3:45 PM - 4:00 PM
[S08-35] Simulation of long-term slow slip events in a long thrust fault with uniform frictional properties : Spontaneous break-up of events
南海トラフ巨大地震の発生予測に向けて、巨大地震発生サイクルにおけるスロー地震の挙動を理解することは重要である (Obara & Kato, 2016) 。
南海トラフ西部では、巨大地震震源域(固着域)の深部隣接領域でスロー地震の一つである長期的スロースリップイベント(L-SSE)が発生している。そして、その再来間隔や伝播方向等の特徴(以下発生様式と呼ぶ)が、走向方向に多様性を示すことが指摘されている (Takagi et al., 2019) 。
我々は、この四国中部~豊後水道~日向灘にかけての走向方向のL-SSEの発生様式の違いを説明するため、速度状態依存摩擦法則を使った数値シミュレーション研究を行っている。
現実的な3次元形状の断層モデルで実験を行う前に、L-SSEの相互作用について理解を深めるため、摩擦パラメータなどを走向方向に変化させた平面断層モデルを用いてシミュレーションを行った。具体的には、断層を走行方向にいくつかの領域に分割し、それぞれの領域ではパラメータは一様となるようにパラメータ分布を与えた。
その結果、一つのパラメータを走向方向に変化させるだけでも、走向方向の各領域の長さなどを変えることで、再来間隔が変化する場合もあればしない場合もあるという結果が得られた。再来間隔が変化する場合は、SSEが走向方向に分裂して発生していたが、再来間隔が変化しない場合は、SSEが分裂せずに一つのイベントとして発生していた。
このことから、SSEの走向方向の発生様式の多様性について理解を深めるためには、SSEが走向方向に分裂する条件を調べることが重要であると考えた。
SSEが走向方向に分裂する条件を調べるため、領域幅Wに比べて走向方向の長さL_strがかなり長い平面モデルでシミュレーションを行った。
その結果、領域幅や摩擦パラメータを一様にしても、走向方向の長さに応じて、SSEが2個以上に分裂する様子が観察された。また、摩擦パラメータを変えると、分裂の様子が変化することも分かった。
一例として、図にSSEが3つに分裂する様子を示す。左図はモデル領域を示す。モデルは固着域(深さ5-24km、滑り欠損速度v_lock = 3.0cm/y)・L-SSE域(深さ24-28km、幅W=24.1km、走向長さL_str=220km、震源核形成サイズh*=31.83km)・安定すべり(creep)域(深さ28-50km)の3領域から成り、傾斜角10°、プレート収束速度V_pl=6.0cm/yで走向方向に垂直に沈み込んでいる。右図にL-SSE 域の中心深さ26.0㎞(Y=158.2km)におけるすべり速度の時間発展を示す。一様な領域幅や摩擦特性を与えたにもかかわらず3つのセグメントに分裂してL-SSEが発生している様子が見て取れる。ただし、再来間隔や、滑り速度が速い領域の幅などはセグメントごとに変化せず、ほとんど同じとなっている。
これまでの研究では、プレート収束速度やプレート形状の変化に伴う深さ方向の領域幅(Perez-Silva A. et al., 2022) 、有効法線応力などの摩擦パラメータ (Li, H.et al., 2018) を変化させることこで、走向方向にみられるセグメント化されたSSEの再来間隔や伝播といった発生様式の相違や相互作用が説明されてきた。これに対して本研究では、このような物理パラメータの変化を仮定せず、走向方向に一様な領域幅・摩擦パラメータをもつ領域で計算をしても、走向方向にSSEが分裂することが明らかになった。また、分裂の個数や形態は、領域幅 Wや震源核形成サイズh*と走行方向の長さL_strの関係によって変化することを確認した。これまでの数値シミュレーションでは、深さ方向の領域幅Wと震源核形成サイズh*の関係に注目したものは多いが、走向方向の領域長さL_strに注目した研究は無いように思われる。
もちろん、これまでの研究に見られるように、セグメントごとに再来間隔等の多様性が生まれる主要因は、各種物理パラメータの相違であると考えられるが、本研究では、走向方向のL-SSE発生様式の多様性について、走向方向の長さL_strの影響という新たな知見を付け加えている。特に、L_str、W、h*とSSE分裂の関係の理解を深めると、プレート形状と観測されたSSEの分裂の様子からh*を推定できるかもしれないという点が重要である。
