15:30 〜 15:45
[S15-22] 強震動観測記録と地震動予測モデルによる予測値との残差データの分析
我々はこれまで、様々な強震動予測モデルの構築、改良、検証を可能とする強震動データベースを試作(森川・他、2020;JpGU)するとともに、モデルの改良とばらつきの分析を目的としてMorikawa and Fujiwara (2013) の地震動予測モデル(以下、MF13)の予測値に対する振幅比から成る「残差データ」を作成してきた(森川・他、2020;地震学会秋季大会)。さらに、この「残差データ」をもとに、MF13の適用範囲をモーメントマグニチュード(Mw)5.5未満の地震、断層最短距離200km以遠に拡張する追加補正項を求めた(森川・他、2021;地震学会秋季大会)。
本検討では、2018年3月から2021年末までのK-NET、KiK-netデータを追加し、地震タイプ(地殻内地震、海溝型プレート間地震、海溝型プレート内地震)に関する信頼性を向上させた強震動データベース(森川・他、2022;JpGU)を用いてあらためてMF13の地震動予測モデルに対する残差のデータセットを作成する。残差のデータセットの作成において予測値を求める際には、地盤増幅および観測点から火山フロントまでの距離をパラメータとした異常震域に関する補正項は考慮しない一方で、フィリピン海プレートの海溝型プレート内地震に対する追加補正(森川・藤原、2015;JpGU)と上述の森川・他(2021)による追加補正を適用した。
このようにして作成した残差データについて、Morikawa et al. (2008) に基づき「地震間」と「地震内」の残差への分離を行い、その特徴について分析する。「地震間」の残差については地震ごとにMwと震源深さとの関係を調べたところ、震源が50km程度から200km程度にかけて深くなるほど残差が大きい(観測値が予測値より大きい)傾向が海溝型プレート内地震の最大加速度をはじめとした短周期成分において見られた。ただし、それ以外の震源深さや周期1秒程度以上、他の地震タイプでこの深さ依存性は見られない。一方、「地震内」の誤差について観測点ごとにMwと震源深さに加え断層最短距離との関係を調べたところ、断層最短距離に対して「残差」の依存性が見られる点が存在している。このことは、特定地点を対象とした、あるいは伝播経路の違いによる減衰の違いを考慮した地震動予測モデル構築の有効性を示している。以上より、海溝型プレート内地震に対して震源深さに関する補正項を求めることでエルゴード的なMF13モデルのさらなる改良が見込まれる。また、観測点ごとに見られる「残差」の距離依存性を取り込む非エルゴード的なモデルの構築などの予測値の中央値(あるいは平均値)に関する改良の方向性が示された。
今後は別の地震動予測モデルを用いた場合についての検討を行うとともに、「残差」の分布形状と地震規模、断層最短距離などとの関係についての分析も進める予定である。
謝辞:本研究の一部はJSPS科研費(20H00292)の助成を受けたものである。
本検討では、2018年3月から2021年末までのK-NET、KiK-netデータを追加し、地震タイプ(地殻内地震、海溝型プレート間地震、海溝型プレート内地震)に関する信頼性を向上させた強震動データベース(森川・他、2022;JpGU)を用いてあらためてMF13の地震動予測モデルに対する残差のデータセットを作成する。残差のデータセットの作成において予測値を求める際には、地盤増幅および観測点から火山フロントまでの距離をパラメータとした異常震域に関する補正項は考慮しない一方で、フィリピン海プレートの海溝型プレート内地震に対する追加補正(森川・藤原、2015;JpGU)と上述の森川・他(2021)による追加補正を適用した。
このようにして作成した残差データについて、Morikawa et al. (2008) に基づき「地震間」と「地震内」の残差への分離を行い、その特徴について分析する。「地震間」の残差については地震ごとにMwと震源深さとの関係を調べたところ、震源が50km程度から200km程度にかけて深くなるほど残差が大きい(観測値が予測値より大きい)傾向が海溝型プレート内地震の最大加速度をはじめとした短周期成分において見られた。ただし、それ以外の震源深さや周期1秒程度以上、他の地震タイプでこの深さ依存性は見られない。一方、「地震内」の誤差について観測点ごとにMwと震源深さに加え断層最短距離との関係を調べたところ、断層最短距離に対して「残差」の依存性が見られる点が存在している。このことは、特定地点を対象とした、あるいは伝播経路の違いによる減衰の違いを考慮した地震動予測モデル構築の有効性を示している。以上より、海溝型プレート内地震に対して震源深さに関する補正項を求めることでエルゴード的なMF13モデルのさらなる改良が見込まれる。また、観測点ごとに見られる「残差」の距離依存性を取り込む非エルゴード的なモデルの構築などの予測値の中央値(あるいは平均値)に関する改良の方向性が示された。
今後は別の地震動予測モデルを用いた場合についての検討を行うとともに、「残差」の分布形状と地震規模、断層最短距離などとの関係についての分析も進める予定である。
謝辞:本研究の一部はJSPS科研費(20H00292)の助成を受けたものである。