12:15 〜 12:30
[S15-16] 強震動データベースに基づく地震動予測モデルの比較
強震動観測記録に基づく経験的な地震動予測モデル(Ground Motion Model; GMM)は確率論的地震ハザード評価(Probabilistic Seismic Hazard Assessment; PSHA)の基盤となる。日本国内では豊富な強震記録に基づいて多くのGMMが作られ分析が進められてきたが、作成条件やデータセットの異なるGMM同士はデータ処理方法や地震動指標値が異なるため定量的比較が難しい場合があり、強震動予測やPSHAにおける認識論的不確定性を増加させる要因となっている。そこで、強震観測記録を統一的に扱うことのできる共通基盤としての強震動データベースとそれに基づく複数のGMMを構築する取り組みを進めている(森川・他, 2022)。
本研究では、GMMのばらつきや認識論的不確定性の定量化を目指し、防災科研のK-NET, KiK-net観測記録による地震動指標値、防災科研J-SHISの地盤情報も含めた観測点情報、気象庁一元化処理震源及び防災科研F-netの震源情報からなる強震動データべース(森川・他, 2022)を用いて作られた複数のGMMについて、定量的な比較と特徴付けの方法を検討する。 本検討で用いるGMMは以下の6つである。これらのGMMには、定式化を伴う回帰分析をベースにしたもの(モデルA, B, F)、定式化を伴わない機械学習によるもの(モデルC)、それらの組み合わせによるもの(モデルD, E)が含まれる。
モデルA:Morikawa and Fujiwara (2013; MF13式)に遠方補正を適用したモデル(森川・他2021)
モデルB:司・翠川(1999)をM8.3以上の大地震に対応させたモデル(司・纐纈・三宅2016)
モデルC:一部の入力変数(M・距離・VS30)に単調依存性を課したNeural networkによるモデル (Okazaki et al. 2021)
モデルD:MF13式とExtremely Randomized Treeの組み合わせによるモデル(Kubo et al. 2020)
モデルE:MF13式による出力も説明変数に加えた勾配ブースティング木のモデル(小穴・他, 2022)
モデルF:ブロックインバージョン解析による地殻の不均質Q値を反映させ伝播経路特性の不均質性を考慮したモデル(友澤・引田2022)
一般にGMMには地震動特性を長期間・広範囲で捉えた時の平均値の安定性を仮定して全観測点で得られた記録を使用したエルゴード的なGMMのほか、観測点固有のサイト特性を反映させたGMMや、豊富な観測記録を活用し震源位置や対象地点を特定することによりさらにばらつきを低減させたGMMも開発されている。特に、特定地点のPSHAの目的においては、観測点固有のサイト特性を反映したGMMの重要性は高い。上記6モデルのサイト特性の反映方法はさまざまであり、またモデルEとFはGMMの入力に観測点・震源位置の両方を指定するモデルとなっている。 本検討では、このように作成方法や特徴の異なる複数のGMMについて特徴を比較するため、いくつかの指定した観測点において、いくつかのタイプの地震に対する地震動予測結果を比較する。その際、GMMへの入力変数として
(1)該当観測点の地盤情報を反映したパラメータ(VS30など)のみを用いる場合
(2)該当観測点固有の情報(位置情報等を含む)を用いる場合
のいずれかまたは両方について、各モデルの出力結果の比較を行い、それぞれの違いを考察するとともに、観測点固有のサイト特性の反映方法が予測結果に及ぼす影響を検討する。
謝辞:本研究はJSPS科研費(20H00292)の助成を受けたものである。
本研究では、GMMのばらつきや認識論的不確定性の定量化を目指し、防災科研のK-NET, KiK-net観測記録による地震動指標値、防災科研J-SHISの地盤情報も含めた観測点情報、気象庁一元化処理震源及び防災科研F-netの震源情報からなる強震動データべース(森川・他, 2022)を用いて作られた複数のGMMについて、定量的な比較と特徴付けの方法を検討する。 本検討で用いるGMMは以下の6つである。これらのGMMには、定式化を伴う回帰分析をベースにしたもの(モデルA, B, F)、定式化を伴わない機械学習によるもの(モデルC)、それらの組み合わせによるもの(モデルD, E)が含まれる。
モデルA:Morikawa and Fujiwara (2013; MF13式)に遠方補正を適用したモデル(森川・他2021)
モデルB:司・翠川(1999)をM8.3以上の大地震に対応させたモデル(司・纐纈・三宅2016)
モデルC:一部の入力変数(M・距離・VS30)に単調依存性を課したNeural networkによるモデル (Okazaki et al. 2021)
モデルD:MF13式とExtremely Randomized Treeの組み合わせによるモデル(Kubo et al. 2020)
モデルE:MF13式による出力も説明変数に加えた勾配ブースティング木のモデル(小穴・他, 2022)
モデルF:ブロックインバージョン解析による地殻の不均質Q値を反映させ伝播経路特性の不均質性を考慮したモデル(友澤・引田2022)
一般にGMMには地震動特性を長期間・広範囲で捉えた時の平均値の安定性を仮定して全観測点で得られた記録を使用したエルゴード的なGMMのほか、観測点固有のサイト特性を反映させたGMMや、豊富な観測記録を活用し震源位置や対象地点を特定することによりさらにばらつきを低減させたGMMも開発されている。特に、特定地点のPSHAの目的においては、観測点固有のサイト特性を反映したGMMの重要性は高い。上記6モデルのサイト特性の反映方法はさまざまであり、またモデルEとFはGMMの入力に観測点・震源位置の両方を指定するモデルとなっている。 本検討では、このように作成方法や特徴の異なる複数のGMMについて特徴を比較するため、いくつかの指定した観測点において、いくつかのタイプの地震に対する地震動予測結果を比較する。その際、GMMへの入力変数として
(1)該当観測点の地盤情報を反映したパラメータ(VS30など)のみを用いる場合
(2)該当観測点固有の情報(位置情報等を含む)を用いる場合
のいずれかまたは両方について、各モデルの出力結果の比較を行い、それぞれの違いを考察するとともに、観測点固有のサイト特性の反映方法が予測結果に及ぼす影響を検討する。
謝辞:本研究はJSPS科研費(20H00292)の助成を受けたものである。