The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (2nd Day)

Regular session » S10. Active faults and historical earthquakes

[S10P] PM-P

Tue. Oct 25, 2022 2:00 PM - 5:30 PM ROOM P-4 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

2:00 PM - 5:30 PM

[S10P-02] Tectonic landforms and slip-rate of the Shibetsu fault zone in the eastern part of Hokkaido, Japan

*Takashi AZUMA1, Daisuke HIROUCHI2 (1. Geological Survey of Japan/AIST, 2. Shinshu University)

北海道東部に位置する標津断層帯は、北東-南西走向で北西側が隆起する成分を持つ逆断層である。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2005)による長期評価では、最新活動時期、平均変位速度および平均活動間隔のいずれもが不明となっていて、将来の地震発生確率を算出できていない。この活断層に沿っては、最終氷期に形成された扇状地が撓曲変形を受けている地点が多い。これらの扇状地を構成する礫層の層厚が厚いため、これまでに実施されたトレンチ調査等で明瞭な断層変形を地表付近で確認することができていない。そのため、地形面の形成年代と変形量に基づき、この活断層の上下成分の平均変位速度の推定を試みた。
今回の調査の結果、川北、武佐、俣落の3地区において、地形データと扇状地面の形成データを取得することができ、標津断層帯の平均変位速度(上下成分)の検討を行なった。川北地区では、現地測量に基づいて作成した地形断面図から上下変位量が約10 mと求められた。その測線上で掘削したKK-05のボーリングコアでは、Ma-lの下位に層厚約2 mの風成ロームが確認されており、その中には目視できる範囲ではKc-1火砕流堆積物(約3.5〜4万年前)が含まれていないことから、4万年前以降に形成された地形面であると推定される。これらの上下変位量と地形面の形成年代の情報に基づき、川北地点における標津断層帯の平均変位速度(上下成分)は0.25 m/千年以上と算出した。武佐地区では、空中写真図化に基づいて作成した地形断面図から、上下変位量が約10 mと求められた。また、この測線に近接するMS-02の露頭では、Ma-lの風成ローム中にアトサヌプリ火山灰(約2.3〜2.6万年前)が挟在されていることが確認された。このことと、目視される範囲ではKc-1火砕流堆積物が認められないことから、MS-02の露頭が位置している地形面は約3〜4万年前に形成されたと推定される。これらの上下変位量と地形面の形成年代の情報に基づき、武佐地点における標津断層帯の平均変位速度(上下成分)は約0.33〜0.25 m/千年と算出した。俣落地区では、空中写真図化に基づいて作成した地形断面図から上下変位量が約52 mと求められた。この測線上で掘削したMO-01のボーリングを掘削したが、地形面の形成年代を決めるために有効な情報は得られなかった。仮に、川北地区や武佐地区と同程度の平均変位速度(上下成分)が俣落地区でも見られるのであれば、地形面の形成年代は15〜20万年前となるが、それを支持するデータは今回の調査で得ることはできなかった。
今回の調査によって、標津断層帯の中部に位置する開陽断層において平均変位速度(上下成分)の検討を行ない、約0.3 m/千年(0.33〜0.25 m/千年)と算出された。地形面の年代は摩周-lより下位の風成ロームを詳しく調べることで、さらに年代の精度が向上することが期待される。なお、今回の調査では、平均変位速度の算出が主目的であったため、断層構造の存在を明らかにすることができていない。今後、活断層調査の成果を地震動評価や断層変位の事前評価に繋げるためには、標津断層帯の断層変位地形を形成した活断層の地下形状を確認するための調査が実施されることが望まれる。
本調査は、文部科学省受託研究「令和3年度 活断層評価の高度化・効率化のための調査」の一部として実施されたものである。