14:30 〜 14:45
[S15-19] 2021年と2022年に福島県沖で発生したM7級地震の強震動分布の比較分析
2021年2月13日に福島県沖でMW7.1のスラブ内地震が発生し、2022年3月16日には再び福島県沖でMW7.3のスラブ内地震が発生した。本稿では前者をEQF2021、後者をEQF2022とする。気象庁一元化震源情報に基づくと2つの地震の震央間の距離は約8 km、深さはともに約56 kmであり、破壊開始点は非常に近接していた。防災科研AQUA-CMTによるセントロイドの水平位置の距離は約23 km、セントロイド深さの差は3 kmと破壊開始点に比べるとやや離れている。防災科研K-NET及びKiK-netによる三成分合成最大加速度(以下、PGA3)の分布を比較すると、震源域西方から南西の方向に位置する福島県内ではEQF2021とEQF2022で大きく変わらず、観測点によってはEQF2021の方が大きいケースも見られた。震源域北方の宮城県から北海道にかけてはEQF2022の方が大幅に大きく、PGA3が2倍以上となる観測点が100点弱に及ぶ。福島県以南では最大加速度が2倍以上となる観測点は兵庫県の1点を除き存在せず、南方の観測点では北方の観測点に比べてEQF2022とEQF2021のPGA3の比は大きくない。スラブ内地震どうしでMWでは0.2、地震モーメントでは2倍ほどEQF2022の方が大きいところ、PGA3の分布は単純に一律にEQF2022の方が大きい訳ではないことは興味深い。消防庁の被害状況集計によると、福島県と宮城県のEQF2021に対するEQF2022の住家被害棟数はそれぞれ約1.2倍と約1.5倍であり、EQF2022により特に宮城県が強い揺れに見舞われたことに対応していると考えられる。本研究ではこの近接して発生した2つの福島県沖の地震による強震動分布を比較分析して、その特徴及びその成因について検討を行った。
周期0.05秒から10秒までの加速度応答値(減衰5%)のEQF2021に対するEQF2022の比の分布を見ると、0.05~0.5秒ではPGA3と同様の特徴を示すが、0.6~1.0秒では福島県から関東地方内陸部さらに中部地方にかけてEQF2021の方が大きい観測点が増加する。さらに周期1.5秒以上では一転して東日本全体でEQF2022の方が大きく、この長周期帯域では地震モーメントの差が大きく影響していると考えられる。最大加速度の比較において地震モーメントの違いを補正した比較を行うため、まず観測された水平最大加速度とMorikawa & Fujiwara (2013) の地震動予測式による予測との比をとり、その比についてのEQF2021に対するEQF2022の比をとった。PGA3の比では震源域北方で一様にEQF2022が大きかったが、この分布では空間的に短波長に変化しており、EQF2022は宮城県中部から北部、そして岩手県の沿岸部にかけての揺れが特徴的に大きい様子が見られた。また振幅の大小の影響を抑えて分布形状そのものを分析するため、EQF2021からEQF2022の間に福島県沖で発生しK-NET及びKiK-netで100点以上の記録の得られた地震に対するEQF2021とEQF2022のPGA3の比をとり、比ができるだけ一定となる場合に分布が似ていると考えて比の対数標準偏差を最小とする地震を抽出した。EQF2021に対しては2021年2月15日21時26分に発生したMW5.3の地震(以下、EQ0215)、EQF2022に対しては2021年12月8日16:22に発生したMW4.7の地震(以下、EQ1208)が対数標準偏差を最小にした。EQ1208の震央位置とセントロイド位置はEQF2021の震源とセントロイド、EQF2022の震源位置に近接している一方、EQ0215の震源位置とセントロイド位置はそれらの領域より南~南西に20 km程度離れており、EQF2021に比べてEQF2022のPGA3分布が北方に延びていることに対応していると考えられる。
本研究では近傍で発生した地震どうしによる強震動分布の比を用いているため、パス及びサイト特性は相殺され震源特性に起因する地震動分布の差異を分析しているとみなせる。震源インバージョン解析ではEQF2021は破壊開始点から南西に、EQF2022は北に破壊が進展したと推定されており、本研究による結果と定性的には整合する。震源特性のうち、破壊伝播効果、強震動生成位置の違い、放射特性もしくはその他の効果のいずれがEQF2021とEQF2022の地震動分布の差異の主因であるかの検討は今後の課題である。
謝辞:気象庁による震源情報と消防庁による被害状況集計を利用しました。
周期0.05秒から10秒までの加速度応答値(減衰5%)のEQF2021に対するEQF2022の比の分布を見ると、0.05~0.5秒ではPGA3と同様の特徴を示すが、0.6~1.0秒では福島県から関東地方内陸部さらに中部地方にかけてEQF2021の方が大きい観測点が増加する。さらに周期1.5秒以上では一転して東日本全体でEQF2022の方が大きく、この長周期帯域では地震モーメントの差が大きく影響していると考えられる。最大加速度の比較において地震モーメントの違いを補正した比較を行うため、まず観測された水平最大加速度とMorikawa & Fujiwara (2013) の地震動予測式による予測との比をとり、その比についてのEQF2021に対するEQF2022の比をとった。PGA3の比では震源域北方で一様にEQF2022が大きかったが、この分布では空間的に短波長に変化しており、EQF2022は宮城県中部から北部、そして岩手県の沿岸部にかけての揺れが特徴的に大きい様子が見られた。また振幅の大小の影響を抑えて分布形状そのものを分析するため、EQF2021からEQF2022の間に福島県沖で発生しK-NET及びKiK-netで100点以上の記録の得られた地震に対するEQF2021とEQF2022のPGA3の比をとり、比ができるだけ一定となる場合に分布が似ていると考えて比の対数標準偏差を最小とする地震を抽出した。EQF2021に対しては2021年2月15日21時26分に発生したMW5.3の地震(以下、EQ0215)、EQF2022に対しては2021年12月8日16:22に発生したMW4.7の地震(以下、EQ1208)が対数標準偏差を最小にした。EQ1208の震央位置とセントロイド位置はEQF2021の震源とセントロイド、EQF2022の震源位置に近接している一方、EQ0215の震源位置とセントロイド位置はそれらの領域より南~南西に20 km程度離れており、EQF2021に比べてEQF2022のPGA3分布が北方に延びていることに対応していると考えられる。
本研究では近傍で発生した地震どうしによる強震動分布の比を用いているため、パス及びサイト特性は相殺され震源特性に起因する地震動分布の差異を分析しているとみなせる。震源インバージョン解析ではEQF2021は破壊開始点から南西に、EQF2022は北に破壊が進展したと推定されており、本研究による結果と定性的には整合する。震源特性のうち、破壊伝播効果、強震動生成位置の違い、放射特性もしくはその他の効果のいずれがEQF2021とEQF2022の地震動分布の差異の主因であるかの検討は今後の課題である。
謝辞:気象庁による震源情報と消防庁による被害状況集計を利用しました。