The 2022 SSJ Fall Meeting

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Poster session (3rd Day)

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09P] AM-P

Wed. Oct 26, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S09P-18] Construction of the automatic hypocenter relocation system using the 3D velocity model for the Nankai Trough area

*Katsuhiko Shiomi1, Makoto Matsubara1, Shoji Sekiguchi1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

西南日本下の地下構造は,南海トラフから沈む込むフィリピン海プレートの存在などにより,三次元的な変化に富んでいる.これにより,この地域の詳細な震源情報を得るためには,適切な三次元地震波速度構造モデル(3D構造モデル)を用いて波線経路や走時を評価する必要がある.防災科研では,文部科学省委託研究「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(防災南海PJ)において,3D構造モデルを用いた自動震源決定システムの構築を担っている.本システムは,南海トラフ及びその周辺域で発生する地震の活動状況を逐次的かつ適確に把握し,プレート固着状態等の現状評価に資する情報を提供することを目的とする.昨年度末に本システムのプロトタイプを構築し,試験稼働を開始したので,今回,本システムの概要ならびにシステムの性能評価の現状について報告する.

本システムは,防災科研が別途運用する自動震源決定システム(Hi-netシステム)により得られた震源情報を受信し,その情報が解析対象範囲やマグニチュード等の計算条件に合致した場合に起動する.震源計算方法として,既存の①Pseudo-bending法(Koketsu & Sekine, 1998, doi: 10.1046/j.1365-246x.1998.00427.x)により走時を逐次計算する方法のほか,予め仮想震源と観測点間の走時表を整備し,それを参照する方法として,②関口の方法(2010, doi: 10.24732/nied.0000120)と③NonLinLoc法(Lomax et al., 2000)を採用した.計算方法や計算に用いる3D構造モデル,計算パラメタ等に応じて独立したサブシステムを構成することとし,各サブシステムには1台の仮想マシン(VM)を充当した.必要な入力情報及びそのフォーマットは,計算方法ごとに異なる.本システムでは,まず,Hi-netシステムから全てのサブシステムでの処理に必要な情報を一括抽出した「共通ファイル」を作成し,この共通ファイルを各計算方法で用いる入力ファイルに変換した上で,各VMに転送することで震源決定が自動的に行われる.Hi-netシステムで妥当な震源情報が得られなかった地震やシステム停止中(含,稼働前)の地震等の震源再計算を行う場合,初期震源や検測値情報を「共通ファイル」形式で用意し,簡単なコマンドを実行することで,各サブシステム上にセットされた震源再計算を随時実行することも出来る.計算結果の出力も計算方法ごとに異なるが,出力ファイルについても,一旦,共通の保存フォーマットに変換した後,共通のデータベース(DB)に登録することとした.共通フォーマットを採用することで,DBとのインターフェイスを担うプログラムをひとつに限定することが出来る.DB上では,各地震に対して独立したインデックスを付与し,計算方法や計算条件の違いはサブインデックスで区分する形式とした.

2022年度時点では,3D構造モデルとして海陸の観測データに基づくトモグラフィ解析結果(Matsubara et al., 2019, doi: 10.5772/intechopen.86936)を用いているが,防災南海PJでは様々な情報を統合した高精度な3D構造モデルの構築も進めている(Nakanishi et al., 2022, JpGU及び本大会).サブシステム①は構造モデルの更新に対応しやすいという特徴がある.一方,サブシステム②と③は,都度,走時表を再構築する必要が生じるが,予め走時表を保持することで計算時間の大幅短縮が見込まれる.最短経路法を用いた波線計算方法(Sekiguchi, 2021, doi: 10.1093/gji/ggab001)等,大きな計算コストを必要とするものの複雑な構造モデルに対して安定して波線経路を評価可能な方法を実装する際には,予め走時表を保持することは有効な実行手段と言える.

現在,サブシステム①の日向灘海域における結果を用いて,システムの動作確認並びに性能評価を進めている.2022年1月の地震活動については,3D構造モデルを用いることで,気象庁一元化震源よりも全体的に数km浅くなり,活動域上端がプレート境界に近接した.これは,当該地域の地下構造から予察される結果と整合的であった.

謝辞:本研究は,文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として実施している.震源計算には,気象庁・大学・産業技術総合研究所等の観測データを使用している.また,解析結果の比較検討に気象庁一元化震源カタログを使用した.