1:30 PM - 1:45 PM
[S10-01] Paleo-seismicity of the southeastern part of Unzen Fault Group based on offshore active fault survey in Shimabara Bay, southwestern Japan
雲仙断層群南東部の活動性を明らかにするため,島原湾に分布する海底活断層の調査研究を実施した.雲仙断層群南東部は,島原半島から島原湾の沖合にかけてほぼ東西方向に延びる長さ約23 kmの活断層帯であり,断層の南側が相対的に隆起する正断層によって構成されている.地震調査研究本部地震調査委員会(2006)によれば,本断層帯の最新活動時期はK-Ah降下層準(7.3 ka)以降であり,平均上下変位速度および将来の地震発生確率は不明とされている.2009年度には,本断層帯を対象とした総合的な海底活断層調査が実施されている.この調査によって,海域に分布する断層の位置・形状が明らかにされ,本断層帯の支配的な活断層が500 ka前後と見積もられる反射面を約1,200m上下変位させていることが示された(産総研・他,2010).そこで,本研究では後期更新世以降の活動性および完新世における活動履歴を検討するため,新たに海上ボーリング調査を実施し,既存の音波探査記録にもとづいて地質構造を再検討した[大上・他(2022, JpGU)].本発表では,その再検討の結果にもとづいて本断層帯の活動履歴について報告する.なお,本研究は文部科学省委託事業「活断層評価の高度化・効率化のための調査」の一環として実施したものである.
既存のブーマーを音源とした高分解能マルチチャンネル音波探査探査(産総研・他,2010)では,往復走時0.2秒程度(海面下150m程度)までの地下構造が捉えられている.この探査記録を地質学的に解釈するために,海上ボーリング調査を実施することによって,海底面下40 m程度までの地層の形成年代や堆積環境を検討した.本研究では,断層の低下側(UTO1地点.水深46.69 m)で掘削長40.00 mの堆積物試料を,断層の隆起側(UTO2地点,水深33.07 m)で掘削長35.25 mの堆積物試料をそれぞれ採取した.採取した堆積物試料については,肉眼およびCTスキャナによる岩相観察,放射線炭素年代測定,火山灰分析を実施して,層序を検討した.断層低下側のUTO1地点においては,海底面下29.90 mまでは16.57 cal kBP以降の年代を示す後氷期の細粒堆積物によって構成されている.海底面下29.90-33.20mはLGM末(18 ka頃)に対比される砂礫,33.20-40.0mは22.49 cal kBPの年代を示す有機質シルトおよびAT火山灰(29-30 ka)を挟在するLGMの細粒堆積物によって構成されている.UTO1地点においては,15層準を対象に放射性炭素年代測定を行い,詳細な年代モデルを作成した.UTO2地点においては,海底面下5.20mまでが後氷期の年代を示す堆積物,5.20―8.15mはLGMに対比し得る砂礫,8.15—14.8mまでがAso-4(85−90ka)の火砕物,14.80—35.25mは最終間氷期の細粒堆積物によって構成されている.
既存の高分解能マルチチャンネル音波探査記録(産総研・他,2010)を対象として再解析を実施し,S/N比の高い探査記録断面(以下,「再解析断面」)を作成した.海水中および堆積物中の弾性波伝播速度を1,500 m/sと仮定すると,海上ボーリング調査で明らかになった岩相境界の位置は,再解析断面の連続性の良好な反射面の深度とほぼ一致する.よって,海底面下40m程度までの弾性波伝播速度について,1,500 m/sとみせると判断した.再解析断面にもとづけば,最も変位量の大きい主断層は,LGM末(22.49 cal kBP―16.57 cal kBP)の基準面を上下方向に35―38 m変位させている[大上・他(2022, JpGU)].主断層は上下変位量が大きく,断層の低下側に厚く形成されている後氷期以降の地層を,断層の隆起側まで追跡することが難しい.そのため,主断層において直接的に活動履歴を検討することが困難である.他方で,主断層から北に約1.2 kmの距離を並走する副断層に着目すると,副断層によって後氷期の地層から海底面に至るまでの累積的な変形を確認できる.後氷期以降におけるこの副断層による累積的な上下変位量は約10 mに達する.内部構造に着目すると,地層の層厚が断層を挟んで低下側で厚くなっている層準(イベント層準)が存在し,後氷期以降の地層の内部に,少なくとも3層のイベント層準(新しい層準から順に,E1,E2,E3)を識別できる.これらのうち,E1の形成年代は8 ka以降である.副断層の活動時に断層帯全体が活動したと仮定すれば,本断層帯では,16.5 cal kBP以降に3回以上の断層活動が発生したことになり,E1のイベントが8 ka以降であるとすれば,平均活動間隔は2.8〜8.3 kyと求められる.ただし,本断層帯の活動時に副断層に必ず変位が生じたとは限らないため,副断層の変位から求めた活動回数・平均活動間隔が最小見積もりであることに注意が必要である.
