11:00 〜 11:15
[S08-23] FBGセンサーを用いた4m大型二軸岩石摩擦実験における断層近傍のひずみ計測
大型岩石試料を用いた摩擦実験を行うことで,模擬断層面での震源核の広がりやその後の高速な破壊伝播を再現することが可能となるが,それらを詳細に観察するためには断層面近傍でのひずみの多点計測が必要である.しかし,ひずみゲージ毎に配線が必要であるため,その取り回しが計測点数の制約となる.本研究ではそのような状況を改善するために,光ファイバーを用いたひずみ計測手法であるFiber Bragg Grating (FBG)センサーに着目し,断層面近傍のひずみ変化を空間的に密に計測することを目的とした岩石試料のひずみ計測実験を行った.
FBGセンサーは,光ファイバーケーブルのコアの一部に長さ4-8mmに渡って回折格子(FBGゲージ)をあらかじめ加工し,その伸縮に伴う反射光スペクトルの波長変化を測定することでFBGゲージを貼り付けた部分の軸ひずみを計測する.FBGセンサーを用いたひずみ計測では,1本の光ファイバーに格子間隔の異なるFBGゲージを複数点加工し,それぞれの反射スペクトルをモニタリングすることで多点のひずみを同時計測することが可能である.さらに,インテロゲーターとよばれる波長変化を測定する装置の中には,複数本の光ファイバーを同時に使用できるものもある.近年地震波観測に応用されつつあるDistributed Acoustic Sensing(DAS)との違いは,FBGセンサーは光ファイバーにあらかじめFBGゲージを加工する必要がある一方で,DASよりも高い空間分解能(DAS: >1m, FBG > 10mm)を有している点が挙げられ,室内実験スケールではFBGセンサーの方が用途に適しているといえる.
本実験では,防災科学技術研究所が所有する4m大型二軸岩石摩擦試験機を用いてスティックスリップ実験(垂直応力6MPa)を行い,断層近傍の準静的なひずみ蓄積や動的なひずみ変化を計測した.FBGセンサーは一本の光ファイバーに合計20点,1点の長さ4mmのFBGゲージ(DTG-LBL-1550,ベルギーFBGSインターナショナル社製)を120mm間隔で加工し,下側岩石試料側面の模擬断層面直下2mmに一般的なシアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて貼り付けた.FBGゲージは模擬断層に対して平行に貼り付け,断層面に平行な軸ひずみ(εxx)を測定した.インテロゲーターは,計測分解能<1με,サンプリング周波数1kHzの性能を有し,20点のFBGセンサーを同時に計測できる波長帯域(1460nm-1620nm)を持つsi255(米国Luna社製)を用いた.また,FBGセンサーによるひずみ計測値の比較対象として,断層面を挟んで断層面直上10mmの上側岩石試料側面に取り付けられた半導体ひずみゲージを用いた. 光ファイバーの径が非常に小さい(~0.2mm)ことを活かしてFBGセンサーを断層面の極近傍に貼り付けたことにより,スティックスリップ時に半導体ひずみゲージの計測値(~5με)よりも大きなひずみ変化(~15με)を計測することができた.また,20点のうちひずみ変化を明瞭に計測できた数点については,半導体ひずみゲージとFBGセンサーの間で断層破壊の圧縮側・引張側に対応する対称性を確認できた.また,スティックスリップ実験で特徴的である準静的なひずみ蓄積に関してもFBGセンサーを用いて計測することができた.
一方で,断層面からの距離の違いと対称性を考慮に入れても,断層破壊時のFBGセンサーと半導体ひずみゲージによるひずみ変化の違いを定量的に説明することはできなかった.これは本実験における動的すべりが単純なモデルで説明できるものではなかったことによると考えられる.また,震源核の成長過程や破壊伝播速度を計測するためには,より高いサンプリング周波数が必要であることも明らかとなった.20点のFBGゲージのうち3点は接着不良により反射スペクトルの波長変化が計測できなかったことから,岩石試料への接着方法も改善する必要があることが分かった.本発表では,FBGセンサーを用いたひずみ計測結果の解析に加え,インテロゲーター内のガスセルを用いた波長校正に起因するランダムノイズの除去方法についても議論する.
