14:00 〜 17:30
[S06P-02] 東海地域におけるスロー地震発生域の地下構造
環太平洋のプレート沈み込み帯では,繰り返し発生する巨大地震に加えて,その震源域周辺では長期的・短期的スロースリップ,超低周波地震,深部低周波微動や低周波地震などの様々なスロー地震が発生しており,特に巨大地震とスロー地震はすみ分けて活動していることがわかっている(例えばObara and Kato, 2016)。また,短期的スロースリップやそれに伴って発生する深部低周波微動や低周波地震は,プレート境界周辺の高Vp/Vs領域に関連して活動していることが分かっており,流体の関連性が示唆されている(例えばShelly, et al., 2006; Kato et al., 2010)。東海地域では,フィリピン海プレートの沈み込みに伴って発生する微小地震から巨大地震,各種スロー地震が発生している。これらの活動域について,地震学的な地下構造の特徴を調べるため,2008年に人工地震探査を実施した。
探査のレイアウトは,巨大地震の(想定)震源域,長期的スロースリップの活動域,短期的スロースリップやそれに伴う深部低周波微動や低周波地震の活動域であるプレート境界からの反射波を観測できるように設計されている。なお,探査は総測線長280 kmとなる4本の測線(A, E, W, T)と6箇所の発破点(薬量は全て500 kg)からなる。特に南北方向のW測線と北西-南東方向のE測線は,両測線の北端で交差する逆V字を形成しており,スロー地震の活発な領域上とその領域よりやや東に外れた領域上にそれぞれ配置されている。この交差する北端には,スロー地震活動域の構造的特徴をわかりやすく捉えられるよう共通の発破点(S3)が設けられている。使用した地震計は固有周波数2 Hzの地震計(A, E, W測線)および4.5 Hzのジオフォン(T測線)である。これらの地震計を500-650 m間隔でそれぞれの測線に配置し,100 Hzのサンプリング間隔で連続収録した。観測点全体のノイズレベルは中央値で170 nm/s程度であり,どの測線も良好な人工地震記録が得られ,明瞭な反射波も複数確認できた。本解析では,発破点-観測点間の2次元レイトレーシング法を用いて,発破記録の初動走時や明瞭な反射波の走時をよく説明できるような地下構造を推定した。この際,地下深部の反射構造については,得られた探査記録に振幅補正やnormal move out補正をした反射断面を作成し,おおよその反射体のイメージを得てこれを初期構造とした。
解析の結果,人工地震記録にみられた反射波の一部は,深さ10-15 kmおよび20 km程度に位置する地殻内の反射体によるものと推定される。この地域には,中央構造線や複数の活断層があるため,地殻内の反射体はこれらに関連した構造的特徴を示しているかもしれない。より深部からの反射波についてもW測線で明瞭に見られており,A測線やT測線では不鮮明ながらも確認することができる。この地下深部からの反射波は,深さ30-40 km程度に位置し,約10度程度の北傾斜を持つ反射体によるものであると推定された。この地域に沈み込むフィリピン海プレートに伴って発生する地震は,この反射体よりもやや深い位置に分布し,その傾斜角も25度程度と相対的に高角であるため,この傾斜の緩い反射体と一致しない。しかしながら,精密に震源決定した深部低周波地震の分布(Ohta and Ide, 2011)と比較すると深さも傾斜も調和的であったため,人工地震探査で得られたこの反射体はプレート境界を示している可能性がある。一方で,W測線より東側のE測線では反射波が不明瞭であり,特に,E測線およびW測線の共通端点となる発破点S3による反射波の記録には明確な違いがでている。E測線のノイズレベルはW測線のノイズレベルと同程度であるため,このような反射記録の違いは,プレート境界付近の構造の違いによるものと考えられる。
探査のレイアウトは,巨大地震の(想定)震源域,長期的スロースリップの活動域,短期的スロースリップやそれに伴う深部低周波微動や低周波地震の活動域であるプレート境界からの反射波を観測できるように設計されている。なお,探査は総測線長280 kmとなる4本の測線(A, E, W, T)と6箇所の発破点(薬量は全て500 kg)からなる。特に南北方向のW測線と北西-南東方向のE測線は,両測線の北端で交差する逆V字を形成しており,スロー地震の活発な領域上とその領域よりやや東に外れた領域上にそれぞれ配置されている。この交差する北端には,スロー地震活動域の構造的特徴をわかりやすく捉えられるよう共通の発破点(S3)が設けられている。使用した地震計は固有周波数2 Hzの地震計(A, E, W測線)および4.5 Hzのジオフォン(T測線)である。これらの地震計を500-650 m間隔でそれぞれの測線に配置し,100 Hzのサンプリング間隔で連続収録した。観測点全体のノイズレベルは中央値で170 nm/s程度であり,どの測線も良好な人工地震記録が得られ,明瞭な反射波も複数確認できた。本解析では,発破点-観測点間の2次元レイトレーシング法を用いて,発破記録の初動走時や明瞭な反射波の走時をよく説明できるような地下構造を推定した。この際,地下深部の反射構造については,得られた探査記録に振幅補正やnormal move out補正をした反射断面を作成し,おおよその反射体のイメージを得てこれを初期構造とした。
解析の結果,人工地震記録にみられた反射波の一部は,深さ10-15 kmおよび20 km程度に位置する地殻内の反射体によるものと推定される。この地域には,中央構造線や複数の活断層があるため,地殻内の反射体はこれらに関連した構造的特徴を示しているかもしれない。より深部からの反射波についてもW測線で明瞭に見られており,A測線やT測線では不鮮明ながらも確認することができる。この地下深部からの反射波は,深さ30-40 km程度に位置し,約10度程度の北傾斜を持つ反射体によるものであると推定された。この地域に沈み込むフィリピン海プレートに伴って発生する地震は,この反射体よりもやや深い位置に分布し,その傾斜角も25度程度と相対的に高角であるため,この傾斜の緩い反射体と一致しない。しかしながら,精密に震源決定した深部低周波地震の分布(Ohta and Ide, 2011)と比較すると深さも傾斜も調和的であったため,人工地震探査で得られたこの反射体はプレート境界を示している可能性がある。一方で,W測線より東側のE測線では反射波が不明瞭であり,特に,E測線およびW測線の共通端点となる発破点S3による反射波の記録には明確な違いがでている。E測線のノイズレベルはW測線のノイズレベルと同程度であるため,このような反射記録の違いは,プレート境界付近の構造の違いによるものと考えられる。