4:30 PM - 4:45 PM
[S12-04] Evaluation of the source-location accuracy for AE events occurring in experiments under GPa-order high pressures
岩石試料の破壊にともない,微小破壊(アコースティック・エミッション、以下AE)が発生し,その地震との類似性から地震学分野において多くの研究が実施されてきた.マルチアンビル型高圧発生装置を用いたGPaオーダーの高圧力環境においてもAE計測は古くから実施されている(例えばKawakata and Shimada, 1995).高圧試験はやや深発地震の理解の深化に貢献すると考えられることからAE解析の高度化は重要な課題であるが,一般的な液体圧,ガス圧の三軸試験に比してデータの取り扱いに注意を要する.
第一にマルチアンビル型高圧発生装置は固体媒体によって圧力をかけるため,試料に直接トランスデューサを貼り付けることはできず,圧媒体の外に配置される6個のアンビル背面に貼り付けて計測する.すなわち,AEシグナルは試料内部,圧媒体,アンビルを伝播してから記録される.第二に試料の大きさが直径5 mm弱,高さ10 mm弱と非常に小さいことも特徴である.一般的な圧電素子タイプのトランスデューサ,広帯域型のトランスデューサ(川方・大内,2021)問わず,受感面の直径は4 mm以上であるため,試料の大きさ,すなわちAEの震源域に対して受感面の大きさが無視できない.圧電素子を用いた10 Mspsでの計測による震源位置決定がde Ronde et al. (2007; GJI)によって実現されたが,試料内外に震源が分布する結果となっている.時間分解能,トランスデューササイズ,伝播経路の複雑さなどを考慮するとその精度評価は必須であるが,これまで高圧試験において震源位置精度の評価は実施されていない.
そこで本研究では、沈み込むスラブ内浅部の温度圧力条件下(1-2 GPa, 400-900℃)での実験が可能な愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター所有のD-DIA型超高圧変形装置 Madonna I を利用し,AEの震源位置の推定精度の評価をおこなう.評価は,仮想震源をコンピュータ内で再現してその計算走時を利用して実施する数値実験と,疑似試料として石英ビーズを充填させた円柱カプセルを用いて静水圧化で発生させたAEシグナルを利用して実施する計測実験の2種類でおこなわれた.
試料は直径3 mm,高さ5.5 mmであり,圧媒体は封圧下において約9 mmの立方体形状をしている.アンビルにはトランスデューサ貼り付け用の細工を施し,試料中心から22.55 mm離れた位置にトランスデューサが配置させる.試料内の弾性波速度は8000 m/s程度であるため,信号計測のサンプリング周波数は100 Mspsとすることで,1サンプル以内の伝播距離を0.1 mm弱とした.
数値実験においては,仮想震源を試料内部に配置させ,トランスデューサは直径6 mmに設定し,受感面の中で最も早く波が届く点までの経路長をもとに走時を計算した.計算された走時に乱数的な揺らぎを与えて到達時刻データとして,受感面中心を受振点座標として震源決定を実施した.構造を単純化させ一様構造を仮定すると,トランスデューサの大きさを経路長に反映させても読み取り誤差がない場合には,震源位置のずれはほとんど認められなかった(図1a).これはトランスデューサを試料から20 mm近く離れた位置に配置していることで受感面の大きさの影響が低減されていることに起因していると推察される.±5サンプル以内の一様乱数で読み取り誤差を加えた場合には1 mm未満の震源のずれが見られた(図1b, c).
計測実験においては,1台のトランスデューサが不調であったため,5つしか使用することができず,一様構造を仮定した場合,震源位置のばらつきが大きく,試料外に推定されるものも一定数見られた.そこで使用するトランスデューサを5つに減らし,標準偏差10サンプルの正規乱数で読み取り誤差を加えた場合の数値実験を実施した結果,推定誤差が1 mmを超えるものも見られ,試料中央付近に仮想震源を設定したにもかかわらず,試料外に推定される震源も見られた.試料が非常に小さいため,読み取り精度を上げることは非常に重要であり,絶対精度,相対精度ともに向上させる取り組みが必要である.本発表では構造の影響についても触れる予定である.
