10:15 AM - 10:30 AM
[S15-09] Variation of long-period strong ground motions at Hitachi-Naka port depending on the epicenter regions
やや長周期帯域(周期数秒から十数秒)の地震動は,観測点直下の地下構造に加え周辺地域の地下構造の影響を受けるため,観測点から見て特定の方角の地震により特徴的な波群が確認されることがある.植竹(2017)は,2016年12月28日茨城県北部の地震(M6.3)により常陸那珂火力地点(HTN)で観測された周期2秒の後続波群について,周辺地域の観測記録を分析し,この波群が地下構造モデル[例えば,地震調査研究推進本部(2021)]が茨城県北部(HTNの西側)に示唆する地震基盤の窪地で発生した可能性を示した.また,植竹(2018)は,HTNから100 km圏で発生したM6~7クラスの地震に対し速度応答スペクトルの分析を行い,茨城県北部・福島県東部・栃木県北部で発生した地震では,上下動に周期2秒の後続波が認められるが,千葉県東方沖から福島県沖の海域で発生した地震ではそれが認められないことを報告した. 今回は,より広域で発生したM6~8クラスの地震について,水平動を含めてスペクトル特性の変化を調べ,地震基盤の浅いKiK-net[NIED(2019)]のひたちなか観測点(IBRH18)に対する相対的な増幅特性を調べた.なお,HTNとIBRH18は約8 km離れているが,今回検討対象とした地震では,両地点の入射波は同等と見なした.
今回の検討のきっかけは,2022年1月22日の日向灘の地震(M6.6)である.この地震によるHTNの記録は,震央距離が短い東京湾岸の観測点より大きな速度振幅を示し,周期3~4秒の震動が卓越していた.あらためて過去の記録を検討すると,西日本で発生した2016年熊本地震(M7.3),2016年鳥取県中部(M6.6)の記録でも周期3~4秒の卓越が確認された.2013年栃木県北部の地震(M6.3)では,水平動の周期3~4秒のピークとともに上下動に周期2秒のピークが確認できる.茨城県北部・福島県東部の浅い地震では,上下動の周期2秒に顕著なピークが認められる.一方,千葉県東方沖から宮城県沖で発生した地震では顕著なピークは認められなかった.さらに,2015年5月30日の小笠原諸島西方沖の深発地震(M8.1,深さ682km)の応答スペクトルでも顕著なピークは認められなかった.このように応答スペクトルの特徴には震源地域の依存性が認められる.
HTNにおいて水平動の3~4秒にピークの見られた2013年栃木県北部の地震(M6.3),上下動の2秒にピークの見られた2016年茨城県北部の地震(M6.3),顕著なピークの見られなかった2011年7月31日福島県沖の地震(M6.5),2015年小笠原諸島西方沖の地震(M8.1)について,HTNとIBRH18の速度波形,スペクトル特性の比較を行った.両地点の速度波形を比較すると,いずれの地震でも両地点での主要動は類似しているが,HTNのやや長周期帯域に顕著なピークが見られる栃木県北部や茨城県北部の地震では, HTNの記録には遅れて出現するやや長周期の後続波群が認められる.また,いずれの地震でもIBRH18のスペクトル特性には,やや長周期帯域に顕著なピークは認められないことから,HTNにおけるピークの生成は震源に起因するものではないと考えられる.HTNとIBRH18のフーリエスペクトル比を図に示す.解析区間は、主要動を含む160秒間で後続波群も含んでいる.スペクトル比には,それぞれの観測点直下の構造の違いの影響も含まれているが,栃木県北部と茨城県北部の地震で振幅の大きな周期帯には,表面波と推定される後続波群が重要な役割を果たしていると考えられる. HTNの西側で発生した地震に対し,HTNとIBRH18の後続波の違いが顕著になる.
