The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] AM-1

Wed. Oct 26, 2022 9:30 AM - 11:00 AM ROOM B (4th floor (Large Conference Room))

chairperson:Toshihiro Shimoyama(Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency), Kotoyo Tsuchida(Hanshin Consultants Co., Ltd.)

9:30 AM - 9:45 AM

[S15-06] Is it feasible to derive high-frequency EGTDs? part (1)

Mitsuhiro Toya1, Sayumi Yoshida2, *Kotoyo Tsuchida1, Masanori Horike1 (1. Hanshin Consultants Co., Ltd., 2. N/A)

1.初めに
 点震源とみなせる震源から放射された地震動はモーメントテンソルとグリーン関数の空間微分のコンボルーションにより得られる。この二項を分離することは、震源と伝播経路のどちらの研究においても重要である。分離には、どちらかの項が既知でなければならないが、従来はグリーン関数を数値的な方法や経験的な方法で求めてきた。しかし、これらの方法には欠点がある。
 数値的な方法として、周波数―波数積分法、差分法、有限要素法が提案されている。これらの手法は固有の長所と短所を有しているが、高周波数地震動の計算には短波長の不均質地下構造が必要となるため実用的な意味で計算できないという共通の困難も抱えている。
 もう一つの方法は、観測波形をグリーン関数とみなす経験的グリーン関数法である。この手法では、高周波数までの利用可能性はあるが、発震機構や震源時間関数が異なる場合それらの補正を正確に行うのは難しい。
 Plicka & Zahradnik (1998)は、上述した数値計算法や経験的グリーン関数法の欠点を克服する方法を提案した。具体的には、点震源と仮定できる領域内の複数の余震から放射された地震動波形からグリーン関数の空間微分を抽出する方法である。この手法では地下構造は必要なく、またグリーン関数の空間微分値(EGTD)は点震源の条件を満たす高周波数成分まで含むことができる。EGTDが得られると、任意の発震機構とモーメントレート関数を持つ地震の地震動計算が可能となる。これにより、減衰や散乱等の伝播経路の性質を正確に評価できる。また、震源の性質の解明にも利用できる。例えば、震源インバージョンに用いると、高周波数地震動の発震域を特定できる。さらに、このインバージョン結果を用いれば、断層の摩擦則のパラメータ、特にDc(critical distance)を精度よく推定できる可能性もある。
 このようにEGTDが推定できれば伝播経路や震源研究の有力なツールとなると期待できるが、実用化に向けた研究は不足している。実用化には、以下の3課題を解決する必要がある。(1)震源位置、断層パラメータ、モーメントレート関数の正確な決定、(2)どの程度の範囲内にある余震群からどのくらいの高周波数までのEGTDが推定可能か、(3)使用する震源時間関数の選択、である。ここでは課題(1)について述べ、課題(2)、(3)については、その(2)で述べる。

2. EGTD推定に必要な震源パラメータの決定
 EGTDの推定には様々な震源に関するパラメータが必要となる。ここでは、これらの推定について述べる。先ず、使用した波形データについて述べる。我々は熊本地震余震の臨時観測を2016年5月6日から6月27日まで行った。この臨時観測のデータと気象庁一元化カタログに掲載されているこの期間に発生したMj2程度以上の地震を対象として,Hi-netや気象庁などの定常観測点での波形データを統合したものを用いて震源パラメータを決定した。密な観測点を用いるため高精度の震源位置と震源パラメータの決定が期待できる。
 震源決定では、先ずWIN システムを用いて得た波形データからP 波およびS波到達時刻、P 波の初動極性の読み取りを行った。次に読み取ったP 波・S 波走時から、WIN システムに含まれている震源決定プログラムhypomhを用いて震源決定を行い、最後にdouble-difference(DD)法を用いて震源再決定を行った。
 震源決定で読み取った地震のうち、P 波の初動極性が10点以上ある地震を対象として断層パラメータ(走行、傾斜、滑り角)を推定した。断層パラメータの推定は、Hardbeck and Sheare (2002)によるプログラムHASH1.2 を用いている。最終的に解が収束し、ある程度精度の良い結果となった640個の余震の断層パラメータを得た。推定された断層パラメータのタイプ分けを行うと、正断層横ずれタイプが多いことが分かった。また、推定した断層パラメータの信頼度を3段階で表示した。
 決定した震源位置を用いて、EGTD推定に使用する直径1kmと2kmの範囲内に6余震以上ある余震群を探した。その結果、直径1kmの範囲内では2グループあり、以後これらをA1グループ 、A2グループと呼ぶ。直径2kmの範囲内でも3グループあり,それぞれB1グループ、B2グループ、B3グループと呼ぶ。 モーメントレート関数を決める。具体的には、関数そのものではなく地震モーメントM0とコーナー周波数Fc である。5グループ39余震を対象として、観測記録のスペクトルのインバージョンを用いて、余震の放射震源スペクトルを求めた。この際、地表と岩盤の観測点のスペクトル比を付加条件とした。放射震源スペクトルがω-2則に従うと仮定して、フィッティングによりM0Fcを求めた。

3.最適な震源パラメータ
 前節で述べた震源に関するパラメータの推定法は様々な仮定に基づいており真の値ではない。そこで、この研究では遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて得られる震源パラメータの最適値によるEGTD推定を行う。具体的には、地震モーメント、震源時間関数の時間パラメータ、断層の走行、傾斜、滑り角の5パラメータの最適値を求めた。