The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (2nd Day)

Regular session » S06. Crustal structure

[S06P] PM-P

Tue. Oct 25, 2022 2:00 PM - 5:30 PM ROOM P-2 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

2:00 PM - 5:30 PM

[S06P-06] An Attempt to Discriminate Reflections Using Neural Networks for Improving Seismic Attenuation Profiling in Seismic Reflection Survey

*Haruka Kawabe1, Tetsurou Tsuru1 (1. Tokyo University of Marine Science and Technology)

研究背景と目的
反射法地震探査において、断層は主に反射面がずれることで観測できる。すなわち、反射面の存在しない部分では断層の観測が困難である。このため、従来の地震探査断面図では、反射面が存在する堆積層では断層を観測できるが、振幅が小さく反射面がおぼろげな火山岩質海洋地殻内部などでは断層の観測が困難であった。これに対し、著者らは、反射波の振幅以外の情報、例えば、減衰率を利用して解析をする研究を行っている。減衰率を利用した手法は計算した減衰率をマッピングして断面図を作成するため、通常の地震探査断面図と比較すると振幅の影響が少ない断面図を作成することができる。断層では岩石の破砕により、不均質な構造であり、減衰率が大きいと予測されるため、通常の解析では観測が困難だった部分においても、高減衰部として断層の可視化が期待できる。Tsuru et al.(2018)では減衰率計算手法が適用され、一部の断層下部に高減衰部が観測でき有効性が示された。しかし、正確な構造の可視化には至っておらず、精度の低さが課題となった。 精度が低い原因の一つに、減衰率の計算に用いる時間ウィンドウに関して研究が進んでいないことが挙げられる。減衰率計算手法では、地震探査データを分割して時間ウィンドウを作成し、ウィンドウ毎に減衰率の計算を行う。ここで、振幅の小さい反射波や散乱波をとらえるには、細かく地震探査データを分割することで、ウィンドウ内に含まれるノイズを少なくし、目的のシグナルのエネルギーの比を高くすることが有効と考えられる。さらに、減衰断面図はウィンドウ毎に計算した減衰率をマッピングしたものであるため、ウィンドウの細分化は断面図の分解能の向上につながる。しかし、細かい幅で分割すると、反射波や散乱波が含まれていないウィンドウも多く作成される。そのようなウィンドウから計算した減衰率を解析に用いると結果に悪影響を与え、精度低下の原因となる。よって、反射波や散乱波を含んでいるウィンドウのみを選択し、計算に用いるべきである。しかし、人間により大量のウィンドウの判別を行うことは、現実的でなく、客観性に欠ける。そこで、本研究ではニューラルネットワークを用いてウィンドウに反射波が含まれているか判別を試みた。

研究方法
ネットワークの学習、テスト共に合成したデータによって行った。振源としてRicker波を使用し、往復走時、反射係数、減衰率の3つのパラメータを考慮し反射波として作成した波形に、正規分布ランダムノイズを加えることで合成記録を作成し、これを分割することで時間ウィンドウのデータを作成した。各反射波の最大値を含んでいるウィンドウを正解のウィンドウとした。 判別には3層ニューラルネットワークを用いた。出力層の活性化関数にSigmoid関数を用い、出力を0から1の範囲内とし、これを反射波が含まれている確率の大きさとした。入力の配列について、1つのウィンドウに複数の反射波が含まれていた場合に、時間領域では反射波の位置関係によってピークの位置が様々に変化するのに対し、スペクトルは形状が変化するのみであり、判別が容易であると考えたため時間領域のデータを直接入力するのではなく、振幅スペクトルを入力した。学習したネットワークをテストデータに適用し、精度の評価を行った。

結果と今後の課題
正解ウィンドウのうち82.5%を出力値0.5以上と判別できた。出力値0.5以上と判別された中で、誤答だったもの(正解ウィンドウではなかったもの)は12.2%であった。また、正解ウィンドウの73.5%は出力値0.9以上であり、出力値0.9以上において誤答率は3.9%であった。誤答の中には、ノイズのみのウィンドウを選択した場合だけでなく、正解ウィンドウの前後に位置しており、反射波の一部が含まれてしまったウィンドウを選択した場合が存在し、出力値が大きい場合の誤答ほどその傾向が強かった。また、反射波の振幅が小さいウィンドウは出力値が小さい傾向となったが、前後のウィンドウと比較すると高い出力値となることが多いことが分かった。 今後の課題として、反射波全体は含まないが一部を含むウィンドウを誤答とするか考察を行い、正解データのラベル付けについて再考する必要がある。また、振幅が小さい反射波の判別において、前後のウィンドウと比較することで正答率を向上できないか検討する必要がある。加えて、ニューラルネットワークのモデルや、学習データの改善により精度が向上する可能性があるため、検討を行っていく必要がある。

参考文献 Tsuru T., Park J., No T., Kido Y., Nakahigashi K., 2018, Visualization of attenuation structure in volcanic area by seismic attenuation profiling, Earth Planets and Space.70:31