The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] PM-1

Wed. Oct 26, 2022 1:45 PM - 3:00 PM ROOM A (1st floor (Kaderu Hall))

chairperson:Kurama OKUBO(NIED), Makiko OHTANI(ERI)

2:45 PM - 3:00 PM

[S08-32] Recurrence interval of M>7 Miyagi-ken-Oki earthquakes through a cycle of M~9 earthquake

*Ryoko NAKATA1, Naoki UCHIDA2,3, Takane HORI4, Ryota HINO2 (1. Graduate School of Science, The University of Tokyo, 2. Graduate School of Science, Tohoku University, 3. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo, 4. Research Institute for Marine Geodynamics (IMG), Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC))

【はじめに】
宮城県沖では、1978年宮城県沖地震のように、過去にM>7海溝型大地震が約40年間隔で繰り返し発生し、沿岸地域に被害をもたらしてきた。この履歴に基づく長期評価に加え、2011年東北地方太平洋沖地震 (M9.0)の影響を定性的に踏まえた結果、2021年1月時点では、宮城県沖でM7.4前後の地震発生確率は30年以内に60~70 %程度となっている [地震調査研究推進本部, 2021]。ここで想定されている地震の震源域付近で2021年3月20日と5月1日にM6.9と6.8の地震が発生した。これらの地震は、2011年東北沖地震以降ではこの地域では最大のプレート間地震であるが、規模は想定されている地震よりもやや小さく、震源域は1978年の震源域の西側部分 [吉田他, 2021; 地震調査研究推進本部, 2021]だけであった。
 Nakata et al. [2016]では、地震発生サイクルシミュレーションで得られた結果について、M9地震のすぐ後には、M9地震前の平均繰り返し間隔よりも短い間隔で、M>7宮城県沖地震が発生する場合が多く見られたと報告している。これは、M9地震の余効すべりが宮城県沖地震単独の場合よりも大きいために、宮城県沖の陸寄り地域での応力蓄積レートが高くなったためであると考えられる。本研究では、先行研究と同様の地震発生の原因であるプレート境界での応力蓄積と解放過程に基づく数値シミュレーションを行い、その結果の妥当性や、東北沖地震のようなM9地震サイクルにおける、宮城県沖地震の準備過程について、先行研究よりも詳しく検討を行った。

【手法】
地震発生サイクルシミュレーションは、先行研究 [Nakata et al., 2016]と同様の物理法則とプレート境界面形状で実施した。入力する摩擦パラメタの値や空間分布は、Nakata et al. [2016; 2021]で示した摩擦パラメタを基に微修正した。

【結果】
シミュレーション結果では、宮城県沖でのM>7地震の繰り返し間隔は、複数のM9地震サイクルを通して共通の時間的特徴を示していた。Nakata et al. [2016]で述べたように、M9地震直後はM9地震以前に比べて間隔が短い。その後、繰り返し間隔は一旦長くなるが、次のM9地震が近づくにつれて、繰り返し間隔は一定に近づいていった。また、宮城県沖地震による余効すべり分布は、M9地震直後は震源域のupdip側への伝播がほとんど見られないのに対し、M9地震前はupdip側への伝播が顕著であった。M9地震後数10年間の累積すべり量は、宮城県沖地震震源域のdowndip側ではM9地震による余効すべりの影響で大きくなるが、updip側では小さいか、固着していた。

【議論】
このシミュレーション結果の妥当性を検証したところ、観測に見られるいくつかの特徴と整合していることが確認できた。例えば、M9地震前の宮城県沖地震の余効すべり分布は、2005年の宮城県沖地震の観測から示唆されるもの [Hino et al., 2007; Miura et al., 2007; Uchida et al., 2007]と、累積すべり量の時空間分布は、2011年以降の繰り返し地震の観測から見積もられるもの [Uchida & Matsuzawa, 2013]と調和的であった。また、M9地震前に発生した複数回の宮城県沖地震の繰り返し間隔に大きなばらつきがないことも、過去の地震発生履歴と矛盾していないと言える。
 上述したようなM9地震サイクルを通した繰り返し間隔の変化は、宮城県沖地震震源域のupdip側、つまりM9地震震源域下限での固着域と非地震性すべり域の分布に起因していると考えられる。今後の宮城県沖地震の発生時期を議論するには、M9地震以前の繰り返し間隔を基に推定するだけではなく、測地・地震学的観測から見積もられる東北沖地震震源域内における固着の回復の程度を明らかにしたうえで、シミュレーション結果と照らし合わせて検討する必要があろう。

【謝辞】
本研究の一部は、JSPS科研費Grant Number JP21K04604、JP19H05596およびJP21H05206の助成を受けて実施されたものです。本研究のシミュレーション結果は、東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムおよびJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を利用して得られたものです。