14:00 〜 17:30
[S10P-01] 宮城県中部,奥羽脊梁山脈東縁沿いの断層変位地形:M7クラスの地震発生の可能性
奥羽脊梁山脈の東縁沿いには北上低地西縁断層帯や福島盆地西縁断層帯などの活断層帯が発達する(今泉・他編,2018等).北上低地西縁断層帯と福島盆地西縁断層帯との間の地域では,奥羽脊梁山脈とその東方の相対的低地帯との地形境界が連続するにも関わらず,大規模な活断層(帯)は知られていない.この顕著な活断層が知られていない区間の北半部(岩手県一関市~宮城県大崎市付近)では,2008年に大規模な地震(岩手宮城内陸地震;Mj7.2)が発生しているが,地震後の調査によって,多数の小規模な活断層が散在すること(国土地理院,2009等),河成段丘に幅の広い撓曲状の変形が生じていること(田力・他,2009等)が明らかとなっている.岩手宮城内陸地震の震源域の南方の奥羽脊梁山脈東縁(宮城県加美町~仙台市青葉区付近)においては,奥羽脊梁山脈と東方の相対的低地帯との境界はやや不明瞭ながらも連続するにも関わらず,これまで愛子断層(大内,1973)以外の確実な活断層は知られていない.本研究では,この地域の詳細な空中写真判読および現地調査・地形測量を行い,断層活動による変位地形の抽出し,その確実性と活動性を検討した.
調査地域には,奥羽脊梁山脈から東方へ流出する河川が数多く分布するが,比較的大規模な河川沿いに河成段丘が良く発達する.今回の調査の結果,これらの河成段丘のいくつかの地点において断層活動によると思われる変位地形(断層崖や撓曲崖)が見いだされた.以下でいくつかの例について述べる.調査地域北部の宮城県加美町付近の鳴瀬川沿いには数段の河成段丘が発達しているが,それらの段丘面に西上がりの撓曲変位が認められた.それらの上下変位量は5~23 mで,高位の段丘ほど変位量が大きく,変位の累積性が認められる.この付近の河成段丘面は小池・町田編(2001)やMatsu'ura and Sugaya (2017)によって詳細な編年がなされており,それら既報の段丘面の年代から,上下変位速度は0.2~0.3 mm/yrと算出された.その南方の宮城県大和町付近の吉田川沿いの河成段丘面においても撓曲崖状の変位が認められ,その変位量は2~3 m程度であった.吉田川沿いの段丘面の年代は今回の調査では明らかにすることはできなかったが,北方の鳴瀬川沿いの段丘面との対比から最終氷期の段丘面と推定され,確実ではないが上下変位速度は0.1 mm/yrと算出された.さらに南方の仙台市泉区福岡付近の七北田川沿いの段丘面にも3~4 mほどの変位が認められ,上下変位速度は0.2 mm/yr程度と算出された.仙台市青葉区愛子付近では広瀬川沿いに数段の河成段丘面が発達するが,ここにも西上がりの断層変位が認められる(愛子断層).愛子断層は既知の活断層であるが,今回の調査によって,既報よりも長く,広瀬川の河谷全体を横断する活断層が存在することが明らかとなった.広瀬川沿いの河成段丘は編年学的研究が進んでおり(幡谷,2006;早田・八木,1989等),それらの年代に基づいて上下変位速度は0.1~0.2 mm/yrと算出された.