今後,一本の光ファイバーで複数点のひずみを同時に計測可能であるという利点を活かし,半導体ひずみゲージよりも多点かつ断層により近いひずみ計測を実現することで,震源核の成長過程や破壊伝播様式の解明に貢献できると期待される.
FBGセンサーは,光ファイバーケーブルのコアの一部に長さ4-8mmに渡って回折格子(FBGゲージ)をあらかじめ加工し,その伸縮に伴う反射光スペクトルの波長変化を測定することでFBGゲージを貼り付けた部分の軸ひずみを計測する.FBGセンサーを用いたひずみ計測では,1本の光ファイバーに格子間隔の異なるFBGゲージを複数点加工し,それぞれの反射スペクトルをモニタリングすることで多点のひずみを同時計測することが可能である.さらに,インテロゲーターとよばれる波長変化を測定する装置の中には,複数本の光ファイバーを同時に使用できるものもある.近年地震波観測に応用されつつあるDistributed Acoustic Sensing(DAS)との違いは,FBGセンサーは光ファイバーにあらかじめFBGゲージを加工する必要がある一方で,DASよりも高い空間分解能(DAS: >1m, FBG > 10mm)を有している点が挙げられ,室内実験スケールではFBGセンサーの方が用途に適しているといえる.
本実験では,防災科学技術研究所が所有する4m大型二軸岩石摩擦試験機を用いてスティックスリップ実験(垂直応力6MPa)を行い,断層近傍の準静的なひずみ蓄積や動的なひずみ変化を計測した.FBGセンサーは一本の光ファイバーに合計20点,1点の長さ4mmのFBGゲージ(DTG-LBL-1550,ベルギーFBGSインターナショナル社製)を120mm間隔で加工し,下側岩石試料側面の模擬断層面直下2mmに一般的なシアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて貼り付けた.FBGゲージは模擬断層に対して平行に貼り付け,断層面に平行な軸ひずみ(εxx)を測定した.インテロゲーターは,計測分解能<1με,サンプリング周波数1kHzの性能を有し,20点のFBGセンサーを同時に計測できる波長帯域(1460nm-1620nm)を持つsi255(米国Luna社製)を用いた.また,FBGセンサーによるひずみ計測値の比較対象として,断層面を挟んで断層面直上10mmの上側岩石試料側面に取り付けられた半導体ひずみゲージを用いた. 光ファイバーの径が非常に小さい(~0.2mm)ことを活かしてFBGセンサーを断層面の極近傍に貼り付けたことにより,スティックスリップ時に半導体ひずみゲージの計測値(~5με)よりも大きなひずみ変化(~15με)を計測することができた.また,20点のうちひずみ変化を明瞭に計測できた数点については,半導体ひずみゲージとFBGセンサーの間で断層破壊の圧縮側・引張側に対応する対称性を確認できた.また,スティックスリップ実験で特徴的である準静的なひずみ蓄積に関してもFBGセンサーを用いて計測することができた.
一方で,断層面からの距離の違いと対称性を考慮に入れても,断層破壊時のFBGセンサーと半導体ひずみゲージによるひずみ変化の違いを定量的に説明することはできなかった.これは本実験における動的すべりが単純なモデルで説明できるものではなかったことによると考えられる.また,震源核の成長過程や破壊伝播速度を計測するためには,より高いサンプリング周波数が必要であることも明らかとなった.20点のFBGゲージのうち3点は接着不良により反射スペクトルの波長変化が計測できなかったことから,岩石試料への接着方法も改善する必要があることが分かった.本発表では,FBGセンサーを用いたひずみ計測結果の解析に加え,インテロゲーター内のガスセルを用いた波長校正に起因するランダムノイズの除去方法についても議論する.
今後,一本の光ファイバーで複数点のひずみを同時に計測可能であるという利点を活かし,半導体ひずみゲージよりも多点かつ断層により近いひずみ計測を実現することで,震源核の成長過程や破壊伝播様式の解明に貢献できると期待される.