The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (3rd Day)

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09P] AM-P

Wed. Oct 26, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S09P-14] Hypocenter distribution using S-net data during 2016 April – 2022 March

*Azusa NISHIZAWA1, Masashi Mochizuki1, Kenji Uehira1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

日本海溝および千島海溝域にS-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench:日本海溝海底地震津波観測網)が設置され,沿岸から海溝軸外側(東側)にかけての海域における地動連続記録が安定的に取得できるようになった.これにより海域の地震活動はどの程度把握できるようになったかを調べるために,2016年4月1日から2022年3月31日までの6年間に発生したいくつかの顕著な地震活動域における震源分布を求めた.震源決定のコードはNonLinLoc(Lomax et al., 2000,2014)を使用し,S-netの各観測点に対してマルチチャネル反射法地震断面図から求めた堆積層厚に基づく補正(西澤ほか,2022)を行った.速度構造モデルは各領域において実施された構造探査結果を参照し,沈み込む太平洋プレート上面の深さはIwasaki et al. (2015)及びLindquist et al. (2004)によるプレート境界の位置から設定した.また,各領域において震源決定に使用した全観測点に対して震源計算時の走時残差(O-C)から求めた観測点補正値を適用して最終的な震源分布を得た.
  宮城県沖では2021年3月20日18時09分にMJMA 6.9(最大震度5強, F-net:Mw 7.0,深さ62 km)の地震が,また2021年5月1日にはMJMA 6.8(最大震度5強, F-net:Mw 6.7,深さ56 km)の地震が発生した.これら地震の発震機構はいずれも西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で,太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震であった.1978年宮城県沖地震のすべり域を含むこれらの地震の活動域において,S-net及びHi-netの手動読取値データを使用して求めたそれぞれの地震の余震は最近6年間の地震活動分布から推定されるプレート境界にほぼ沿って分布しているが,本震の位置はプレート境界よりも5 km程度深く,破壊開始点が断層面の深部付近にあることを示唆する.また,MJMA 6.8の震源の深部には2011年4月7日(Mw 7.1)の余震と考えられる活発な地震活動が見られる.
 福島県沖において2022年3月16日23 時 34 分にMJMA 6.1の地震が発生し,2分後の23時36分にはMJMA 7.4 (F-net Mw7.4) の地震が発生した.MJMA 7.4の地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で,震源の位置は太平洋プレート内部であり,2021年2月13日に発生したMJMA 7. 3の余震活動域内と推定された.S-net及びHi-netの手動読取値データを使用して求めた2022年3月16日の地震の余震分布は複数の断層面の存在を示唆し,その南端が2021年2月13日 MJMA 7.3の地震活動域の北端部に重なり,2021年2月13日の地震発生後に活発化した余震活動の北端部西側の活動がさらに北へ延びたことを示した.2021年及び2022年のいずれの余震活動域も2016年4月以降2021年2月13日の地震発生前までの期間は地震活動が低い領域であり,2021年2月13日の地震発生以降はその余震活動は南方に延びたが北方には延びず,北方で2022年の地震が発生したことがわかった.
 1994年12月28日三陸はるか沖地震(MJMA 7.6)及び2011年3月11日15時08分に発生した岩手県沖地震(MJMA 7.4)の余震域からアウターライズまでの領域のやや活発な地震活動についても,S-netの手動読取値データを用いて(海溝軸東側の地震についてはS6のデータ取得開始後の2017年4月13日以降について)震源決定を実施した.海溝軸東側には観測点が少ないためアウターライズ領域の震源の深さを正確に決めることは難しいが,2011年岩手県沖地震の余震域にあたる北緯39.5度近傍では地震活動がプレート境界に集中しており,海溝軸からプレート境界の深度10kmの間ではプレート境界に沿う地震活動が見られないことを示した.一方,1994年三陸はるか沖地震の余震域である北緯40.5度付近では海溝軸近傍浅部にも地震活動が検出されたが,震源の深さの決定精度について今後も十分な検証が必要である.