9:45 AM - 10:00 AM
[S15-07] Is it feasible to derive high-frequency EGTDs? part(2)
1.初めに
その(1)で述べたように、高周波数EGTDの推定が可能となると、伝播経路の性質の推定研究や震高周波数震源インバージョンやその結果として動的モデルの研究にも大きく寄与する。したがって、地震動から安定的に高周波数EGTDを取り出す方法を確立することは重要である。このためには、以下の課題を解決する必要がある。(1)どの程度の範囲内にある余震群からどのくらいの高周波数までのEGTDが推定可能か、(2)使用する震源時間関数の関数形の選択、(3)震源位置、断層パラメータ、震源時間関数のパラメータの決定の3課題である。課題(3)についてはその(1)で述べたので、ここでは課題(1)、(2)について述べる。EGTD推定に使用するデータは、熊本地震のMj1.5~3.5の余震で、熊本県とその周辺に設置されたHi-net観測点(震源距離10km~50km)において5月6日から6月27日までに記録されたものである。
震源位置からEGTD推定のために5余震グループを作成した。2グループは直径1kmの範囲に余震が分布し、それぞれA1, A2グループと呼ぶ。残りの3グループは直径2kmの範囲に分布しB1, B2, B3とそれぞれ呼ぶ。異なる範囲の余震グループを作成した理由は、余震の分布範囲の影響を調べるためである。
2.解析
課題(1)のために、各グループ内のすべての余震とすべての観測点の記録を用いて余震グループとすべての観測点間の3成分のEGTDを推定した。さらに、それらのEGTDを用いて観測記録の再現を試みた。高周波数限界を調べるために3つのローパスフィルタを準備した。具体的には高周波数限界として、4Hz, 8Hz, 16Hzとした。EGTDを用いた計算波形の観測記録の再現性の評価には両者の相互相関係数を用いた。この相関係数を用いて高周波数の限界と余震群の範囲について検討する。EGTDの推定では、GAを用いて最適な断層パラメータと震源時間関数に対するEGTDを求めた。世代数は1000、染色体数は500とした。検索範囲はその(1)での値を基準として適切な範囲に設定した。なお、この処理を再現解析と呼ぶ。
課題(2)のために二つのステップからなる解析を行った。先ずグループ内の1余震を除いた残りの余震からEGTDを推定した。次に、仮定した震源時間関数と推定したEGTDを用いて除外した余震の予測波形を計算し、観測波形の再現の程度を相互相関係数で評価した。なお、両ステップでGAを用いている。 この解析を予測解析と呼ぶ。
予測解析を震源時間関数としてステップ関数と双曲線正接関数(tanh)の和である時間関数(SSF関数)と二等辺三角形の時間関数(TAF関数)を用いて行った。どちらがよりよく観測記録を予測できるかを比較し、この手法により適切な震源時間関数の選択が可能かどうかを調べた。
3.結果
先ず、A1グループのSSF関数を仮定した再現解析の結果について述べる。このグループでは、きわめて高い類似度を示した。全余震の全観測点で3成分波形の相関係数は16Hzでほぼ0.8以上、8Hzで0.9以上、4Hzで0.95以上となった。A2グループでは、7余震のうち1余震の相関係数がどの観測点でも低いためA1グループほどの再現性はないが、それでも4Hzでは相関係数は0.8以上となった。なお、相関係数の低い1余震を除くとA1グループと同程度の再現性を示した。
余震の分布範囲が2kmのB1, B2, B3グループでは、相関係数は低く4Hzでも0.8以下となる場合がかなりあった。この結果は余震分布範囲が大きいほど、点震源の仮定が成り立たないためEGTDの精度が悪くなることと対応している。
震源時間関数の影響を調べるためTAF関数を用いて再現解析を行った。結果は、SSF関数とほぼ同じ程度の観測記録の再現性を示した。これは、異なる震源時間関数を用いても観測記録をかなりよく再現できる高周波数EGTDが推定できることを意味すると同時に、真の高周波数EGTDを得るためには真の震源時間関数を用いる必要があることも意味する。実際二つの震源時間関数から得たEGTD波形を比較すると明らかに異なっていた。以上の再現に関する検討は、真の震源時間関数を用いれば高周波数EGTDが推定できることも示唆している。したがって、次の課題は真の震源時間関数を見つける手法はあるのか、さらにその方法はどのようなものかである。異なる震源時間関数でも同程度の再現性が得られる理由は、震源時間関数とEGTDの合積(あるいは、周波数領域の掛け算)が同じものとなっているためと考えられる 。
先述した予測解析により震源時間関数の優劣を決められるかを検討する。二つの震源時間関数(SSF&TAF)を仮定して、予測解析を行った。予測精度は相互相関関数で評価した。どちらの震源時間関数を用いてもほぼ同程度の予測となった。この結果は、提案した予測解析で震源時間関数の優劣を決定することは難しいことを意味する。
この研究では、震源時間関数が求まれば半径1km程度の範囲内にある余震を用いて高周波数(10Hz程度)の高精度EGTDが求まる可能性を示した。また、真のあるいはそれに近い震源時間関数を用いなければ、正確なEGTDは求まらないことも示した。さらに、予測解析による既存の震源時間関数の優劣の決定の可能性を調べたが、難しいことが分かった。