本発表では、SSEが分裂する条件と、走向方向の領域の長さL_strと領域幅 W、震源核臨界サイズh*の関係について議論する。
南海トラフ西部では、巨大地震震源域(固着域)の深部隣接領域でスロー地震の一つである長期的スロースリップイベント(L-SSE)が発生している。そして、その再来間隔や伝播方向等の特徴(以下発生様式と呼ぶ)が、走向方向に多様性を示すことが指摘されている (Takagi et al., 2019) 。
我々は、この四国中部~豊後水道~日向灘にかけての走向方向のL-SSEの発生様式の違いを説明するため、速度状態依存摩擦法則を使った数値シミュレーション研究を行っている。
現実的な3次元形状の断層モデルで実験を行う前に、L-SSEの相互作用について理解を深めるため、摩擦パラメータなどを走向方向に変化させた平面断層モデルを用いてシミュレーションを行った。具体的には、断層を走行方向にいくつかの領域に分割し、それぞれの領域ではパラメータは一様となるようにパラメータ分布を与えた。
その結果、一つのパラメータを走向方向に変化させるだけでも、走向方向の各領域の長さなどを変えることで、再来間隔が変化する場合もあればしない場合もあるという結果が得られた。再来間隔が変化する場合は、SSEが走向方向に分裂して発生していたが、再来間隔が変化しない場合は、SSEが分裂せずに一つのイベントとして発生していた。
このことから、SSEの走向方向の発生様式の多様性について理解を深めるためには、SSEが走向方向に分裂する条件を調べることが重要であると考えた。
SSEが走向方向に分裂する条件を調べるため、領域幅Wに比べて走向方向の長さL_strがかなり長い平面モデルでシミュレーションを行った。
その結果、領域幅や摩擦パラメータを一様にしても、走向方向の長さに応じて、SSEが2個以上に分裂する様子が観察された。また、摩擦パラメータを変えると、分裂の様子が変化することも分かった。
一例として、図にSSEが3つに分裂する様子を示す。左図はモデル領域を示す。モデルは固着域(深さ5-24km、滑り欠損速度v_lock = 3.0cm/y)・L-SSE域(深さ24-28km、幅W=24.1km、走向長さL_str=220km、震源核形成サイズh*=31.83km)・安定すべり(creep)域(深さ28-50km)の3領域から成り、傾斜角10°、プレート収束速度V_pl=6.0cm/yで走向方向に垂直に沈み込んでいる。右図にL-SSE 域の中心深さ26.0㎞(Y=158.2km)におけるすべり速度の時間発展を示す。一様な領域幅や摩擦特性を与えたにもかかわらず3つのセグメントに分裂してL-SSEが発生している様子が見て取れる。ただし、再来間隔や、滑り速度が速い領域の幅などはセグメントごとに変化せず、ほとんど同じとなっている。
これまでの研究では、プレート収束速度やプレート形状の変化に伴う深さ方向の領域幅(Perez-Silva A. et al., 2022) 、有効法線応力などの摩擦パラメータ (Li, H.et al., 2018) を変化させることこで、走向方向にみられるセグメント化されたSSEの再来間隔や伝播といった発生様式の相違や相互作用が説明されてきた。これに対して本研究では、このような物理パラメータの変化を仮定せず、走向方向に一様な領域幅・摩擦パラメータをもつ領域で計算をしても、走向方向にSSEが分裂することが明らかになった。また、分裂の個数や形態は、領域幅 Wや震源核形成サイズh*と走行方向の長さL_strの関係によって変化することを確認した。これまでの数値シミュレーションでは、深さ方向の領域幅Wと震源核形成サイズh*の関係に注目したものは多いが、走向方向の領域長さL_strに注目した研究は無いように思われる。
もちろん、これまでの研究に見られるように、セグメントごとに再来間隔等の多様性が生まれる主要因は、各種物理パラメータの相違であると考えられるが、本研究では、走向方向のL-SSE発生様式の多様性について、走向方向の長さL_strの影響という新たな知見を付け加えている。特に、L_str、W、h*とSSE分裂の関係の理解を深めると、プレート形状と観測されたSSEの分裂の様子からh*を推定できるかもしれないという点が重要である。
本発表では、SSEが分裂する条件と、走向方向の領域の長さL_strと領域幅 W、震源核臨界サイズh*の関係について議論する。