謝辞:本研究はJSPS科研費 JP19H00722の助成を受けたものである.
第一にマルチアンビル型高圧発生装置は固体媒体によって圧力をかけるため,試料に直接トランスデューサを貼り付けることはできず,圧媒体の外に配置される6個のアンビル背面に貼り付けて計測する.すなわち,AEシグナルは試料内部,圧媒体,アンビルを伝播してから記録される.第二に試料の大きさが直径5 mm弱,高さ10 mm弱と非常に小さいことも特徴である.一般的な圧電素子タイプのトランスデューサ,広帯域型のトランスデューサ(川方・大内,2021)問わず,受感面の直径は4 mm以上であるため,試料の大きさ,すなわちAEの震源域に対して受感面の大きさが無視できない.圧電素子を用いた10 Mspsでの計測による震源位置決定がde Ronde et al. (2007; GJI)によって実現されたが,試料内外に震源が分布する結果となっている.時間分解能,トランスデューササイズ,伝播経路の複雑さなどを考慮するとその精度評価は必須であるが,これまで高圧試験において震源位置精度の評価は実施されていない.
そこで本研究では、沈み込むスラブ内浅部の温度圧力条件下(1-2 GPa, 400-900℃)での実験が可能な愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター所有のD-DIA型超高圧変形装置 Madonna I を利用し,AEの震源位置の推定精度の評価をおこなう.評価は,仮想震源をコンピュータ内で再現してその計算走時を利用して実施する数値実験と,疑似試料として石英ビーズを充填させた円柱カプセルを用いて静水圧化で発生させたAEシグナルを利用して実施する計測実験の2種類でおこなわれた.
試料は直径3 mm,高さ5.5 mmであり,圧媒体は封圧下において約9 mmの立方体形状をしている.アンビルにはトランスデューサ貼り付け用の細工を施し,試料中心から22.55 mm離れた位置にトランスデューサが配置させる.試料内の弾性波速度は8000 m/s程度であるため,信号計測のサンプリング周波数は100 Mspsとすることで,1サンプル以内の伝播距離を0.1 mm弱とした.
数値実験においては,仮想震源を試料内部に配置させ,トランスデューサは直径6 mmに設定し,受感面の中で最も早く波が届く点までの経路長をもとに走時を計算した.計算された走時に乱数的な揺らぎを与えて到達時刻データとして,受感面中心を受振点座標として震源決定を実施した.構造を単純化させ一様構造を仮定すると,トランスデューサの大きさを経路長に反映させても読み取り誤差がない場合には,震源位置のずれはほとんど認められなかった(図1a).これはトランスデューサを試料から20 mm近く離れた位置に配置していることで受感面の大きさの影響が低減されていることに起因していると推察される.±5サンプル以内の一様乱数で読み取り誤差を加えた場合には1 mm未満の震源のずれが見られた(図1b, c).
計測実験においては,1台のトランスデューサが不調であったため,5つしか使用することができず,一様構造を仮定した場合,震源位置のばらつきが大きく,試料外に推定されるものも一定数見られた.そこで使用するトランスデューサを5つに減らし,標準偏差10サンプルの正規乱数で読み取り誤差を加えた場合の数値実験を実施した結果,推定誤差が1 mmを超えるものも見られ,試料中央付近に仮想震源を設定したにもかかわらず,試料外に推定される震源も見られた.試料が非常に小さいため,読み取り精度を上げることは非常に重要であり,絶対精度,相対精度ともに向上させる取り組みが必要である.本発表では構造の影響についても触れる予定である.
謝辞:本研究はJSPS科研費 JP19H00722の助成を受けたものである.