その(1)で述べたように、高周波数EGTDの推定が可能となると、伝播経路の性質の推定研究や震高周波数震源インバージョンやその結果として動的モデルの研究にも大きく寄与する。したがって、地震動から安定的に高周波数EGTDを取り出す方法を確立することは重要である。このためには、以下の課題を解決する必要がある。(1)どの程度の範囲内にある余震群からどのくらいの高周波数までのEGTDが推定可能か、(2)使用する震源時間関数の関数形の選択、(3)震源位置、断層パラメータ、震源時間関数のパラメータの決定の3課題である。課題(3)についてはその(1)で述べたので、ここでは課題(1)、(2)について述べる。EGTD推定に使用するデータは、熊本地震のMj1.5~3.5の余震で、熊本県とその周辺に設置されたHi-net観測点(震源距離10km~50km)において5月6日から6月27日までに記録されたものである。
震源位置からEGTD推定のために5余震グループを作成した。2グループは直径1kmの範囲に余震が分布し、それぞれA1, A2グループと呼ぶ。残りの3グループは直径2kmの範囲に分布しB1, B2, B3とそれぞれ呼ぶ。異なる範囲の余震グループを作成した理由は、余震の分布範囲の影響を調べるためである。
2.解析
課題(1)のために、各グループ内のすべての余震とすべての観測点の記録を用いて余震グループとすべての観測点間の3成分のEGTDを推定した。さらに、それらのEGTDを用いて観測記録の再現を試みた。高周波数限界を調べるために3つのローパスフィルタを準備した。具体的には高周波数限界として、4Hz, 8Hz, 16Hzとした。EGTDを用いた計算波形の観測記録の再現性の評価には両者の相互相関係数を用いた。この相関係数を用いて高周波数の限界と余震群の範囲について検討する。EGTDの推定では、GAを用いて最適な断層パラメータと震源時間関数に対するEGTDを求めた。世代数は1000、染色体数は500とした。検索範囲はその(1)での値を基準として適切な範囲に設定した。なお、この処理を再現解析と呼ぶ。
課題(2)のために二つのステップからなる解析を行った。先ずグループ内の1余震を除いた残りの余震からEGTDを推定した。次に、仮定した震源時間関数と推定したEGTDを用いて除外した余震の予測波形を計算し、観測波形の再現の程度を相互相関係数で評価した。なお、両ステップでGAを用いている。 この解析を予測解析と呼ぶ。
予測解析を震源時間関数としてステップ関数と双曲線正接関数(tanh)の和である時間関数(SSF関数)と二等辺三角形の時間関数(TAF関数)を用いて行った。どちらがよりよく観測記録を予測できるかを比較し、この手法により適切な震源時間関数の選択が可能かどうかを調べた。
3.結果
先ず、A1グループのSSF関数を仮定した再現解析の結果について述べる。このグループでは、きわめて高い類似度を示した。全余震の全観測点で3成分波形の相関係数は16Hzでほぼ0.8以上、8Hzで0.9以上、4Hzで0.95以上となった。A2グループでは、7余震のうち1余震の相関係数がどの観測点でも低いためA1グループほどの再現性はないが、それでも4Hzでは相関係数は0.8以上となった。なお、相関係数の低い1余震を除くとA1グループと同程度の再現性を示した。
余震の分布範囲が2kmのB1, B2, B3グループでは、相関係数は低く4Hzでも0.8以下となる場合がかなりあった。この結果は余震分布範囲が大きいほど、点震源の仮定が成り立たないためEGTDの精度が悪くなることと対応している。
震源時間関数の影響を調べるためTAF関数を用いて再現解析を行った。結果は、SSF関数とほぼ同じ程度の観測記録の再現性を示した。これは、異なる震源時間関数を用いても観測記録をかなりよく再現できる高周波数EGTDが推定できることを意味すると同時に、真の高周波数EGTDを得るためには真の震源時間関数を用いる必要があることも意味する。実際二つの震源時間関数から得たEGTD波形を比較すると明らかに異なっていた。以上の再現に関する検討は、真の震源時間関数を用いれば高周波数EGTDが推定できることも示唆している。したがって、次の課題は真の震源時間関数を見つける手法はあるのか、さらにその方法はどのようなものかである。異なる震源時間関数でも同程度の再現性が得られる理由は、震源時間関数とEGTDの合積(あるいは、周波数領域の掛け算)が同じものとなっているためと考えられる 。
先述した予測解析により震源時間関数の優劣を決められるかを検討する。二つの震源時間関数(SSF&TAF)を仮定して、予測解析を行った。予測精度は相互相関関数で評価した。どちらの震源時間関数を用いてもほぼ同程度の予測となった。この結果は、提案した予測解析で震源時間関数の優劣を決定することは難しいことを意味する。
この研究では、震源時間関数が求まれば半径1km程度の範囲内にある余震を用いて高周波数(10Hz程度)の高精度EGTDが求まる可能性を示した。また、真のあるいはそれに近い震源時間関数を用いなければ、正確なEGTDは求まらないことも示した。さらに、予測解析による既存の震源時間関数の優劣の決定の可能性を調べたが、難しいことが分かった。