16:00 〜 16:15
[S10-10] 理科年表「日本付近のおもな被害地震年代表」の全体改訂版
理科年表の「日本付近のおもな被害地震年代表」(以下,年代表)の歴史地震部分(1884年以前)は2021年版において大改訂が行われて,2020年版に対して地震47件と海外津波3件が追加され,地震2件が削除された[原田・纐纈(2020)].その際,追加保留とされた地震25件をここで検討した.また,近現代的な観測などに基づく1885年以降の地震についても検討を行い,この部分に対して年表の編集を担当するようになってから初めて大改訂を行った.2021年版1884年以前の追加保留25件に対する検討の結果,「追加しない方が良い・判断が難しい」20件,「追加して良い」5件となった.2023年版では後者のみを追加し,前者は追加しないことで確定とした.以上より1884年以前は,2020年版で地震268件,海外津波2件だったものが,2021年版では地震313件,海外津波5件となり,2023年版では地震318件,海外津波5件とする予定である.
原田・纐纈(2020)と今回の検討では,『日本被害地震総覧599-2012』(以下,総覧)に番号付きで記載されているのに年代表2020年版に記載されていない地震を主な対象とし,総覧で無番号1件と不記載2件を加えた95件を検討した.そのうち55件(地震52件,海外津波3件)が追加され,40件は追加しないとした.それら以外に,年代表に記載され総覧にも番号付きで記載されている2地震(1831年11月13日と1847年2月15日)を,最近の研究に基づいて削除した.これら改訂のうち研究上議論となるのは,総覧で不記載または無番号であるのに追加された2+1件であろう.また,年代表の2020年版にあって継続掲載の地震のうち,総覧では無番号である7件も同様である.不記載で追加のうち1454年12月22日(享徳3年11月24日)の地震について,以下で詳しく述べる.
行谷・矢田(2014)によれば,この地震の被害(津波による被害)が記述されているのが『王代記』のみで,それ以外の『会津旧事雑考』,『大宮神社古記録抄』,『続本朝通鑑』,『新撰和漢合図』には,「大地震」または「地大震」としか記載されていない.石橋(2015)が見出した『異本塔寺長帳』も同様である.従って,『王代記』をどう評価するかが1454年の地震の評価となる.『山梨県史』によると,同書は大永4年(1524年)には成立しており,1454年の事象に対してはほぼ同時代史料と考えられるし,同書影印本の磯貝・服部の解説によれば,山梨県の普賢寺の住職が代々書き継いだ年代記であるので史実が書かれていると窺われる[行谷・矢田(2014)].これらをもって年代表2023年版には1454年の地震が追加された.
1885年以降は,地震の件数に関し,2022年版に対して2022年3月の福島県沖の地震が追加されたのみである.しかし,個々の地震の記述についてはほとんどの地震で修正が入った.特に,1919年以降の地震の緯度・経度・Mは気象庁の遡った月報カタログに合わせたが,地域はカタログに書かれたものではなく,震度データベースと「日本付近で発生した主な被害地震」の表から得られる地震情報の震央地名を用いた.ただし,明らかに当時の震央地名と異なると考えられる場合は,当時のものを*付きで用いた.年代表2023年版に掲載された1885年以降の地震をプロットしたものが図の右側である.これに対して左側は1884年以前の緯度・経度が与えられている地震のプロットである.Mが未決定の場合は6未満の地震と同じ大きさとした.両者を比較すると,北海道と九州南端・南西諸島を除けば概ね傾向は似ており,1884年以前もそれほど大きな偏りはないように見受けられる.京都・鎌倉・江戸周辺にMが小さい,または未決定の地震が多数プロットされているのは,古文書の分布から考えて致し方ないであろう.
日本暦は改元時期が正しく反映されるように訂正したものがかなりある.ただし,それによって地震名と矛盾する場合は,地震名に含まれる年号も< >付きで示した.原田・纐纈(2020)と今回の大改訂で年代表は件数に関してほぼ安定したと考えられるので,今後は総覧のように地震番号を固定とし,件数の増減があれば枝番や欠番で対応する予定である.一方,海溝型地震の諸元は『地震活動総説』[宇津(1999)]で再検討されている場合があり,日本海溝のものはすでに取り入れてあるが,千島海溝や南海トラフは今後である.1843年の千島海溝の地震のMは今回試験的に取り入れた.
原田・纐纈(2020)と今回の検討では,『日本被害地震総覧599-2012』(以下,総覧)に番号付きで記載されているのに年代表2020年版に記載されていない地震を主な対象とし,総覧で無番号1件と不記載2件を加えた95件を検討した.そのうち55件(地震52件,海外津波3件)が追加され,40件は追加しないとした.それら以外に,年代表に記載され総覧にも番号付きで記載されている2地震(1831年11月13日と1847年2月15日)を,最近の研究に基づいて削除した.これら改訂のうち研究上議論となるのは,総覧で不記載または無番号であるのに追加された2+1件であろう.また,年代表の2020年版にあって継続掲載の地震のうち,総覧では無番号である7件も同様である.不記載で追加のうち1454年12月22日(享徳3年11月24日)の地震について,以下で詳しく述べる.
行谷・矢田(2014)によれば,この地震の被害(津波による被害)が記述されているのが『王代記』のみで,それ以外の『会津旧事雑考』,『大宮神社古記録抄』,『続本朝通鑑』,『新撰和漢合図』には,「大地震」または「地大震」としか記載されていない.石橋(2015)が見出した『異本塔寺長帳』も同様である.従って,『王代記』をどう評価するかが1454年の地震の評価となる.『山梨県史』によると,同書は大永4年(1524年)には成立しており,1454年の事象に対してはほぼ同時代史料と考えられるし,同書影印本の磯貝・服部の解説によれば,山梨県の普賢寺の住職が代々書き継いだ年代記であるので史実が書かれていると窺われる[行谷・矢田(2014)].これらをもって年代表2023年版には1454年の地震が追加された.
1885年以降は,地震の件数に関し,2022年版に対して2022年3月の福島県沖の地震が追加されたのみである.しかし,個々の地震の記述についてはほとんどの地震で修正が入った.特に,1919年以降の地震の緯度・経度・Mは気象庁の遡った月報カタログに合わせたが,地域はカタログに書かれたものではなく,震度データベースと「日本付近で発生した主な被害地震」の表から得られる地震情報の震央地名を用いた.ただし,明らかに当時の震央地名と異なると考えられる場合は,当時のものを*付きで用いた.年代表2023年版に掲載された1885年以降の地震をプロットしたものが図の右側である.これに対して左側は1884年以前の緯度・経度が与えられている地震のプロットである.Mが未決定の場合は6未満の地震と同じ大きさとした.両者を比較すると,北海道と九州南端・南西諸島を除けば概ね傾向は似ており,1884年以前もそれほど大きな偏りはないように見受けられる.京都・鎌倉・江戸周辺にMが小さい,または未決定の地震が多数プロットされているのは,古文書の分布から考えて致し方ないであろう.
日本暦は改元時期が正しく反映されるように訂正したものがかなりある.ただし,それによって地震名と矛盾する場合は,地震名に含まれる年号も< >付きで示した.原田・纐纈(2020)と今回の大改訂で年代表は件数に関してほぼ安定したと考えられるので,今後は総覧のように地震番号を固定とし,件数の増減があれば枝番や欠番で対応する予定である.一方,海溝型地震の諸元は『地震活動総説』[宇津(1999)]で再検討されている場合があり,日本海溝のものはすでに取り入れてあるが,千島海溝や南海トラフは今後である.1843年の千島海溝の地震のMは今回試験的に取り入れた.