The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (2nd Day)

Regular session » S06. Crustal structure

[S06P] PM-P

Tue. Oct 25, 2022 2:00 PM - 5:30 PM ROOM P-2 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

2:00 PM - 5:30 PM

[S06P-08] VSV and VSH structures beneath Asama volcano

*Yutaka NAGAOKA1, Kiwamu NISHIDA2, Yosuke AOKI2, Minoru TAKEO2 (1. Hot Springs Research Institute of Kanagawa Prefecture, 2. Earthquake Research Institute, Univ. of Tokyo)

近年、トバ湖カルデラやイエローストーンカルデラ、霧島山といった大規模なカルデラやカルデラ縁の火山において、地下のS波速度構造の異方性(VSVとVSHの不一致)が確認されている(Jaxybulatov et al., 2014; Jiang et al., 2018)。このような異方性はマグマだまりのシル状構造によって説明でき、一連のシル貫入によってマグマだまりが発達したことを示唆すると考えられている。しかし、どうしてシル状構造となるのか、またこのような構造は大規模なカルデラを形成する火山のみに共通な特徴であるのか、といったことは明らかになっていない。そこで本研究では、上記のような大規模なカルデラを形成していない浅間山について、マグマだまり内のS波速度異方性が見られるか調べた。
 本研究では、地震波干渉法により浅間山周辺の観測点間を伝播する表面波を用いて速度構造を推定する。地震波干渉法は脈動などのランダムな波動場の相互相関関数を計算することによって観測点間の地震波の伝播を抽出する手法である。相互相関関数は観測点間の速度構造に敏感であるため、地震波干渉法は局所的な構造推定に適している。
 解析には、浅間山周辺の46観測点(東大地震研、防災科研、気象庁)の3成分で記録された2005年7月~2007年7月の脈動記録を用いた。脈動記録の上下動成分の相互相関関数から観測点間を伝播するRayleigh波を、Transverse成分の相互相関関数からLove波を抽出した。抽出されたRayleigh波とLove波に対して、SPAC法(Aki, 1957)を用いて解析領域全体の平均的な1次元構造の位相速度分散曲線を測定した。分散曲線は0.1-0.5 Hzで安定的に測定でき、この周波数帯においてRayleigh波とLove波の位相速度は概ね一致する結果となった。マグマだまり内のS波速度異方性が確認された霧島山について、同様の手法により測定した平均的な1次元構造の位相速度分散曲線では、0.1-0.3 HzにおいてLove波位相速度の方がRayleigh波より最大1.2 km/s程度高速度となったが、浅間山ではこのようなRayleigh波とLove波の位相速度の違いが見られなかった。
 次に、各パスの位相速度を領域平均構造に対する速度異常として測定し、各パスの位相速度を用いて表面波位相速度トモグラフィーを行った(Rawlinson and Sambridge, 2005)。表面波位相速度トモグラフィーは、4つの周波数帯(0.1-0.2 Hz、0.15-0.3 Hz、0.2-0.4 Hz、0.25-0.5 Hz)で行った。その結果、Rayleigh波の0.1-0.2 Hzでは浅間山の山頂より西側に低速度異常が見られ、0.15 Hzより高周波数帯では山体全体が低速度異常となった。一方Love波では、全ての周波数帯で山体全体が低速度異常となり、山頂の東側で低速度異常がより強い傾向が見られた。今後、線形化インバージョン(Tarantola and Valette, 1982)を行い、VSV、VSH構造を推定する。