日本地震学会2022年度秋季大会

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一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09] PM-2

2022年10月24日(月) 16:00 〜 17:45 B会場 (4階(大会議室))

座長:太田 和晃(防災科学技術研究所)、馬場 慧(東京大学)

17:30 〜 17:45

[S09-16] ヒクランギ沈み込み帯北部における2014年および2019年スロースリップイベントに伴うテクトニック微動活動の時空間分布

*青山 都和子1,3、望月 公廣1、山下 裕亮2、山田 知朗1 (1. 東京大学地震研究所、2. 京都大学防災研究所、3. 東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

ヒクランギ沈み込み帯はニュージーランド北島の東沖に位置しており、西側のオーストラリアプレートの下に東側から太平洋プレートが沈み込んでいる。ヒクランギ沈み込み帯では他の沈み込み帯よりも高頻度で大きなスロースリップイベント(SSE)が発生しており、スロースリップとそれに関連する地震イベントの関連を知る上で重要な地点である。さらにこの地域は沈み込んだプレート境界がとても浅いという特徴があり、地震がどこで発生しているかを詳細に知るために最適な領域の一つである。2014年から2015年にかけてヒクランギ沈み込み帯北部で行なわれたHikurangi Ocean Bottom Investigation of Tremor and Slow Slip(HOBITSS)では、海底地震計(OBS)と海底圧力計(APG)が展開された。観測期間中である2014年9月に大きなSSEが観測網下で発生し、陸上のGNSS観測点と海域のAPGのデータを用いてSSEのすべり分布が求められた(Wallace et al., 2016)。さらにこのSSEに関連するテクトニック微動が、SSEが発生した領域内の沈み込んだ海山のダウンディップ側で発生していることが発見された(Todd et al., 2018)。その後2018年から2019年にかけて同じ領域で行われた海底地震観測期間中の2019年3月に観測網下で大きなSSEが発生し、テクトニック微動が検出された(Yamashita et al.,2021)。しかし、2014年と2019年のSSE前後のテクトニック微動の検出には異なる手法が用いられているため、活動の大きさや時空間分布は直接比較できていない。そこで本研究では、Yamashita et al.(2021)によって2019年の微動活動検出に用いられたエンベロープ相関法(Envelope Correlation Method; ECM)を2014年の活動に適用し、2014年の活動と2019年の活動を比較し、その相違点を把握することによって、ヒクランギ沈み込み帯北部における微動活動の特徴を理解することを目指している。 Todd et al. (2018) では2014年9月から10月までの2ヶ月間のデータに対してイベント検出を行い、4-10Hz帯と12-20Hz帯の2つの周波数帯における振幅比によって通常地震とテクトニック微動を判別している。その結果120のテクトニック微動が検出され、震源位置についてはECM法による3次元グリッドサーチによって求められた。 Yamashita et al. (2021) では2-4Hz帯の波形に対してECM法を用いてテクトニック微動を検出し、震源の深さをプレート境界に固定しグリッドサーチが行われた。その結果、1700を超える数のテクトニック微動が検出された。 本研究では2014年-2015年に展開された固有周期1 Hzの短周期OBS5台と広帯域OBS2台の計7台で記録された2-4Hz帯の観測波形にYamashita et al. (2021)で用いられたECM法を適用し、テクトニック微動の検出を行った。ニュージーランドの陸上地震観測網であるGeoNetによる地震カタログに掲載されているイベントと同時間帯のイベントは除去した。また、短周期OBSと広帯域OBSの波形記録が相関を取れているかを確かめるため、これらの手順を短周期OBS5点のみ、短周期OBS5点と広帯域OBS1点、短周期OBS5点と広帯域OBS2点の、地震計の組み合わせ3パターンについて行った。 その結果として、3回の検出全てでおよそ2000イベントが検出された。検出されたテクトニック微動の活動は、SSEが発生したとされる期間(9月下旬〜10月上旬)の終わりあたりから活発になっていた。Todd et al. (2018) で検出された120個のイベントの震央と比較すると、今回検出されたイベントの震央は全体的に南側に決まっている。その一方、観測網の南東に位置する海山周辺で発見されていたテクトニック微動は検出されなかった。