The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] PM-1

Wed. Oct 26, 2022 2:00 PM - 3:15 PM ROOM B (4th floor (Large Conference Room))

chairperson:Kazuhito Hikima(Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc.), Wataru Suzuki(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

2:15 PM - 2:30 PM

[S15-18] Rupture processes of the 2021 and 2022 Fukushima-oki earthquakes: Reactivation of the faults in the subducting slab originally formed in the outer-rise region

*Hiroaki KOBAYASHI1, Tetsushi Watanabe1, Kazuki Koketsu2 (1. Kobori Research Complex, 2. Graduate School of Media and Governance, Keio University)

2021年と2022年に福島県沖で発生したMJMA7.3とMJMA7.4の2つのスラブ内地震は,共に宮城県と福島県で最大震度6強が観測され,人的・住家被害が出た.余震分布などから,これら2地震はスラブ内で隣接する領域を破壊したと見られる.本研究では,これら2地震の断層構造と破壊過程を把握するため,強震・遠地・測地データを用いて震源過程解析を行った.
 強震波形はK-NET,KiK-net,JMAのデータを用いた.解析には0.05-0.4 Hzのバンドパスフィルタをかけた速度波形を用いた.遠地波形はIRIS-DMCからデータを入手した.解析には0.01-0.4 Hzのパンドパスフィルタをかけた変位波形を用いた.測地データは,国土地理院のGEONETの日々の座標値(F5解)を用いた.地震時の変位はGEONET岩崎(950154)を固定し,地震前後7日間の平均値の差を取ることによって求めた.
 震源インバージョン手法はマルチタイムウィンドウ線形インバージョン法(Yoshida et al. 1996; Hikima and Koketsu, 2005)を用いた.観測点が震源から見て片側にしかないため,ジョイント時は強震・測地のデータセットの重みは遠地の半分に設定した.強震・測地・遠地のグリーン関数の計算には,それぞれKohketsu (1985), Kikuchi and Kanamori (1991), Zhu and Rivera (2002)の手法を用いた.グリーン関数の計算に用いた1次元地下構造モデルは,強震観測点および遠地の震源付近の構造については全国一次地下構造モデル(JIVSM, Koketsu et al., 2008; 2012)を基に構築した.その際,陸側のマントルまでと海洋性マントル(深さ43 km以深に一律に挿入)を考慮した.遠地観測点付近の構造はJ-Bモデルとし,測地観測点は強震観測点MYG011の速度構造モデルを共通して用いた.
 断層モデルの構築にあたり,まずHypoDD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により,それぞれの余震を同時に再決定した.その後,それぞれ本震後24時間の震源分布および各機関のメカニズム解を参考に断層モデルを構築した.2021年については,震源付近に西北西傾斜の面(strike 190°,dip 35°と60°),震源より南西側に東南東傾斜の面(strike 32°,dip 32°と52°)を仮定した.面はそれぞれ震源深さ付近で傾斜方向に折り曲げている.震源付近の低角の面は余震分布からは不明瞭であるが,JMAの初動解をもとに設定した.断層長さはそれぞれ10 kmと35 kmとし,幅は共通して20 kmとした.2022年については,東南東傾斜の面(strike 15°,dip 40°と52°)を仮定し,こちらも2021年と同様に震源深さ付近で傾斜方向に折り曲げた.断層長さは50 km,幅は25 kmとした.また,余震分布に整合させるために北半分については東側に数 km程度ずらしている.インバージョン解析では断層を5 km×5 kmの小断層に分割し,基底関数としては幅1秒の箱型関数を設定した.
 解析の結果,2021年はまず西北西傾斜の面上で破壊が始まり,その後東南東傾斜の面が破壊した.破壊はup-dip方向および南南西方向に進んだ.また,東南東傾斜の面の中央付近に最大すべり量4.4 mが得られた.震源時間関数は破壊開始後9秒程度に最大となり,地震モーメントは6.1×1019 Nm (Mw 7.1)と推定された.なお,第一タイムウィンドウの破壊開始時刻を決めるVrは2.9 km/s,各小断層のウィンドウ数は6とした.2022年については,震源から主に北北東およびup-dip方向に破壊が伝播した.断層中央付近に最大すべり量4.9mが得られた.震源時間関数は破壊開始後6秒後と13秒後程度に2つのピークを持ち,主に断層中央と北部のすべりに対応するが,破壊開始後12s程度以降に震源付近が遅れて破壊しており,後者のピークはその寄与もあるとみられる.地震モーメントは1.4×1021 Nm (Mw 7.4)と推定された.第一タイムウィンドウの破壊開始時刻を決めるVrは2.5 km/s,各小断層のウィンドウ数は12とした.
 近年の東北沖アウターライズ領域の調査によると,アウターライズ領域の断層のDip角は浅部で最大75°,深部では45~60°程度である(e.g., Baba et al., 2020).Iwasaki et al. (2015)のプレート境界モデルでは,今回2つの地震が発生した領域のプレートの傾斜は20°程度である.したがって,2021年と2022年の断層面のプレート境界面からの角度は余震分布からは不明瞭な2021年の破壊開始点付近の断層を除いて40~70°程度となり,アウターライズ領域の断層のDipと概ね整合的で,2011年の宮城県沖のスラブ内地震(Nakajima et al., 2011; Ohta et al. 2011)と同様に,スラブ内地震がアウターライズ領域で形成された断層の再活動であるという説(e.g., Silver et al., 1995; Jiao et al., 2000)を支持する.