日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15] AM-2

2022年10月26日(水) 11:15 〜 12:30 B会場 (4階(大会議室))

座長:岩城 麻子(防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設技術研究所)

11:30 〜 11:45

[S15-13] ブロックインバージョン解析に基づく東北地方太平洋沖で発生する地震の距離減衰特性の推定

*友澤 裕介1、引田 智樹1 (1. 鹿島技術研究所)

1.はじめに
 近年の強震観測記録の増加に伴い,地震動予測式の回帰係数に空間変動を考慮した研究が行われている (例えば,Landwehr et al., 2016; 引田・他, 2020)。高精度な地震動予測モデルを構築するためには,空間変動の要因となる震源励起特性の地域性や伝播経路特性の不均質性を詳細に評価することが重要となる。本検討では,これらのうち伝播経路特性に着目し,東北地方太平洋沖で発生する地震の空間変動の基礎的情報となる海洋プレートを含む三次元不均質減衰構造(不均質Q 値構造)をブロックインバージョン解析により推定した。
2.データセット
 東北地方太平洋沖で発生した地震のうちK-NET,KiK-net,S-netで観測された以下の条件に適合する記録を収集した。対象期間は,観測開始から2022年3月31日まで,MW 4.5以上7.0未満。震源距離範囲は,内陸地殻内地震では100 km以下,プレート間地震とプレート内地震では,200 km以下。地盤の非線形化の影響を避けるため,K-NETとS-netは100 cm/s2以下の記録を用い,KiK-netは地中記録を用いた。S-netの観測記録は,Takagi et al. (2019) の姿勢角情報を基に回転補正を行った。地震による揺れの途中で加速度波形にオフセット変化を生じさせるような強震動を受けた観測点では,姿勢角に変化が生じたと判断して,それ以後に発生した地震の記録は用いないこととした。対象地震と観測点の分布を図1に示す。
3.解析結果
 解析手法は,友澤ほか (2021) と同様である。伝播経路特性は,深さ方向を大陸地殻,マントル,太平洋プレートの3層でモデル化し,各層の水平方向の不均質性を考慮してモデル化した。震源と観測点を結ぶ断面で2次元レイトレースを行って,各層の伝播距離を評価した。地震本部 (2012) を参照して各層の境界は第17層のマントル,第21層の海洋性地殻第2層(太平洋プレート)の上面深度を用いた.S波速度はそれぞれ3.4 km/s,4.5 km/s,4.6 km/sとした。推定した不均質減衰構造を図2に示す。大陸地殻の不均質減衰構造は,東北地方北部の火山帯周辺でlow-Qの領域が推定された。本検討のデータセットには,東北地方で発生した内陸地殻内地震を多く含んでいないため,宮城県以南の活火山周辺の減衰構造の不均質性の推定はできていないと考えられる。マントルの不均質減衰構造は,主に活火山直下で相対的にlow-Qの領域が広がっている。太平洋プレートでは,深さが深い領域ほど相対的にhigh-Qとなる傾向が得られた。推定した不均質減衰構造を用いて,宮城県沖で発生する深さ40 kmのプレート間地震を想定し,地震基盤面上での地震動振幅の面的評価を行った結果を図4に示す。火山フロントを通過すると地震動が減衰し,振幅が同心円所に広がらない異常震域が再現されている。 今後は,推定した不均質減衰構造を考慮に入れた地震動予測モデルの構築を検討する。
謝辞
 防災科学技術研究所K-NET,KiK-net,S-net,F-netを活用させていただきました。記して感謝します。
参考文献
 Landwehr et al. (2016), BSSA, Vol. 106, No. 6. Takagi et al. (2019), SRL, Vol. 90, No. 6. 地震調査研究推進本部 (2012), 長周期地震動予測地図2012年試作版. 友澤・他 (2021), SSJ秋季大会, S15P-01. 引田・他 (2020), 日本地震工学会論文集, 第20 巻, 第2 号.