The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] PM-1

Wed. Oct 26, 2022 2:00 PM - 3:15 PM ROOM B (4th floor (Large Conference Room))

chairperson:Kazuhito Hikima(Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc.), Wataru Suzuki(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

2:45 PM - 3:00 PM

[S15-20] Source Processes of the Off Fukushima Intra-slab Earthquakes in March 2022 and February 2021 - Analysis using 3D subsurface structure -

*Kazuhito HIKIMA1 (1. Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. , TEPCO Research Institute)

【はじめに】
 2022年3月16日に福島県沖でMj7.4の地震が発生した.この地震の震源の近傍では,昨年,2021年2月13日にもMj7.3の地震が発生しており,わずか1年余りでM7クラスの地震が発生したことになる.いずれの地震でも福島県・宮城県で最大震度6強が観測され多くの被害が発生した.これらの地震は西北西-東南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型で,太平洋プレート内で発生した地震である(地震調査委員会,2021,2022).
 我々は,2021年の地震に対して,強震波形を使い太平洋プレートを含む3次元速度構造を考慮したGreen関数による震源インバージョン解析結果を実施した(引間, 2021).本報告では,2022年3月の地震に対して同様の手順で震源解析を行った結果を示すとともに,2021年の地震も再解析し2つの地震の相違などについても議論する.スラブ内地震による強震動を考える上でも,震源過程の解析が必要である.
【震源再決定】
 震源インバージョン解析に先立ち,本震・余震の地震の震源再決定を行った.2022年,2021年ともに本震発生後4週間以内に発生した地震について,防災科研のWebサイトで公開されている気象庁一元化処理による検測値を用いて,DD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により震源決定を行った.(Fig.1)
 再決定された余震分布はどちらも北北東-南南西方向に並びその範囲は40 km程度に及ぶ.2022年の震源は2021年の震源よりも若干北に位置する.一方で2022年の地震では余震は主に震源よりも北北東で発生しているのに対して,2021年の地震では震源の南南西で発生した余震が多い.すなわち,2022年の破壊は北北東方向に,2021年の破壊は南南西方向にユニラテラル的に進展したものと考えられる.
 どちらの余震も東南東側に高角に傾き下がる面状に分布しているが,それらの並びはある程度の幅を有している.特に,2021年の地震ではより低角な平面状に並ぶ余震群も見られた.
【震源過程解析】
 震源域が海域に位置するためやや遠い観測点も含まれるものの,震源から120 km程度以内のKiK-netの波形記録を震源インバージョン解析に使用した.また,福島県内にある東京電力の地震観測点での観測記録も解析に加えた.なお,浅部地盤による影響を軽減するために地中記録の使用を基本とした.加速度波形に0.03~0.6 Hz をフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を解析に用い,インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; 引間, 2012)により行った.
 解析の際の断層面は,再決定した余震のうち,本震後1日以内に発生した余震の分布やF-netによるメカニズム解を参考に,さらに予備的解析を行い観測波形と合成波形との残差も考慮して設定した.2022年の地震は余震分布からは局所的に異なる面が存在する可能性は考えられるものの,それらを特定することは難しいため,走向:30°,傾斜:40°の長さ44 km,幅30 kmの1枚の矩形断層を設定してすべり分布を求めることとした.2021年の地震は引間(2021)と同様に,主断層面は走向:37°,傾斜:45°の長さ40 km,幅24 kmの矩形断層とし,長さ14 km,幅12 kmの傾斜:20°の副断層面を付加した.なお,小断層サイズは2 km×2 km とした.
【3次元速度構造による波形計算】
 Green関数は3次元速度構造モデル(JIVSM; Koketsu et al., 2012)を使い,3次元差分法により計算を行った.Green関数の計算は相反定理を用いて行った.格子点間隔は水平方向に200 mの等間隔,鉛直方向には50~200 mの不等間隔,時間刻みは0.005 sとした.
【解析結果】
 2022年の地震では,震源付近と走向方向に12~24 km程度北北東に離れた付近に大きなすべりが求まった(Fig.2).最大すべり量は約3.1 mである.2021年の地震では,震源から南西側に12~20 km程度離れたやや浅部に大きなすべりが求まった.最大すべり量は2.8 m程度,副断層では約1.8 mである.地震モーメントは2022年の地震は1.03×1020 Nm (Mw 7.3),2021年の地震は全体でM0=5.45×1019 Nm (Mw7.1)と求まった.なお,これらは震源付近の3次元速度構造を考慮した値である.いずれも,JIVSMによる太平洋プレート海洋性マントル内に震源が存在し,主要な断層すべりは海洋性地殻第2層以深に止まっているように見える.2021年,2022年の一連の地震はスラブ内地震の複雑性を示しているが,今回の震源解析結果は断層モデルを考える上で参考となるものと考えられる.

謝辞:本検討ではKiK-netおよびF-netメカニズム解,JMA一元化データを使用させて頂きました.