引用:
地震調査研究本部地震調査委員会,2006,雲仙断層群の長期評価(一部改訂).
産総研・他,2010,沿岸海域における活断層調査 雲仙断層群/北部及び南東部(海域部)成果報告書.
大上・他,2022,島原湾における雲仙断層群南東部(海域部)の活動性,JpGU2022.
既存のブーマーを音源とした高分解能マルチチャンネル音波探査探査(産総研・他,2010)では,往復走時0.2秒程度(海面下150m程度)までの地下構造が捉えられている.この探査記録を地質学的に解釈するために,海上ボーリング調査を実施することによって,海底面下40 m程度までの地層の形成年代や堆積環境を検討した.本研究では,断層の低下側(UTO1地点.水深46.69 m)で掘削長40.00 mの堆積物試料を,断層の隆起側(UTO2地点,水深33.07 m)で掘削長35.25 mの堆積物試料をそれぞれ採取した.採取した堆積物試料については,肉眼およびCTスキャナによる岩相観察,放射線炭素年代測定,火山灰分析を実施して,層序を検討した.断層低下側のUTO1地点においては,海底面下29.90 mまでは16.57 cal kBP以降の年代を示す後氷期の細粒堆積物によって構成されている.海底面下29.90-33.20mはLGM末(18 ka頃)に対比される砂礫,33.20-40.0mは22.49 cal kBPの年代を示す有機質シルトおよびAT火山灰(29-30 ka)を挟在するLGMの細粒堆積物によって構成されている.UTO1地点においては,15層準を対象に放射性炭素年代測定を行い,詳細な年代モデルを作成した.UTO2地点においては,海底面下5.20mまでが後氷期の年代を示す堆積物,5.20―8.15mはLGMに対比し得る砂礫,8.15—14.8mまでがAso-4(85−90ka)の火砕物,14.80—35.25mは最終間氷期の細粒堆積物によって構成されている.
既存の高分解能マルチチャンネル音波探査記録(産総研・他,2010)を対象として再解析を実施し,S/N比の高い探査記録断面(以下,「再解析断面」)を作成した.海水中および堆積物中の弾性波伝播速度を1,500 m/sと仮定すると,海上ボーリング調査で明らかになった岩相境界の位置は,再解析断面の連続性の良好な反射面の深度とほぼ一致する.よって,海底面下40m程度までの弾性波伝播速度について,1,500 m/sとみせると判断した.再解析断面にもとづけば,最も変位量の大きい主断層は,LGM末(22.49 cal kBP―16.57 cal kBP)の基準面を上下方向に35―38 m変位させている[大上・他(2022, JpGU)].主断層は上下変位量が大きく,断層の低下側に厚く形成されている後氷期以降の地層を,断層の隆起側まで追跡することが難しい.そのため,主断層において直接的に活動履歴を検討することが困難である.他方で,主断層から北に約1.2 kmの距離を並走する副断層に着目すると,副断層によって後氷期の地層から海底面に至るまでの累積的な変形を確認できる.後氷期以降におけるこの副断層による累積的な上下変位量は約10 mに達する.内部構造に着目すると,地層の層厚が断層を挟んで低下側で厚くなっている層準(イベント層準)が存在し,後氷期以降の地層の内部に,少なくとも3層のイベント層準(新しい層準から順に,E1,E2,E3)を識別できる.これらのうち,E1の形成年代は8 ka以降である.副断層の活動時に断層帯全体が活動したと仮定すれば,本断層帯では,16.5 cal kBP以降に3回以上の断層活動が発生したことになり,E1のイベントが8 ka以降であるとすれば,平均活動間隔は2.8〜8.3 kyと求められる.ただし,本断層帯の活動時に副断層に必ず変位が生じたとは限らないため,副断層の変位から求めた活動回数・平均活動間隔が最小見積もりであることに注意が必要である.
引用:
地震調査研究本部地震調査委員会,2006,雲仙断層群の長期評価(一部改訂).
産総研・他,2010,沿岸海域における活断層調査 雲仙断層群/北部及び南東部(海域部)成果報告書.
大上・他,2022,島原湾における雲仙断層群南東部(海域部)の活動性,JpGU2022.