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[S08-26] 断層面直下のせん断ひずみ分布データから断層摩擦パラメータとすべり分布の推定
近年、シェールオイルガス採掘や高温岩体地熱発電などに伴う地下注水などにより、誘発地震の発生が問題となっており、その破壊伝播メカニズムを解明により、誘発地震発生リスクの軽減に資する必要がある。断層面上のすべりの時空間分布や岩石の摩擦構成則を推定し、誘発地震の発生過程を推定することは重要である。室内実験においてさえ、断層面付近の歪み分布を計測する事は可能であるが2次元断層面上のすべり分布を直接測定する事は困難である。本研究では、大型岩石摩擦実験によりFukuyama et al. (2018, Tectonophys)によって得られた断層面近傍のせん断歪みのアレーデータを用いて、断層面上の摩擦パラメータとすべりの時空間分布の推定を行った。 野田・福山(2022, JpGU)は、境界積分方程式法を用いた平面断層の動的破壊伝播の計算手法(Hok and Fukuyama, 2011, GJI)により数値実験をおこなった。この計算手法では断層面を三角形要素に分割しその要素上ですべり速度が一定と仮定し断層面全体のすべり速度、せん断応力を計算する。摩擦構成則は線形すべり弱化摩擦構成則(Ida, 1972, JGR; Andrews, 1976, JGR)を用い、静摩擦力、動摩擦力、すべり弱化距離をパラメータとした。一定速度で伝播する正規化Yoffe関数(Tinti et al., 2005, BSSA)を用いて真のすべり分布を作成し、Hok and Fukuyama (2011)のプログラムを用いて剪断応力の時空間分布データを作成し擬似測定データとした。Hok and Fukuyama(2011)のプログラムを用い摩擦パラメータを変化させながら擬似入力データを再現する摩擦パラメータを求め、その際計算されたすべり分布と真のすべり分布を比較した。実験の結果、すべり開始位置から近い位置ですべり量、せん断応力分布を精度良く求めることが出来たものの、破壊開始点から遠ざかるにつれて誤差が大きくなり、摩擦パラメータの空間的不均質性の導入が必要なことがわかった。 Fukuyama et al. (2018)によって得られた、大型岩石摩擦実験の際の断層面直下で測定されたせん断歪アレーデータに対して、野田・福山(2022)の手法を適用し、摩擦パラメータとすべり分布の推定を試みた。実際の測定点は数値実験とは異なりまばらであるので、せん断歪のデータをcubic splineで内挿し、ひずみアレーの外側のデータはひずみアレー端の値と同じと仮定して外挿した。垂直応力は断層面上で一定の1.3MPaとした。また、初期破壊域は、数値実験結果を参考に直径20 cmの領域とした。本研究において対象としたイベントは、Fukuyama et al. (2018)においてType 2と区分された、断層内部から破壊が始まるイベントである。イベント発生直前の応力が静止摩擦力とほぼ等しく、イベント発生後の応力が動摩擦力に近い値となっていると考え、摩擦構成則を設定した。すべり弱化距離は試行錯誤的に与えた。最適なパラメータの評価は、測定点におけるせん断歪の時間変化の測定値と推定値の2乗残差を誤差関数として設定し、誤差関数が最小となる摩擦パラメータとその時の滑り分布を最終解とした。本発表において最終的に求められた摩擦パラメータ及びすべり分布を紹介する予定である。