HTNは茨城県北部域の地震基盤の窪みと海側の地震基盤の深まりがつながるチャンネル上に位置しており,西側の窪みで成長した表面波はHTN付近を通過して東に向かう.こういった構造の影響が,HTNにおけるやや長周期帯域での地震動特性の震源地域依存性に影響していると考えられる.
文献:
地震調査研究推進本部(2021),関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデル(2021年版).
NIED (2019), NIED K-NET, KiK-net, National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, doi:10.17598/NIED.0004.
植竹(2017),2016年12月28日茨城県北部の地震により常陸那珂港で観測された顕著な後続波群,日本建築学会大会(中国)学術講演梗概集,165-166.
植竹(2018),常陸那珂港で観測される周期2秒の顕著な後続波群,日本地震学会2018年秋季大会講演予稿集,S15-06.
今回の検討のきっかけは,2022年1月22日の日向灘の地震(M6.6)である.この地震によるHTNの記録は,震央距離が短い東京湾岸の観測点より大きな速度振幅を示し,周期3~4秒の震動が卓越していた.あらためて過去の記録を検討すると,西日本で発生した2016年熊本地震(M7.3),2016年鳥取県中部(M6.6)の記録でも周期3~4秒の卓越が確認された.2013年栃木県北部の地震(M6.3)では,水平動の周期3~4秒のピークとともに上下動に周期2秒のピークが確認できる.茨城県北部・福島県東部の浅い地震では,上下動の周期2秒に顕著なピークが認められる.一方,千葉県東方沖から宮城県沖で発生した地震では顕著なピークは認められなかった.さらに,2015年5月30日の小笠原諸島西方沖の深発地震(M8.1,深さ682km)の応答スペクトルでも顕著なピークは認められなかった.このように応答スペクトルの特徴には震源地域の依存性が認められる.
HTNにおいて水平動の3~4秒にピークの見られた2013年栃木県北部の地震(M6.3),上下動の2秒にピークの見られた2016年茨城県北部の地震(M6.3),顕著なピークの見られなかった2011年7月31日福島県沖の地震(M6.5),2015年小笠原諸島西方沖の地震(M8.1)について,HTNとIBRH18の速度波形,スペクトル特性の比較を行った.両地点の速度波形を比較すると,いずれの地震でも両地点での主要動は類似しているが,HTNのやや長周期帯域に顕著なピークが見られる栃木県北部や茨城県北部の地震では, HTNの記録には遅れて出現するやや長周期の後続波群が認められる.また,いずれの地震でもIBRH18のスペクトル特性には,やや長周期帯域に顕著なピークは認められないことから,HTNにおけるピークの生成は震源に起因するものではないと考えられる.HTNとIBRH18のフーリエスペクトル比を図に示す.解析区間は、主要動を含む160秒間で後続波群も含んでいる.スペクトル比には,それぞれの観測点直下の構造の違いの影響も含まれているが,栃木県北部と茨城県北部の地震で振幅の大きな周期帯には,表面波と推定される後続波群が重要な役割を果たしていると考えられる. HTNの西側で発生した地震に対し,HTNとIBRH18の後続波の違いが顕著になる.
HTNは茨城県北部域の地震基盤の窪みと海側の地震基盤の深まりがつながるチャンネル上に位置しており,西側の窪みで成長した表面波はHTN付近を通過して東に向かう.こういった構造の影響が,HTNにおけるやや長周期帯域での地震動特性の震源地域依存性に影響していると考えられる.
文献:
地震調査研究推進本部(2021),関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデル(2021年版).
NIED (2019), NIED K-NET, KiK-net, National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, doi:10.17598/NIED.0004.
植竹(2017),2016年12月28日茨城県北部の地震により常陸那珂港で観測された顕著な後続波群,日本建築学会大会(中国)学術講演梗概集,165-166.
植竹(2018),常陸那珂港で観測される周期2秒の顕著な後続波群,日本地震学会2018年秋季大会講演予稿集,S15-06.