9:30 AM - 12:00 PM
[S09P-08] Temporal change in focal mechanisms of double seismic zone’s events in the Pacific plate after the 2011 Tohoku EQ
1.はじめに
日本付近で沈み込んでいる太平洋プレート内には、二重深発地震面が存在していることが知られている。佐藤・他(JpGU2018)や陳・他(JpGU2019)では、房総沖の太平洋プレート内の二重深発地震について、陸上観測と海底地震計観測のデータを用いて、2011年東北地方太平洋沖地震前後での発震機構を調べた。東北地震後の約1年間を約4カ月ごとに分けて発震機構の変化を調べて時間変化をみたところ、上面では東北地震直後では圧縮(down-dip compression)と引張(down-dip extension)が拮抗し、その後引張が卓越していた。下面では東北地震直後は圧縮が卓越していたが、その後引張が優位になっていたことが報告された。本研究では、東北直下の二重深発地震の発震機構が、東北地震前後でどう時間変化したのかについて報告する。
2.データと解析方法
使用データはHi-netのイベントデータと、F-netのCMT解である。対象の地震は、東北地震で大きくすべった範囲の西側である北緯37.5°〜39.5°、東経139°〜142°、深さ60 km以上、マグニチュード1.0以上とした。また対象の期間を2010年3月〜2013年3月と、東北地震前後合計3年とした。対象の地震を取るためにTSEIS(鶴岡、1998)を用いた。
対象の地震のうちマグニチュード3.5以上かつF-netにCMT解がある地震はそのまま使用した。マグニチュード3.5以下、もしくは3.5以上だがF-netにCMT解がない地震は、Hi-netから波形データをダウンロードして、微小地震検測支援ソフトWINシステム(卜部、束田、1992)を用いて解析を行った。WINの検測作業によって得られたP波の押し引きをもとにFPFIT(Reasenberg and Oppenheimer, 1985)を使用して発震機構解を求めた。
3.結果
現在解析中ではあるが、東北地震前1年間では、上面は圧縮の地震が引張の地震に比べ約2倍多くみられた。これに対して下面では、圧縮の地震よりも引張の地震が多くみられた。これらは沈み込むプレートのunbendingによって説明ができる。
東北地震後では、上面は地震直後の4か月では、圧縮と引張が拮抗していた。地震後4〜8か月では引張がかなり卓越していた。地震後8〜12ヶ月では、圧縮の数が増えているが、まだ引張が卓越していた。地震後1〜2年では引張に比べ圧縮が約2倍と、東北地震前1年と類似した結果となった。東北地震によってスラブ全体に圧縮の応力が加わったと考えられるにも関わらず、引張の地震が増えたことは興味深い結果といえる。
下面では地震直後の4か月では圧縮が卓越していた。地震後4〜8か月では引張が卓越していた。地震後8〜12ヶ月では圧縮と引張が拮抗し、この傾向は、地震後1〜2年でも続いていた。この結果は東北地震によって圧縮の応力場になったというところまでは説明ができるが、その後引張が卓越したあとに圧縮と引張の地震が拮抗していることは興味深い。また、これらの結果は房総沖での結果と類似しており、東北だけの地域的なものではない可能性がある。
謝辞
本研究では、解析を行うにあたって、Hi-net、F-netのデータを国立研究開発法人防災科学技術研究所よりダウンロードさせて頂きました。また、東京大学地震学研究所のWINシステムと地震解析プログラムTSEISを使用させて頂きました。ここに記して厚く御礼申し上げます。
日本付近で沈み込んでいる太平洋プレート内には、二重深発地震面が存在していることが知られている。佐藤・他(JpGU2018)や陳・他(JpGU2019)では、房総沖の太平洋プレート内の二重深発地震について、陸上観測と海底地震計観測のデータを用いて、2011年東北地方太平洋沖地震前後での発震機構を調べた。東北地震後の約1年間を約4カ月ごとに分けて発震機構の変化を調べて時間変化をみたところ、上面では東北地震直後では圧縮(down-dip compression)と引張(down-dip extension)が拮抗し、その後引張が卓越していた。下面では東北地震直後は圧縮が卓越していたが、その後引張が優位になっていたことが報告された。本研究では、東北直下の二重深発地震の発震機構が、東北地震前後でどう時間変化したのかについて報告する。
2.データと解析方法
使用データはHi-netのイベントデータと、F-netのCMT解である。対象の地震は、東北地震で大きくすべった範囲の西側である北緯37.5°〜39.5°、東経139°〜142°、深さ60 km以上、マグニチュード1.0以上とした。また対象の期間を2010年3月〜2013年3月と、東北地震前後合計3年とした。対象の地震を取るためにTSEIS(鶴岡、1998)を用いた。
対象の地震のうちマグニチュード3.5以上かつF-netにCMT解がある地震はそのまま使用した。マグニチュード3.5以下、もしくは3.5以上だがF-netにCMT解がない地震は、Hi-netから波形データをダウンロードして、微小地震検測支援ソフトWINシステム(卜部、束田、1992)を用いて解析を行った。WINの検測作業によって得られたP波の押し引きをもとにFPFIT(Reasenberg and Oppenheimer, 1985)を使用して発震機構解を求めた。
3.結果
現在解析中ではあるが、東北地震前1年間では、上面は圧縮の地震が引張の地震に比べ約2倍多くみられた。これに対して下面では、圧縮の地震よりも引張の地震が多くみられた。これらは沈み込むプレートのunbendingによって説明ができる。
東北地震後では、上面は地震直後の4か月では、圧縮と引張が拮抗していた。地震後4〜8か月では引張がかなり卓越していた。地震後8〜12ヶ月では、圧縮の数が増えているが、まだ引張が卓越していた。地震後1〜2年では引張に比べ圧縮が約2倍と、東北地震前1年と類似した結果となった。東北地震によってスラブ全体に圧縮の応力が加わったと考えられるにも関わらず、引張の地震が増えたことは興味深い結果といえる。
下面では地震直後の4か月では圧縮が卓越していた。地震後4〜8か月では引張が卓越していた。地震後8〜12ヶ月では圧縮と引張が拮抗し、この傾向は、地震後1〜2年でも続いていた。この結果は東北地震によって圧縮の応力場になったというところまでは説明ができるが、その後引張が卓越したあとに圧縮と引張の地震が拮抗していることは興味深い。また、これらの結果は房総沖での結果と類似しており、東北だけの地域的なものではない可能性がある。
謝辞
本研究では、解析を行うにあたって、Hi-net、F-netのデータを国立研究開発法人防災科学技術研究所よりダウンロードさせて頂きました。また、東京大学地震学研究所のWINシステムと地震解析プログラムTSEISを使用させて頂きました。ここに記して厚く御礼申し上げます。