The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] PM-2

Tue. Oct 25, 2022 3:15 PM - 4:30 PM ROOM A (1st floor (Kaderu Hall))

chairperson:Naofumi Aso(Tokyo Institute of Technology), Saeko Kita(Building research institute)

3:15 PM - 3:30 PM

[S08-08] Nankai Trough Earthquakes Estimated from GIS-based Historical Documents in Mie Prefecture

*Yoshiko YAMANAKA1 (1. Nagoya Univ.)

▼ はじめに
地震調査委員会長期評価報告書に掲載されている宝永地震の震度分布(H13度版は宇佐美他(1994); H25度版は松浦(2012))をみると,たとえば高知の震度が震度6以上から震度5になっており,今後の地域防災を考える上で検証が必要と思われるが,どの史料から震度を判断したのかわからないためすぐには検証ができない.
これまで刊行されている史料集の検索システムを構築してきた(山中, 2015, 2021).これによって膨大な史料集からターゲットの地震の史料を取り出すことが可能になった.しかし現状ではそれらの史料がどこの被害を記述したものかはわからないため,上記検証もかなりの時間を要する.
そこで、フリーのWEB-GISであるe-コミマップを用いて地方史や郷土資料,論文等の史料を整理することを試みた.
▼ e-コミマップの活用
史料に関する地名を調べるには,現在名称が残っていないことも多くかなりの時間を要する.現状では史料を使う研究者それぞれが同様の作業を行っており,非効率的である.そこでフリーのWEB-GISであるe-コミマップを用いて,場所を特定した史料を地図上に整理していく仕組みを考えた.e-コミマップはメンバー参加型で地図を作成でき,グループ内や外との情報共有が行えるWEBマッピングシステムである.
GISゆえ様々な地理空間情報を外部から呼び出し重ね合わせて統合して見ることができるため,史料を理解する上でも有益である.本研究では旧版地形図(明治期)をデジタル化したり,標高陰影図を作成し重ねて表示可能にした.そのほか国土数値情報や防災科技研によるJ-shisデータや産総研データなども併せて表示できる.昔の行政区分や旧版地形図で明治期に人が住んでいた場所などの情報は被害の大まかな場所の特定に大いに役立つ.
本システムでは,整理する項目を揺れ,津波,地殻変動・液状化,その他にわけてシンボルを変え,それぞれ史料名や史料内容,出典などを入力した.また地震毎に色を変えることで比較ができるようにした.
▼ 三重県への適用から震源域推定
手始めに三重県における明応地震,宝永地震,安政地震,昭和東南海地震について史料整理をしてみた.まだ入力途中で丁寧な考察はできていないが,いくつかの特徴が見えてきた.
安政東海地震では全般的に大きな津波被害を被っているが,これまでにも指摘があるように(たとえば行谷・都司,2005)南伊勢市東部では比較的被害が少ないことがわかる.また志摩半島の東側では最初に潮が大きく引いているのに対し,紀北以南では大きく引くことはなかったと言っている.さらに紀北以南での津波到来時刻を宝永と比較すると,宝永地震では揺れがおさまってから津波が来るまでに飯を炊くくらいの時間があったが,安政地震ではすぐにやってきている.時間差はあるものの被害そのものは宝永,安政とも大きな被害がでており,これまでに推定された浸水高をみてもさほどの違いはない.このことから宝永の方が規模は大きかったことが想像される.昭和東南海地震でもこの地域には5~20分程度で津波がきている.これらことから,安政や昭和では少なくとも紀北以南に近いところに震源域があるが,宝永ではそこは滑っていないということができるだろう.
もし現在求められているアスペリティが繰り返し滑っているという考え方(Yamanaka&Kikuchi,2004)に基づいてYokota et al. (2016)で求められたアスペリティ分布で考えてみる.昭和東南海地震の波形解析から(山中, 2006)滑ったアスペリティは彼らの求めた遠州灘と熊野灘の大きなアスペリティにあたる.安政東海でも紀北に津波を早くもたらせたアスペリティは図中の熊野灘のアスペリティの可能性があるが,本当に安政と昭和で同じところが滑ったかどうかはもう少し情報の整理が必要である.
 今後は和歌山県,愛知県,静岡県,高知県等の整理を進め,南海トラフ地震の震源過程について検討していく予定である.