日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S06. 地殻構造

[S06P] PM-P

2022年10月25日(火) 14:00 〜 17:30 P-2会場 (10階(1010〜1070会議室))

14:00 〜 17:30

[S06P-05] 埼玉県江南町での反射法探査 ——反射面傾斜角の深さ依存性の検出——

*大滝 壽樹1、加野 直巳2、横倉 隆伸2 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門、2. 元 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門)

我々は2001年に埼玉県大里郡江南町(当時,現熊谷市)の荒川近くの低地でP波震源を用いた3成分反射法探査を行った(加野・他,2003).探査地域は関東平野のほぼ中央に位置する.荒川の右岸にあたり,周囲は水田が広がる平坦な地域で,厚い堆積層におおわれている.大滝・他(2022)に示した,この探査記録を再解析してえられた深さ1 km程度までのP波速度および反射断面を紹介する.
測線はほぼ東西方向でその長さは2 kmほどである.探査は2回にわけて行った.受振点は96点の固定展開とし,総受振点数は192点,総測線長は1,910 mである.それぞれの受振展開で発震点数は213点および234点であり,オフセットは最大で2,752 mおよび 2,021 mである.受振および発震点の間隔は10 mであり,CMPの間隔は5 mである.受振点には固有周期10 Hzの3成分受振器を使用した.P波発震源としてバイブレータ(model Y2400)2台を使用した.スイープ周波数は10–80 Hz,スイープ長は20 sであった.スイープ波形のコンボリューション後の観測記録長は6秒,サンプリングは500 Hzである.
上下動受振器の記録を使って屈折波静補正を行った後,VPの解析をCMP番号で50点おき(250 mおき)にCMP 50からCMP 450までの9地点で行い,暫定的な重合速度を求めた.速度を求める際には,CMPギャザ上で反射波を追跡し,反射波の計算走時が観測走時およびその距離依存性と合うように求めた.この際,反射面の水平方向の連続性も考慮した.この後,残留静補正を行い,速度を再解析した.えられた速度は表層で200–300 m/s,1,000 mで2,700–3,000 m/s程度となった.えられた速度を使い,CMP重合し,マイグレーションを行い,P波のマイグレーション時間断面をえた.この結果を深度変換したものをP波のマイグレーション深度断面とした.
えられた反射断面は複数枚の傾斜の異なる反射面が確認でき,その傾斜から測線下で西から東への傾斜構造が卓越していることが分かる.その測線方向の傾斜角は7–12°ほどであり,深くなるにつれおよそ5–6 °/kmで増加している.このことは,傾動ひいては傾斜を起こした断層運動が一定のペースで進行していたことを示唆している.このような反射面が深くなるにつれその傾斜が増加する傾向は,時間断面でも見てとることができる.このため,この傾向は速度解析の誤差によるものではない.
この地域では,今回解析した測線と斜行する方向で山口ほか(2000)がP波反射法探査を行っている.この二つの測線は交差していないが,その距離は最も近いところで1 kmほどと比較的近い.彼らの反射断面にも傾斜構造が確認されている.測線間のなす角度,反射面の対応から,探査域下での真の傾斜方向を推定すると,おおよそ山口ほかの測線方向かそれより多少北向きとなった.この結果は,地層の一般走向から傾斜の方向は彼らの測線の方向である北東方向に近いとした山口ほかの議論を裏付ける.

加野直巳・横倉隆伸・山口和雄・大滝壽樹 (2003) 傾斜成層構造のPS反射法調査.物理探査学会第108回学術講演会論文集,227–230.
山口和雄・加野直巳・横倉隆伸・木口努・横田俊之・田中明子・佐藤比呂志 (2000) 深谷断層周辺における反射法地震探査 ——江南台地と妻沼低地の地下構造——.地震 第2輯,53, 115–125, doi:10.4294/zisin1948.53.2_115.
大滝 壽樹・加野 直巳・横倉 隆伸 (2022) 埼玉県江南町での反射法探査 ——反射面傾斜角の深さ依存性の検出——,地質調査研究報告,第 73 巻,第 1 号,p. 19–28.