測データ、青線はその近似曲線である。シリコン振動式圧力計はゼロ点に開放することで、再加圧の直後には一時的にヒステリシスが観測されるが、間もなく元のドリフト曲線に漸近することがわかる。図3は圧力計の種類にかかわらず、一時的にゼロ点に開放しても連続印加の特性は保持されることを示唆する。約1ヶ月間の計測でそれぞれの圧力計のドリフト特性が認識できる。図4に圧力計の雰囲気温度を示すが、8B7000-I-005とEJX610Aの圧力偏差は温度変化に相関していることがわかる。MT300に長周期のゆらぎが観測されているが、雰囲気温度との明瞭な相関は見られない。図3の赤線の線形項の係数がドリフトの特性を表すが、20 MPaを連続印加したときの圧力計の係数は、(a) -0.09 hPa/日、(b) -0.12 hPa/日、(c) -0.10 hPa/日となっている。なおこれらは代表値ではなく、圧力計により個体差がある。
次に、ゼロ点の偏差の時系列変化について考察する。図3に青線で示した近似曲線の線形項の係数は、 (a) -0.10 hPa/日、(b) -0.19 hPa/日、(c) -0.09 hPa/日となった。これは上述の20 MPa印加時の係数と調和的である。室内実験でA-0-A方式により、水晶振動式圧力計のドリフト特性を評価した研究はある(Kajikawa & Kobata, 2019)が、シリコン振動式圧力計でも加圧時とゼロ点のドリフト特性が一致することを確認できた。実験室の温度環境で温度特性が計測データに重畳されたが、本研究の室内実験の結果はシリコン振動式圧力計でもA-0-A方式が適用可能なことを示唆する。
謝辞: 本研究の一部は、JSPS科研費(JP19H02411)の支援を受けている。