日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S12. 岩石実験・岩石力学・地殻応力

[S12] PM-2

2022年10月24日(月) 15:45 〜 17:15 D会場 (5階(520研修室))

座長:川方 裕則、小村 健太朗(防災科学技術研究所)

16:15 〜 16:30

[S12-03] 稠密地震観測によって推定された近畿地方中北部の活断層近傍における応力場

*田中 俊雄1、飯尾 能久2、片尾 浩2、澤田 麻沙代2、冨阪 和秀2 (1. 京都大学大学院理学研究科、2. 京都大学防災研究所附属地震災害研究センター)

近畿地方の中北部には有馬-高槻断層帯、三峠・京都西山断層帯、三方・花折断層帯、琵琶湖西岸断層帯などの活断層が分布しており、日本で活断層が最も集中している地域の一つである。この地域の応力場の解析は、既に、藤野・片尾(2009)、青木ほか(2012)、飯尾(2021)などによってなされている。 西南日本における最大主応力(σ1)の向きは概ね東西方向(Huzita, 1980)である。近畿地方中北部でもσ1はほぼ東西方向を向いている。この地域で走向が東西に近い断層帯としては、右横ずれ断層の有馬-高槻断層帯と左横ずれ断層の三峠断層帯がある。一般走向は、有馬-高槻断層帯はN80°E(地震調査委員会, 2001)、三峠断層帯はN70°W(地震調査委員会, 2005)である。これらの断層帯では、σ1の方位が東西であるならば、横ずれ運動は起こりずらいと思われる。そこで、σ1の方位が地域によらず厳密に一様であるかどうかを詳細に検討し、その後、σ1の方位と断層の走向の関係を考察した。解析は、近畿地方の中北部の、東西80km、南北90kmの領域で行った。解析に際しては、満点システムと名づけられている稠密観測網(三浦ほか, 2010)および領域内の高感度定常観測点から得られた多数のデータを用いた。2008.11.17~2018.3.29に発生した地震の波形からメカニズム解を求め、応力テンソルインバージョンにより応力場を推定した。グリッドの大きさは、東西、南北各10km、深さ2.5kmとした。深さについては、藤野・片尾(2009)、青木ほか(2012)は約10km、飯尾(2021)は5kmなので、1/4、1/2であり、鉛直方向の変化を詳しく調べる設定とした。 有馬-高槻断層帯付近の深さ10kmでは、σ1の方位角の最適解は東方から時計回りに回転していて104°であった。この方位と一般走向とのなす角度は24°であった。また、三峠断層帯付近ではσ1の方位角の最適解は東方から反時計回りに回転していて81°であり、この方位と一般走向とのなす角度は29°であった。また、断層帯に近いほど回転角が大きい傾向があることもわかった。これらの結果は、解析領域内の応力場は一様ではなく、横ずれ断層に対して、横ずれ運動を起こしやすい向きにσ1は回転していることを示していた。 σ1の方位角の回転の原因を解明するために、上部地殻内の脆性断層帯の深部延長として、下部地殻内に延性断層帯が伸びていると仮定し、そこに滑り運動があるとした場合、上部地殻にはどのような影響があるかを調べた。その結果、上部地殻内の断層帯の近くで回転している応力場は、延性断層帯内の滑り運動によって説明が可能であることが分かり、上部地殻の活動は下部地殻の活動と密接に関係していることが示唆された。 近畿地方の中北部で、走向が南北に近い断層帯としては、花折断層帯と琵琶湖西岸断層帯がある。この二つの断層帯は近接している。本発表では、花折断層帯付近において、メカニズム解の解析を通して分かった特徴も整理する。