日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S06. 地殻構造

[S06P] PM-P

2022年10月25日(火) 14:00 〜 17:30 P-2会場 (10階(1010〜1070会議室))

14:00 〜 17:30

[S06P-07] インド洋ロドリゲス三重会合点付近、かいれい熱水域における人工及び自然地震による地震波速度構造

*森井 彩斗1、佐藤 利典1、高田 裕能1、山田 知朗2、篠原 雅尚2 (1. 千葉大学、2. 東京大学)

インド洋ロドリゲス三重会合点の北側に伸びる中央インド洋海嶺の第1セグメント東側には、かいれい熱水域があり、水素を豊富に含む熱水が噴出している。この熱水域は、白鳳海丘と呼ばれる玄武岩質の海丘にあるが、その周辺では斑れい岩やかんらん岩が確認されている。このような地下深部の岩石が海底面近くまで上昇し、海水との作用により蛇紋岩化することで水素に富んだ熱水が発生していると考えられている。この地域の地下構造等を解明するために、2013年海底地震計(OBS)と人工震源を用いた地震波探査を行った。これまで、高田・他(JpGU、2015)によってP波速度構造が報告され、白鳳海丘とその北側のYokoniwa Riseの地下 1-2km付近でP波速度6.0km/sを超える高速度領域が確認され、地下深部の岩石の上昇が示唆されている。これらが蛇紋岩化しているかどうかなどを調べるには、S波構造を求めることが重要となる。そこで本研究では、人工震源及び自然地震を用いたP波とS波の両方の速度構造の解析を行った。  
 
 2013年1月27日から3月19日にかけて海洋研究開発機構、観測調査船「よこすか」を用いて人工震源構造調査および自然地震観測を行った (YK13-01航海、YK13-03航海)。地震波探査では、19台のOBSと1台のエアガ ン(G.I gun)、シングルチャンネルストリーマーケーブルを使用した。S波と思われるPhaseを見やすくするため、地震計の水平2成分をRadial方向とTransverse方向に回転させて S波到達時刻の読み取りを行った。この際必要となる地震計の方位は水中直達波の振動軌跡から推定した。3次元速度モデルの推定は、まず人工地震のみを用いFAST(Zelt and Barton, 1998)を使用して行った。続いて、人工地震で推定したモデルを初期モデルとして自然地震も含めて3次元モデルを推定した。このとき、tomoDD(Zhang and Thurber, 2003)を使用した。
 人工地震のみを用いた解析の結果、P波速度構造から見えていた白鳳海丘とYokoniwa Riseの下の高速度領域において、Vp/Vs比は2.0程度となった。これは斑れい岩の1.9、かんらん岩の1.7と比べると高い値である。蛇紋岩のVp/Vs比は、1.8-2.2程度といわれており、この結果は蛇紋岩化を示唆する可能性がある。この結果を基に自然地震を用いて三次元モデルを作成し震源の再決定も行った結果、人工地震のみを用いた結果と同様に2.0程度の高いVp/Vs比が熱水噴出孔周辺で見られた。また、自然地震の震源を見ると、熱水噴出孔とその北西数kmでクラスターが見られた。こうした地震を引き起こす断層が熱水の移動経路となっており、そこで熱水とかんらん岩が反応し蛇紋岩化していることが考えられる。

謝辞: 観測に関して、海洋研究開発機構の観測調査船「よこすか」の船長と乗組員の方々の協力を頂きました。本研究は科研費新学術領域 20109002 の助成を受けて行われました。