10:30 AM - 10:45 AM
[S07-04] Waveform inversion for the 3D S-wave velocity structure in the D″ beneath the Southern Atlantic
D″領域はマントルの最下部数百キロを占める熱境界層であり、マントルのダイナミクスを解明する上で重要な存在である。D″領域には、太平洋下とアフリカ下の2箇所に巨大S波低速度域(LLSVP)が存在することが知られている。これらは高温または化学組成(もしくはその両者の組み合わせ)の異常によるものと考えられるが、詳しいことは未だわかっていない。マントル対流シミュレーションの結果からは、マントル対流が熱のみの効果により駆動されていれば「プリュームクラスター」と呼ばれる小さなプリュームの集合体が形成される一方、化学組成異常がマントル対流の駆動に関与していれば「熱化学パイル」と呼ばれる大きな化学組成異常の塊がコア-マントル境界(CMB)直上に形成されることが示唆されている。これまでにも全マントルインバージョンにより最下部マントルの地震波速度構造を推定する研究が行われてきたが、その水平方向の解像度は1000 km程度であり、LLSVPが「プリュームクラスター」か「熱化学パイル」かを判別するには至っていない。
本研究では、最近公開されてきているアフリカ大陸の地震波観測網のデータを活用して、低速度異常の推定に有効な波形インバージョンを行うことで、アフリカLLSVP西側境界域にあたる南大西洋下のD″領域の詳細な3次元S波速度構造を推定する。使用する波形データは深発およびやや深発地震からの地震波を震央距離70〜100度で観測したおよそ3600本の広帯域地震波形のトランスバース成分であり、IRISから取得した。0.005 Hz〜0.1 Hzの周波数帯のフィルターをかけ、SおよびScSフェーズを含む時間窓を使用した。アフリカ大陸の観測点分布が偏っているために従来の手法では解像度の低い領域が生じてしまった。そこで本研究では、解像度の偏りを平滑化するためにマルチグリッド波形インバージョンの手法を開発した。その方法を適用することで、構造推定結果の安定性を確保しつつ概ね水平方向250 km、鉛直方向50 kmの解像度での構造推定を実現し、手法の妥当性を確認した。
得られた3次元S波速度構造モデルには、ブラジルの下にファラロンスラブと思われる高速度域がみられた他、南大西洋下のCMB直上に複数の小スケールの低速度域が確認された。低速度域は従来LLSVPとされてきた領域の内部だけでなくその西側にも存在しており、LLSVPがCMB直上で100 km程度の厚さで西側に伸びている可能性が示唆された。また、CMB直上の低速度域は熱化学パイルのような大きな塊は形成していないものの、プリュームクラスターとして上方に連なっている様子もはっきりとは確認できず、LLSVPの成因を解明するためにはさらなる解析が必要である。
本研究では、最近公開されてきているアフリカ大陸の地震波観測網のデータを活用して、低速度異常の推定に有効な波形インバージョンを行うことで、アフリカLLSVP西側境界域にあたる南大西洋下のD″領域の詳細な3次元S波速度構造を推定する。使用する波形データは深発およびやや深発地震からの地震波を震央距離70〜100度で観測したおよそ3600本の広帯域地震波形のトランスバース成分であり、IRISから取得した。0.005 Hz〜0.1 Hzの周波数帯のフィルターをかけ、SおよびScSフェーズを含む時間窓を使用した。アフリカ大陸の観測点分布が偏っているために従来の手法では解像度の低い領域が生じてしまった。そこで本研究では、解像度の偏りを平滑化するためにマルチグリッド波形インバージョンの手法を開発した。その方法を適用することで、構造推定結果の安定性を確保しつつ概ね水平方向250 km、鉛直方向50 kmの解像度での構造推定を実現し、手法の妥当性を確認した。
得られた3次元S波速度構造モデルには、ブラジルの下にファラロンスラブと思われる高速度域がみられた他、南大西洋下のCMB直上に複数の小スケールの低速度域が確認された。低速度域は従来LLSVPとされてきた領域の内部だけでなくその西側にも存在しており、LLSVPがCMB直上で100 km程度の厚さで西側に伸びている可能性が示唆された。また、CMB直上の低速度域は熱化学パイルのような大きな塊は形成していないものの、プリュームクラスターとして上方に連なっている様子もはっきりとは確認できず、LLSVPの成因を解明するためにはさらなる解析が必要である。