今回の調査の結果,調査地域の奥羽脊梁山脈東縁付近には,断続的ではあるが西上がりの断層変位が複数認められ,いずれも同程度の変位速度(0.1~0.3 mm/yr)を持つことが明らかとなった.地表の断層変位地形が明瞭でなく,断片的である理由は明らかではない.理由の一つとして,この地域では北上低地帯や福島盆地の西方の奥羽脊梁山脈に比べて,火山堆積物が広く厚く堆積しているために断層変位が地層中で吸収・分散して地表で認識しづらくなっている,という点が挙げられる.今回の調査地域は,地形(奥羽脊梁山脈と低地帯との地形コントラスト),地質(火山堆積物が厚く堆積),活断層の分布(短い活断層が断片的に分布),河成段丘の幅の広い撓曲変形(鳴瀬川沿い,Tajikara, 2004)等,岩手宮城内陸地震震源域と類似した性質を持っており,同様な西上がりの大規模な構造(南北50~60 km程度)が伏在し,岩手宮城内陸地震と同程度(M7クラス)の地震を発生させる可能性が考えられる.
本研究は令和3年度防災科学技術研究所委託研究「活断層の詳細位置情報等に関する調査研究」の成果の一部をとりまとめたものである.
調査地域には,奥羽脊梁山脈から東方へ流出する河川が数多く分布するが,比較的大規模な河川沿いに河成段丘が良く発達する.今回の調査の結果,これらの河成段丘のいくつかの地点において断層活動によると思われる変位地形(断層崖や撓曲崖)が見いだされた.以下でいくつかの例について述べる.調査地域北部の宮城県加美町付近の鳴瀬川沿いには数段の河成段丘が発達しているが,それらの段丘面に西上がりの撓曲変位が認められた.それらの上下変位量は5~23 mで,高位の段丘ほど変位量が大きく,変位の累積性が認められる.この付近の河成段丘面は小池・町田編(2001)やMatsu'ura and Sugaya (2017)によって詳細な編年がなされており,それら既報の段丘面の年代から,上下変位速度は0.2~0.3 mm/yrと算出された.その南方の宮城県大和町付近の吉田川沿いの河成段丘面においても撓曲崖状の変位が認められ,その変位量は2~3 m程度であった.吉田川沿いの段丘面の年代は今回の調査では明らかにすることはできなかったが,北方の鳴瀬川沿いの段丘面との対比から最終氷期の段丘面と推定され,確実ではないが上下変位速度は0.1 mm/yrと算出された.さらに南方の仙台市泉区福岡付近の七北田川沿いの段丘面にも3~4 mほどの変位が認められ,上下変位速度は0.2 mm/yr程度と算出された.仙台市青葉区愛子付近では広瀬川沿いに数段の河成段丘面が発達するが,ここにも西上がりの断層変位が認められる(愛子断層).愛子断層は既知の活断層であるが,今回の調査によって,既報よりも長く,広瀬川の河谷全体を横断する活断層が存在することが明らかとなった.広瀬川沿いの河成段丘は編年学的研究が進んでおり(幡谷,2006;早田・八木,1989等),それらの年代に基づいて上下変位速度は0.1~0.2 mm/yrと算出された.
今回の調査の結果,調査地域の奥羽脊梁山脈東縁付近には,断続的ではあるが西上がりの断層変位が複数認められ,いずれも同程度の変位速度(0.1~0.3 mm/yr)を持つことが明らかとなった.地表の断層変位地形が明瞭でなく,断片的である理由は明らかではない.理由の一つとして,この地域では北上低地帯や福島盆地の西方の奥羽脊梁山脈に比べて,火山堆積物が広く厚く堆積しているために断層変位が地層中で吸収・分散して地表で認識しづらくなっている,という点が挙げられる.今回の調査地域は,地形(奥羽脊梁山脈と低地帯との地形コントラスト),地質(火山堆積物が厚く堆積),活断層の分布(短い活断層が断片的に分布),河成段丘の幅の広い撓曲変形(鳴瀬川沿い,Tajikara, 2004)等,岩手宮城内陸地震震源域と類似した性質を持っており,同様な西上がりの大規模な構造(南北50~60 km程度)が伏在し,岩手宮城内陸地震と同程度(M7クラス)の地震を発生させる可能性が考えられる.
本研究は令和3年度防災科学技術研究所委託研究「活断層の詳細位置情報等に関する調査研究」の成果の一部をとりまとめたものである.