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[S08-03] 伊豆半島東方沖における2006, 2009年群発地震活動の震源過程の特徴と、過去の地震活動域との関係
1. 序論
伊豆半島の東方沖では、1970年代後半以降、地殻変動を伴う群発地震活動が繰り返し発生している(e.g. Hayashi and Morita, 2002; Ueno et al., 2012) 。1989年には群発地震活動の活発化と共に海底噴火が発生し、地震活動と地下の火山性流体との関係が議論されている (e.g., Okada and Yamamoto, 1991; Tada and Hashimoto, 1991; Ukawa and Tsukahara, 1996)。本研究では、伊豆半島東方沖で発生した群発地震活動のうち、2006年に発生した4地震(3.9≦Mw≦5.6)および2009年に発生した2地震(4.8≦Mw≦4.9)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる特徴を解析するとともに、過去の地震活動域との位置関係を比較し、特徴の背景を考察した。
2. データと解析手法
同じ年の群発地震活動中に発生した複数の小地震(3.4≦Mw≦3.9)の観測波形をEGFとして用い、震源時間関数の解析を行った。各年とも、解析対象地震とほぼ同じメカニズム解を持つ2地震の他に、解析対象地震と異なるメカニズム解を持つ地震をEGF地震として用いることで、結果の信頼性を確かめている。解析対象の6地震、およびEGFとして用いた7地震は、いずれも横ずれ断層型であった。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には、0.05 秒ずつずらした40個の時間窓を用いた。EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 秒の二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントがNIEDのCMT解のMw値に一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3. 結果と考察
解析から得た6地震の震源時間関数を図1に示す。以降、解析対象地震は、発生年の下2桁と規模の大きい順に振った番号を、その地震の名称とする。2006年に発生した地震について、EQ06-1(Mw5.6)は、破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、1秒程度尾を引くような破壊を起こしている。EQ06-2(Mw4.5)とEQ06-3(Mw4.3)は共に2回の破壊が見られ、EQ06-2は2回の破壊が同規模である一方で、EQ06-3は2回目の破壊が明らかに小さいという特徴がある。EQ06-4(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。また、2009年に発生した地震については、EQ09-1(Mw4.9)は大きな破壊を起こした後、小規模な破壊が連続して発生している。一方でEQ09-2(Mw4.8)では、主破壊後、0.2 秒程度の間隔を空けて、小規模な破壊が発生している。
結果から得られた震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布に関連すると考えられる。EQ06-1, EQ06-2は少なくとも20年程度群発地震が発生していない領域で起こった地震である。一方、EQ06-3は1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、既に存在する強度の低い部分を、破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域では、フレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示したのではなかろうか。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。
伊豆半島の東方沖では、1970年代後半以降、地殻変動を伴う群発地震活動が繰り返し発生している(e.g. Hayashi and Morita, 2002; Ueno et al., 2012) 。1989年には群発地震活動の活発化と共に海底噴火が発生し、地震活動と地下の火山性流体との関係が議論されている (e.g., Okada and Yamamoto, 1991; Tada and Hashimoto, 1991; Ukawa and Tsukahara, 1996)。本研究では、伊豆半島東方沖で発生した群発地震活動のうち、2006年に発生した4地震(3.9≦Mw≦5.6)および2009年に発生した2地震(4.8≦Mw≦4.9)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる特徴を解析するとともに、過去の地震活動域との位置関係を比較し、特徴の背景を考察した。
2. データと解析手法
同じ年の群発地震活動中に発生した複数の小地震(3.4≦Mw≦3.9)の観測波形をEGFとして用い、震源時間関数の解析を行った。各年とも、解析対象地震とほぼ同じメカニズム解を持つ2地震の他に、解析対象地震と異なるメカニズム解を持つ地震をEGF地震として用いることで、結果の信頼性を確かめている。解析対象の6地震、およびEGFとして用いた7地震は、いずれも横ずれ断層型であった。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には、0.05 秒ずつずらした40個の時間窓を用いた。EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 秒の二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントがNIEDのCMT解のMw値に一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3. 結果と考察
解析から得た6地震の震源時間関数を図1に示す。以降、解析対象地震は、発生年の下2桁と規模の大きい順に振った番号を、その地震の名称とする。2006年に発生した地震について、EQ06-1(Mw5.6)は、破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、1秒程度尾を引くような破壊を起こしている。EQ06-2(Mw4.5)とEQ06-3(Mw4.3)は共に2回の破壊が見られ、EQ06-2は2回の破壊が同規模である一方で、EQ06-3は2回目の破壊が明らかに小さいという特徴がある。EQ06-4(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。また、2009年に発生した地震については、EQ09-1(Mw4.9)は大きな破壊を起こした後、小規模な破壊が連続して発生している。一方でEQ09-2(Mw4.8)では、主破壊後、0.2 秒程度の間隔を空けて、小規模な破壊が発生している。
結果から得られた震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布に関連すると考えられる。EQ06-1, EQ06-2は少なくとも20年程度群発地震が発生していない領域で起こった地震である。一方、EQ06-3は1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、既に存在する強度の低い部分を、破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域では、フレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示したのではなかろうか。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。