10:30 AM - 10:45 AM
[S09-21] Static Coulomb stress transfer and seismicity rate change associated with the 2016 Kumamoto, Kyushu, Japan, earthquake
日奈久断層北端〜布田川断層の活動による2016年熊本地震(M7.3)から6年が経過した.同地震では,地震直後から約30-40km長の震源断層沿いだけではなく,北東には阿蘇,九重地域,南西には熊本市,有明海南部,八代市,八代海など,オフフォルト(off-fault)域での余震活動が顕著に認められた.これらの一部は,本震直後の由布でのM5.7など動的応力変化で誘発(Yoshida,EPS, 2016)された中規模地震とそれらの余震活動もあるが,多くが熊本地震の本震による静的クーロン応力変化(ΔCFF)と対応することが当初から指摘されていた(Toda & Stein, Temblor, 2016).本発表では,このような広義の余震活動について,本震後6年間という長期的視点から検討を加えるものである. 特に,本震後短期では検出し難い地震活動度の低下と負のΔCFFとの対応や,余震活動の時間減衰などについて言及する.まず,熊本地震からの6年間を3年区切りで前半(2016/4/16-2019/4/15)と後半(2019/4/16-2022/4/15)に分け,余震活動の継続性の観点から後半の活動に注目した.その際に,最初の熊本地震(2016/4/14 M6.5)前の(2000/1/1-2016/4/14)を常時地震活動期間とみなし,熊本地震後の後半3年の活動度と比較した.その結果を図1bに示す.おおむね熊本地震の震源から北東の阿蘇周辺,南西の熊本市〜八代市〜八代海,宮崎県北西部(図1e)などでは,余震活動の長期化が明確である.これらは,東西走向の正断層と北東走向の右横ずれ断層の正のΔCFF解と調和的である.なお,地域的な大森−宇津則の余震減衰パラメータと常時地震活動を考慮して余震継続時間をマッピングした結果,これらのオフフォルト余震活動は20年以上にもおよぶことがわかった.数年以内に常時地震活動レベルに戻るオンフォルト余震と対照的である.一方で,熊本地震震源断層の北側と南側では広域で静穏化が認められる.ただし,本震に先行する期間に,局所的な本震―余震,群発地震活動があった場合,見かけの静穏化が検出されることもある.ここでは,静穏化地域の時系列(M≥0.5)を確認し,活動の低下が熊本地震に対応するかどうかを慎重に検討した.2つの例を図1c, dに示す.朝倉市―日田市周辺(図1c)では,2009年にM4.7とその余震活動があり,結果的に熊本地震後に極端な低下として強調されてはいるが(図1b),その活動を除いても熊本地震後に静穏化しているのは明確である.一方で,図1dは一見活動の低下が認められるが,静穏化開始には約半年の遅れがある.これは,従来から説明されているように,1)本震の動的応力変化による中規模地震の誘発と関連の活動が数ヵ月以内に発生したこと,もしくは,2)レシーバ断層の多様性(Toda et al., Nature Geosci., 2013)による遅れ静穏化(delayed stress shadow)の可能性が考えられ興味深い.いずれにしても,熊本地震によるクーロン応力の正負と地震活動の活発化・静穏化はよく対応し,変化した地震活動は長期化している.