日本地震学会2022年度秋季大会

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D会場

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[S04] PM-3

2022年10月25日(火) 16:30 〜 17:15 D会場 (5階(520研修室))

座長:深畑 幸俊(京都大学防災研究所 地震災害研究センター)

16:30 〜 16:45

[S04-01] CMT解による観測点補正値を用いた沖縄本島南東沖の地震の震源再決定

*小松 正直1、喜多村 萌以2、竹中 博士1 (1. 岡山大学、2. 岡山大学(現在:気象庁))

本研究では沖縄本島南東沖で発生した地震の震源再決定を行う.地震の震源決定では,観測点が震源周辺に満遍なく分布していることが望ましい.しかし,南西諸島では観測点が島嶼にしかなく,震源に対してその分布には大きな偏りがある.この場合,震源決定の精度は悪くなる.震源決定の精度を向上するための方法の一つに,観測点の標高やその周辺の地下構造の不均質性が地震波の走時に与える影響を軽減する観測点補正値の利用がある.本研究では波形を用いるCMT解析により推定された地震の震源情報を用いて観測点補正を求め,震源再決定を行う.
 本研究で使用したデータは,気象庁一元化処理検測値データに記載された,沖縄本島南東沖で発生したMJMA2.0以上の地震(2000年~2021年)のP波とS波の検測値データである.また,分析に用いた観測点は24点で,21点が気象庁,3点が防災科学技術研究所の広帯域地震観測網(F-net)の観測点である.この24観測点のうち3観測点以上でP波の初動が読み取られた地震について震源再決定を行った.髙崎・他(2021,地震学会秋季大会)と同様の手法により,気象庁が推定した震央周辺を水平方向,深さ方向にグリッドサーチし,観測点間の観測走時差と理論走時差のRMSが最小となる点を震源とした.これにより発震時を未知パラメータとせずに震源決定を行うことが可能である.理論走時の計算には,気象庁の走時表(JMA2001)を用いた.また,走時の観測点補正は,先行研究で得られている,2007年10月から2020年4月までに同じ地域で発生した10個の地震のCMT解析結果(小松・他,2020,地震学会秋季大会)によるセントロイド震源を用いて計算した.観測点補正値については2種類のアプローチを行った.CMT解析された全10イベントの観測点補正値の平均を用いる場合(アプローチ①)と,海洋地殻内で発生した8イベントを震源の位置によって3つのグループに分け,気象庁が決定した震央に最も近いグループ内のイベントの観測点補正値のみを用いる場合(アプローチ②)である.
 図1は気象庁一元化震源ならびに震源再決定の結果を地図上にプロットしたものである.気象庁一元化震源の場合,沖縄本島から離れるにつれて震源の決定精度が悪くなり,海溝側で深さ50 km程度まで深くなるという不自然な特徴があった.しかし,今回の解析では2つのアプローチいずれの場合もフィリピン海プレートの沈み込みに沿って,海溝から沖縄本島に向かって震源が深くなった.また,海溝側では震央が南西–北東方向に帯状に分布することが明瞭に確認された.この地域は沖縄・ルソン断裂帯の北西端に位置しており,複数の海底活断層が南西–北東方向に延びている.活断層と震源分布はよく対応しており,海底活断層の活動との関連が示唆される.2010年2月27日に発生したMJMA7.2の地震(図1の星印)とその1日間の余震(図1の黒丸の領域)の再決定結果を別途地図上にプロットすると,震源分布は明瞭に東西方向に並んでおり,その長さは30 km程度である.気象庁や防災科学技術研究所等が推定したCMT解はいずれも東西方向に左横ずれ断層の成分をもつメカニズムであり,この方向に断層面を持つ地震と考えられる.最後に,2つのアプローチを比較すると,海溝側でアプローチ①よりもアプローチ②で震源が海溝寄りに決定され,深さは浅くなった.一方,沖縄本島側ではアプローチ②で島弧よりに決定され,両アプローチでの震源の位置の違いは小さい.アプローチ②では3つグループの境界付近で上記の特徴が分かれており,震源分布の空間的な隔たりも存在する.

謝辞:気象庁一元化処理震源ならびに検測値データを使用しました.本研究は科学研究費助成事業(基盤研究(B) 課題番号22H01311)による援助を受けました.