4:45 PM - 5:00 PM
[S04-02] Effects of the hot plume on the bending of the Philippine Sea slab beneath Kyushu (2)
1.はじめに
九州下に沈み込んでいるフィリピン海(PHS)プレートは、深さ70km辺りで、急激に高角に沈み込んでいる(例えば、Wang and Zhao, 2006)。この原因として、北西九州下に存在したといわれているホットプルームが南東方向に水平に流れ、スラブを「く」の字型に押し曲げた可能性が指摘されている(Shinjo et al., 2000)。 しかしながら、沈み込んだPHSプレートがこのように急激に折れ曲がる要因について未だ定量的に示された研究はない。本研究では、北西九州下から湧昇してきたホットプルームが、九州下に沈み込むPHSプレートの急激な屈曲に及ぼす影響について、数値シミュレーションを用いて定量的に評価することを試みた。本講演では香西他(2022, JpGU)のモデルに対し、新たにPHSプレートの沈み込み史を考慮したスラブ設定を行い、ホットプルームの温度や位置に関しても改良を加えてみたので、その結果について報告する。
2.モデル設定
本研究では、Torii and Yoshioka(2007)による手法を用いて、2次元箱型熱対流モデルを構築した。本モデルでは、北西九州下から湧昇するホットプルームと、九州の南東沖から沈み込むPHSプレートを数値シミュレー
ションで再現した(図1)。海溝から北西九州を通る測線に沿って計算を行い、モデル領域は水平方向800km、
深さ方向500kmとし、流線の格子数はそれぞれ81、51とした。 ホットプルームに関しては、温度を固定した熱源を設定した。温度範囲は Sakuyama et al. (2014)を参考に、深さ約50~100kmで1350~1500℃となるように設定した。また、その熱源を海溝から北西九州までの距離に相当する約400kmの位置に配置した。スラブに関しては、モデル領域の右側温度条件にプレート冷却モデル(McKenzie et al., 1969)を適用し、海溝軸から浅部では、PHSプレートの形状を模したガイドに沿ってプレートを沈み込ませ、その後自由に振舞わせた。
13Myrまで計算を行い、PHSプレートの沈み込み速度はプレートの沈み込み史を考慮し、測線に沿って13Ma
~3Maで7.7cm/yr、3Ma~0Maで6.4cm/yrとした。海溝における海底の年齢は、計算開始時は0Myrとし、時
間の経過とともに徐々に古くなるようにし、4.5Maで九州―パラオ海嶺の沈み込みに伴い年齢が約45Myrと急
激に古くなるように設定した。また粘性率の式にはBurkett and Billen (2010)を用いたが、温度依存性が高いため、粘性率の値に上限を設けて計算を行った。 これらの計算を通して、九州の南東部で、北西方向からほぼ水平に流れてきたホットプルームとPHSスラブが衝突した際、スラブがどのように挙動するのかについて調べた。
3.結果と考察
数値シミュレーションの結果、PHSプレートの沈み込みに伴い、厚さが時間的に変化するスラブが、湧昇するホットプルームに押されて折れ曲がる様子を確認することができた。PHSプレートの沈み込み方向にホットプルームがあるため、それを避けるように鉛直下方向へ曲がった可能性もある。また、プレートの沈み込みに伴い、マントルウェッジで時計回りの流れが発生し、ホットプルームがよりPHSプレートの方向へ引き寄せられる傾向が見られた。この現象はShinjo et al. (2000)でも言及されており、この効果によってスラブの屈曲が促進された可能性もある。 本数値シミュレーションにより、PHSプレートの沈み込み史を考慮したモデルにおいても水平方向に流れるホットプルームにより、スラブを屈曲させることが可能であることが示すことができた。このことは、PHSスラブの深さ70㎞辺りで見られる急激な折れ曲がりが、ホットプルームによる可能性があることを示唆している。
九州下に沈み込んでいるフィリピン海(PHS)プレートは、深さ70km辺りで、急激に高角に沈み込んでいる(例えば、Wang and Zhao, 2006)。この原因として、北西九州下に存在したといわれているホットプルームが南東方向に水平に流れ、スラブを「く」の字型に押し曲げた可能性が指摘されている(Shinjo et al., 2000)。 しかしながら、沈み込んだPHSプレートがこのように急激に折れ曲がる要因について未だ定量的に示された研究はない。本研究では、北西九州下から湧昇してきたホットプルームが、九州下に沈み込むPHSプレートの急激な屈曲に及ぼす影響について、数値シミュレーションを用いて定量的に評価することを試みた。本講演では香西他(2022, JpGU)のモデルに対し、新たにPHSプレートの沈み込み史を考慮したスラブ設定を行い、ホットプルームの温度や位置に関しても改良を加えてみたので、その結果について報告する。
2.モデル設定
本研究では、Torii and Yoshioka(2007)による手法を用いて、2次元箱型熱対流モデルを構築した。本モデルでは、北西九州下から湧昇するホットプルームと、九州の南東沖から沈み込むPHSプレートを数値シミュレー
ションで再現した(図1)。海溝から北西九州を通る測線に沿って計算を行い、モデル領域は水平方向800km、
深さ方向500kmとし、流線の格子数はそれぞれ81、51とした。 ホットプルームに関しては、温度を固定した熱源を設定した。温度範囲は Sakuyama et al. (2014)を参考に、深さ約50~100kmで1350~1500℃となるように設定した。また、その熱源を海溝から北西九州までの距離に相当する約400kmの位置に配置した。スラブに関しては、モデル領域の右側温度条件にプレート冷却モデル(McKenzie et al., 1969)を適用し、海溝軸から浅部では、PHSプレートの形状を模したガイドに沿ってプレートを沈み込ませ、その後自由に振舞わせた。
13Myrまで計算を行い、PHSプレートの沈み込み速度はプレートの沈み込み史を考慮し、測線に沿って13Ma
~3Maで7.7cm/yr、3Ma~0Maで6.4cm/yrとした。海溝における海底の年齢は、計算開始時は0Myrとし、時
間の経過とともに徐々に古くなるようにし、4.5Maで九州―パラオ海嶺の沈み込みに伴い年齢が約45Myrと急
激に古くなるように設定した。また粘性率の式にはBurkett and Billen (2010)を用いたが、温度依存性が高いため、粘性率の値に上限を設けて計算を行った。 これらの計算を通して、九州の南東部で、北西方向からほぼ水平に流れてきたホットプルームとPHSスラブが衝突した際、スラブがどのように挙動するのかについて調べた。
3.結果と考察
数値シミュレーションの結果、PHSプレートの沈み込みに伴い、厚さが時間的に変化するスラブが、湧昇するホットプルームに押されて折れ曲がる様子を確認することができた。PHSプレートの沈み込み方向にホットプルームがあるため、それを避けるように鉛直下方向へ曲がった可能性もある。また、プレートの沈み込みに伴い、マントルウェッジで時計回りの流れが発生し、ホットプルームがよりPHSプレートの方向へ引き寄せられる傾向が見られた。この現象はShinjo et al. (2000)でも言及されており、この効果によってスラブの屈曲が促進された可能性もある。 本数値シミュレーションにより、PHSプレートの沈み込み史を考慮したモデルにおいても水平方向に流れるホットプルームにより、スラブを屈曲させることが可能であることが示すことができた。このことは、PHSスラブの深さ70㎞辺りで見られる急激な折れ曲がりが、ホットプルームによる可能性があることを示唆している。