The 2022 SSJ Fall Meeting

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Poster session (2nd Day)

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15P] AM-P

Tue. Oct 25, 2022 9:30 AM - 12:00 PM ROOM P-2 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

9:30 AM - 12:00 PM

[S15P-06] Re-examination of source rupture process of the 2002 Denali, Alaska, earthquake (MW 7.9) based on strong-motion waveforms and fault displacements

*Yujia GUO1, Kunikazu Yoshida1, Ken Miyakoshi1,2 (1. Geo-Research Institute, 2. Ohsaki Research Institute, Inc.)

2016年熊本地震 (MW 7.1) をきっかけに,地表地震断層を伴う内陸地殻内地震に対する浅部断層破壊を考慮した特性化震源モデルの設定が喫緊の検討課題となっている.このうち,浅部断層破壊を伴う震源断層の長さがきわめて長い地震に関しては,これまで発生数が比較的少なく,観測データを用いた研究事例も少ないことから,特性化震源モデルの設定手法が確立の途上にある.本研究は,浅部断層破壊を伴う長大断層地震に対する特性化震源モデルの設定手法の高度化へ向けた知見を蓄積することを目的として,長さ300 km以上に及ぶ地表地震断層が出現した2002年11月3日米国アラスカ州Denali横ずれ型内陸地殻内地震 (MW 7.9) を対象に,震源過程解析を行い,震源特性を検討する.

震源過程解析は,10観測点の強震波形の長周期(2-20秒)成分を用いて,マルチタイムウィンドウ線形波形インバージョン法 (Hartzell and Heaton, 1983) により行った.震源近傍の観測データをより良く再現し,震源断層上のすべり量を精度良く評価するため,地表地震断層にできるだけ沿うように走向角が場所ごとに異なる曲面断層面(長さ330.4 km,幅18.9 km)を設定するとともに,解析に使用する速度構造モデル (Frankel, 2004; Eberhart-Phillips et al., 2020) をM4クラスの小地震の波形記録を用いて検証し調整した.速度構造モデルの調整はYoshida et al. (2017) に準拠した手順で行い,理論波形は一次元水平成層構造を仮定し,離散化波数法 (Bouchon, 1981) および反射・透過係数行列法 (Kennett and Kerry, 1979) で計算した.また,この地震の断層全体の平均的な破壊伝播速度は震源域の媒質のS波速度 (3.5 km/s) を超えていないものの,部分的にはS波速度を上回るsupershearを起こす破壊領域が存在したとされる (e.g., Frankel, 2004; Asano et al. 2005).これを踏まえ,破壊伝播速度が場所によって変わりうることへの対応として,活断層調査の情報 (Plafker et al., 1994) を参考に設定断層面を4個のセグメント(西側から,Susitna Glacier, Denali西,Denali東,Totschundaセグメントと呼ぶ)に分割し,セグメントごとに異なる破壊フロントの伝播速度を許容した.しかしながら,この地震の震源域の東側半分では断層近傍の強震観測点が少なく,強震観測点だけですべてのセグメントでの伝播速度を精度良く推定するのは困難であった.そこで,波形インバージョンで得られた断層浅部のすべり分布を地表踏査 (Haeussler et al., 2004) による地表地震断層の永久変位量やその分布と比較し,最終的なすべり分布および伝播速度を試行錯誤的に推定した.

得られた震源モデルによる地震モーメントは9.15×1020 Nm (MW 7.9) であった.主たるすべりはDenali西および東の両セグメントに分布し,その最大すべり量は10 mを超える.すべり分布に対してSomerville et al. (1999) の規範を適用したところ,断層面積は6245 km2,平均すべり量は4.7 mとなった.この地震は3ステージ震源スケーリング則の第3ステージ(Murotani et al., 2015;地震本部,2020)の地震であるが,得られた断層面積はスケーリング則に比べてやや小さく,平均すべり量は約1.6倍と大きかった.本研究に限らず,Asano et al. (2005) の震源過程解析も4 m以上の平均すべり量を推定しており,今後,第3ステージ地震の震源特性に関する知見をさらに蓄積していくことが重要であると考える.次に,同じくSomerville et al. (1999) の規範を適用し,断層面上の大すべり域(アスペリティ)を抽出した.このうち,抽出された地震発生層以浅の大すべり域 (Long-period Motion Generation Area: e.g., Irikura et al., 2020) の平均すべり量は8.7 mであり,これは断層全体の平均すべり量の約2倍程度,地表地震断層の変位量の最大値 (~9 m) と同程度の値であった.

Denali東セグメントでは,破壊伝播速度を変えた試行錯誤の結果,破壊伝播速度が4.7 km/s(supershear;S波速度の135%)のときのすべり分布が地表地震断層の変位量に対する再現度がもっとも良かった.既往研究 (Dunham and Archuleta, 2004; Frankel, 2004; Walker and Shearer, 2009; Zeng et al., 2022) で報告されているsupershear破壊の伝播速度は5.0-5.5 km/s程度で,本研究による値はそれらに比べて若干遅い.この地震に限らず,1999年トルコIzmit地震 (MW 7.6) や2001年中国西部Kunlun地震 (MW 7.8) など,近年の他の長大な横ずれ型断層の地震でもsupershear破壊の報告事例がある (e.g., Bouchon et al., 2010; Huang et al., 2016).今後,supershear破壊が長大な横ずれ型断層の地震に共通する地震特性であるかどうか検討を進めていくことが重要である.


謝辞:COSMOS Virtual Data Center (https://www.strongmotioncenter.org/vdc/scripts/event.plx?evt=814) およびIRIS Data Management Center (http://ds.iris.edu/wilber3/find_event) の波形記録を使用した.本研究は原子力規制庁の委託業務「令和3年度原子力施設等防災対策等委託費(内陸型地震の特性化震源モデルに係る検討)事業」による成果の一部である.