日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03] PM-2

2022年10月25日(火) 15:45 〜 16:45 C会場 (8階(820研修室))

座長:町田 祐弥(海洋研究開発機構)、木下 陽平(筑波大学)

16:15 〜 16:30

[S03-03] 海底光ファイバー歪計で観測した南海トラフの浅部ゆっくり滑りとそれに伴う超低周波地震活動について

*荒木 英一郎1、横引 貴史1、馬場 慧1、山本 揚二朗1、Zumberge Mark2、西田 周平1、町田 祐弥1、松本 浩幸1 (1. 海洋研究開発機構 海域地震火山部門、2. スクリプス海洋研究所)

南海トラフでのプレート沈み込み境界域の浅部では、繰り返しゆっくり滑りが発生することが掘削孔内の観測で明らかにされている(Araki et al., 2017). 広域でのゆっくり滑りの時空間的発生を検討するために、これまでの掘削孔の観測網の西側の南海地震震源域の沖合の、ゆっくり滑りの発生が想定される地域の近傍で海底ケーブル観測網(DONET)に接続することで長期間連続観測が行える海底光ファイバー歪計(Zumberge et al.,2018)を開発し、観測を行ってきた。 2022年1月12日~2月5日にかけ、海底光ファイバー歪計の観測データはゆっくりとした変化を示し、3週間ほどかけて0.7μ歪程度伸長を示した。また、この期間近傍で超低周波地震(VLFE)が観測されており、光ファイバー歪計の接続されているDONET-2Fノード近傍およびDONET-2Gノード近傍で活発なVLFE活動がみられた。さらに光ファイバー歪計では、近傍のDONET-2Fノード付近で発生したVLFEの多くについて、歪観測記録にゆっくりとしたステップ状の変化を観測した。うち、例えばDONETで地震波形インバージョンにより決定されたMw 4.4 のVLFEについて光ファイバー歪計によって観測された海底面歪変化量は20n strain 程度であった。これは、微小な変化ではあるが、VLFEの断層運動に伴う海底面変動を観測出来ているものと考えられる。また、観測されたVLFEにともなう歪変化は、VLFEの位置・メカニズムと光ファイバー歪計の位置によく関連した極性と推移を示しており、VLFEの断層近傍での歪計測によって、個別の超低周波地震における断層の滑り過程を議論することが可能であると考えられる。  一方、3週間の間に観測されたゆっくりとした変化量は、これらのVLFEでの断層運動で説明することは困難であった。従って、観測されたゆっくりとした歪変動は、VLFEがみられたDONET-2Fおよび2Gの広域を跨ぐ可能性のある浅部ゆっくり滑りであって、その滑りによって個別のVLFE断層をローディングし浅部ゆっくり滑りと同時期のVLFEのバースト的なクラスターとなったのではないか。VLFEの活動期間は観測された浅部ゆっくり滑りより少し遅れていることも、このようなVLFEの発生メカニズムをサポートするものと考える。