日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15] PM-3

2022年10月25日(火) 16:30 〜 17:45 B会場 (4階(大会議室))

座長:津田 健一(清水建設技術研究所)、平井 敬(名古屋大学大学院環境学研究科)

17:00 〜 17:15

[S15-03] 四半世紀超のK-NET・KiK-net強震データにおける大振幅地震動

*青井 真1、功刀 卓1、鈴木 亘1、藤原 広行1 (1. 防災科学技術研究所)

地震によるハザード・リスク評価にとって、地震動の上限とその特性を知ることは極めて重要な課題である。阪神・淡路大震災を契機に、全国を均質にカバーする1,750観測点余りからなる強震観測網K-NET及びKiK-netは、四半世紀余りの間に総地震数18,070、総記録数882,606に及ぶ膨大な強震記録を記録し蓄積してきた(1996/6/1~2022/6/30、以下同様)。K-NET及びKiK-netによる稠密な観測を持続的に実施することにより、過去知られていたよりかなり振幅の大きな地震動(いわゆる極大地震動)の存在が明らかになってきた。
 地表における3成分合成の最大加速度(PGA)及び最大速度(PGV、0.1 Hzハイパスフィルター適用)の上位100記録(以下、Top100)のうち、PGAの最大と最小は2008年岩手・宮城内陸地震及び同地震の余震のIWTH25における4,022 cm/s/sと824 cm/s/sであり、PGVの最大と最小は2018年北海道胆振東部地震のHKD126における151 cm/s及び2021年福島県沖の地震FKSH11における53 cm/sである。本講演ではどのような地震で大振幅地震動が記録されたのかを知るため、Top100のデータを、陸域で発生する地震、プレート境界地震、スラブ内地震の三つに分類し、その特徴を考察する。
 陸域で発生する地震の多くを占める地殻内地震は浅い場所で発生するため、特に大きな地震動が記録されるのは、地盤条件にもよるが、断層近傍である場合が多い。Mjが概ね6後半より大きな地震では複数の観測点でTop100内のPGAやPGVが記録されることがある。また、震央距離と震源深さがともに10 km程度以下の地震規模のやや小さな地震においても1gを越えるPGAが記録された地震が7地震ある。このような震源近傍の大振幅地震動の様相は、継続的に稠密観測網を行うことで観測機会が増えたことにより初めて捉えられるようになったと言える。また、陸域で発生し震源が深い地震として、2018年北海道胆振東部地震においてPGAは8観測点、PGVは2観測点でTop100内の地震動を記録している。
 プレート境界地震としては、Mj9.0の2011年東北地方太平洋沖地震は極めて広域で大きな地震動が記録されており、PGAで29記録、PGVで35記録と、一つの地震としては圧倒的に多くの記録がTop100に入っている。PGVでは長周期が効きやすいため2003年十勝沖地震で11記録がTop100に入り、この二つの地震で半分近くを占めている。ただし、プレート境界地震は規模の大きな地震も多く発生するが、陸域から遠いあるいは深いなど震源距離が長い場合が多く、地震規模の割には必ずしも大震幅の地震動にはならず、他に大きな地震動を記録した地震は比較的少ない。
 スラブ内地震は地殻内地震にくらべ震源が深いため、2003年及び2011年の宮城県沖の地震ではそれぞれ8観測点でTop100内のPGAを記録するなど、地震規模の割には比較的広域で大きな地震動が生じることがある。短周期が卓越する傾向があるためTop100の割合はPGAの方が多いがPGVが大きな地震も複数ある。2001年芸予地震と2022年日向灘の地震以外は全て東北地方で起きた地震である点も特徴的である。