The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (1st Day)

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08P] PM-P

Mon. Oct 24, 2022 3:30 PM - 6:00 PM ROOM P-2 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

3:30 PM - 6:00 PM

[S08P-13] Investigation of multi-segment earthquake on the Median Tectonic Line active fault zone based on dynamic rupture simulation (Part 2)

*Yuko KASE1, Yumi URATA1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)

中央構造線断層帯は,日本で最も活動的な断層帯のひとつである.この断層帯のうち,讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間を対象として,連動可能性とその条件を検討するため,断層帯の置かれた条件を反映した動力学的震源モデルを構築し,動的破壊シミュレーションをおこなう.前回報告(加瀬・浦田,2021)では,既存情報を基にプロトタイプの震源モデルを構築し,試計算をおこなった.今回は,断層モデルと媒質モデルを見直すとともに,より現実的な応力場モデルを考慮した震源モデルを用いた結果を報告する.

断層モデル各区間の走向と長さは,都市圏活断層図(後藤・他,1998;中田・他,1998;岡田・他,1998;堤・他,1998;後藤・他,1999;中田・他,1999;岡田・他,1999;堤・他,1999;中田・他,2009;岡田・他,2009;岡田・他,2014)を基に,讃岐山脈南縁西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間が並行する部分について修正を加えた.傾斜角と地震発生層の深さについては,地震調査研究推進本部(2017)では中角度と高角度を併記しているが,有限要素法による静的解析により,中角度を設定した場合には,断層運動により相当の上下変位が生じ,地表での変位分布に関する既往の調査結果,および,変位様式や地形と整合しないことが示されている(文部科学省・産総研,2022)ことから,高角度(鉛直)のみを扱い,断層幅は20 kmとした.媒質モデルは水平3層構造とし,伊藤・他(1996),Nakajima and Hasegawa(2007)の紀伊半島・中国四国地方のモデル,文部科学省・東京大学地震研究所(2020),日本列島基盤岩類物性データベース(大熊・金谷,2007)を参考に決定した.

主応力軸の向きは,佐々連における応力解放法による応力測定データ(Tanaka, 1986;斎藤・他,1988)より,最大主圧縮応力(σ1)は東西方向,最小主圧縮応力(σ3)は南北方向とした.σ1とσ3の大きさは応力測定データを参照,また,中間主応力(σ2)は鉛直でかぶり圧に等しいとし,それぞれ深さに比例するとした.更に,応力降下量と強度の初期値の深さプロファイルを,深さ10 kmまで応力降下量,強度ともに深さに比例し,10 km以深では強度は一定値,応力降下量は深さとともに減少し,深さ15 kmでゼロ,15 km以深では負の応力降下量となるように設定した.その上で,予察的な数値計算で断層長とすべり量のスケーリング則(松田・他,1980)を満たす応力降下量のプロファイルを求め,動摩擦係数を得た.また,静摩擦係数は,強度と応力降下量の比(Andrews,1976;Das and Aki,1977)を1.3と仮定して求めた.摩擦係数は破壊の始まる領域の走向によって異なるが,動摩擦係数は概ね0.1〜0.5程度となった.臨界すべり量は,地表で2.5 m,深さ1 kmまで深さとともに減少して,1〜10 kmでは0.50 m,10 km以深では深さとともに増加するとした.

断層面の境界条件には,Coulombの破壊基準とすべり弱化の摩擦構成則(Ida,1972;Andrews,1976)を仮定し,弾性体の運動方程式を差分法(Kase and Day,2006)で解くことによって,断層面上の破壊伝播過程を求めた.

σ1の向きと破壊の始まる領域の走向によって各区間の応力状態が異なるため,それに対応した様々な連動パターンが得られた.例えば,讃岐山脈南縁東部区間東端から破壊が始まる場合には,4区間のほぼ全域にわたって破壊が広がり,石鎚山脈北縁区間から破壊が始まる場合には,石鎚山脈北縁西部区間が連動する.それに対し,石鎚山脈北縁西部区間から破壊が始まる場合には,破壊はこの区間に留まる.連動性は,初期応力状態に強く支配されるが,初期応力状態が同じでも,破壊開始点が異なると連動のパターンが異なる場合もある.また,複数区間の連動が生じるのは,連動する区間の強度が小さく,応力降下量が大きい場合であることが多いため,すべり量がスケーリング則で得られる値よりも大きくなりがちであるが,観測値とは整合的である場合もあり,詳細に検討する必要がある.

今後,応力場推定の結果を参照して,断層走向に沿った主応力軸の向きの変化を反映させた応力場モデルや,上記と異なる応力降下量と強度の深さプロファイルを用いたシミュレーションもおこない,1回の活動によるすべり量を説明しうる地震シナリオを求めるとともに,震源モデルの違いによる地震シナリオのばらつきについても検討する.

謝辞:本研究は,文部科学省委託事業「連動型地震の発生予測のための活断層調査研究」として実施されました.