09:30 〜 12:00
[S15P-12] 首都圏における再現期間に応じた応答スペクトルの評価
・はじめに
防災科研のJSHIS1)によると、フィリピン海プレートと太平洋プレートの震源が予め特定できない地震が都心の地震ハザードに大きく寄与する。性能設計2)は基本的な考え方として再現期間に応じた地震動強さに対して建物損傷をコントロールする。対象とする地震に対して性能設計を行う場合は、その地震動の再現期間と地震動強さの対応を明らかにする必要がある。本研究では、ばらつきを考慮した断層モデルを作成して、関東平野周辺のフィリピン海プレートおよび太平洋プレートの内部と上面で発生する地震を対象とした、再現期間に応じた工学的基盤における速度応答スペクトルを評価した。
・再現期間委応じた応答スペクトルの評価方法
地震本部と同様に定常ポアソン過程を仮定した。ある周期の速度応答スペクトルYがt年間にyを超える確率Pは(1)式で表される。Yの再現期間Tは(2)式である。
P(Y>y) = 1-exp(-v(Y>y)*t) (1)
T=1/P(Y>y) (2)
(1)式のv(Y>y)は応答スペクトルYがyを超える年あたりの頻度で(3)式で表される。
v(Y>y)= ΣjΣk vj,kΣi Pj,k(Y>y|mi)Pj,k(mi) (3)
添え字j,kは地震タイプと地震活動の小領域を表す。vj,kはM5以上の年発生頻度である。地震タイプはフィリピン海プレートのプレート内か上面あるいは太平洋プレートのプレート内あるいは上面の地震である.miは0.1間隔の規模(マグニチュード)である。Pj,k(mi)は規模がmi±0.05に収まる確率でGR式から算定する。Pj,k(Y>y|mi)は規模がmiの時にYがyを超える条件付き確率で、mi毎にばらつかせた断層モデルを設定し、評価地点のYが各周期で対数正規分布すると仮定して算定する。
・地震動計算手法と地下構造
地震動計算には統計的G法を用いた。地震本部3)の三次元地下構造モデルから評価地点直下の構造を抽出した。
・地震活動領域、小領域と最大/最小規模
地震本部3)は太平洋プレートとフィリピン海プレートの震源が予め特定できない地震の活動域をそれぞれ16個と9個に区分している。これらの中から関東周辺の活動域を選び、それらを20km四方の小領域に分割した。この小領域が(3)式のkである。vj,kは地震本部3)の0.1°メッシュの発生頻度データから求めた。地震本部は、M7程度以上の地震に対しては0.1°メッシュではなく矩形の断層面を一様に配置し、断層毎に発生頻度を付与している。そのような場合、地震本部の断層中心に断層を配置し、地震本部の断層毎の発生頻度を用いた。最大規模は地震本部の活動域毎の最大規模を用い、最小規模はvj,kが小さく影響が無視できたためM6.0前後とした
・フィリピン海プレート内で発生する地震の震源断層
小領域毎に基準メカニズム(走向,傾斜,すべり角)を設定し、同メカニズムから断層面を張った。他の断層パラメータは中央防災会議に倣って設定した4)。フィリピン海プレート内部のP軸とT軸5)から基準メカニズムを設定した。断層モデルにばらつきを付与した。走向と傾斜は中規模の実地震のCMT解を分析して、基準メカニズムのP軸とT軸回りを±27 °回転してばらつかせた。断層面は共役の2ケースを設定した。アスペリティは断層中心に設け、破壊開始点はアスペリティの底辺左右に設定した。
・フィリピン海プレート上面で発生する地震の震源断層
基準メカニズムの傾斜と走向はプレート沈み込みの方向とその直交方向、すべり角は90°とした。断層パラメータの設定は地震本部レシピ3)に倣った。短周期レベルには経験式6)を用いた。断層の走向と傾斜は中規模の実地震のCMT解を分析して、基準メカニズムのP軸とT軸回りを±15°回転してばらつかせた。M6.8以下ではアスペリティは1つで、破壊開始点はアスペリティ底辺の左右に設定した。M6.9以上では大小2つのアスペリティを設定し、左右を入れ替えたケース、破壊開始点は大アスペリティの底辺左右と小アスペリティの底辺中心に設定した。
・太平洋プレートのプレート内部と上面で発生する地震の震源断層
基本的にフィリピン海プレートと同様に設定した。テキスト数の制限のため割愛し、発表時に述べる。
・新宿における結果
再現期間が500年、1000年、2500年の応答スペクトルを示す。これらの再現期間は性能設計等で基準として多く用いられる再現期間である、高層建築や免震建物の固有周期である周期2秒以上では、再現期間1000年の速度応答スペクトルは70~100cm/s程度であった。
・今後の課題
今回の本研究の断層モデルの走向と傾斜のばらつきには、中規模の実地震のばらつきを反映したが、より大きな地震のばらつきは更なる検討が必要である。また断層パラメータの設定に用いる経験式に関しても今後検討を進める。今回はまだ検討の初期段階であり、今後変更する可能性が高い。
1) https://www.j-shis.bosai.go.jp/
2) 日本建築構造技術協会,2018
3) 地震調査委員会,2020
4) 首都直下地震モデル検討会,2013
5) Nakajima et. al.,2011
6) 佐藤,2016
防災科研のJSHIS1)によると、フィリピン海プレートと太平洋プレートの震源が予め特定できない地震が都心の地震ハザードに大きく寄与する。性能設計2)は基本的な考え方として再現期間に応じた地震動強さに対して建物損傷をコントロールする。対象とする地震に対して性能設計を行う場合は、その地震動の再現期間と地震動強さの対応を明らかにする必要がある。本研究では、ばらつきを考慮した断層モデルを作成して、関東平野周辺のフィリピン海プレートおよび太平洋プレートの内部と上面で発生する地震を対象とした、再現期間に応じた工学的基盤における速度応答スペクトルを評価した。
・再現期間委応じた応答スペクトルの評価方法
地震本部と同様に定常ポアソン過程を仮定した。ある周期の速度応答スペクトルYがt年間にyを超える確率Pは(1)式で表される。Yの再現期間Tは(2)式である。
P(Y>y) = 1-exp(-v(Y>y)*t) (1)
T=1/P(Y>y) (2)
(1)式のv(Y>y)は応答スペクトルYがyを超える年あたりの頻度で(3)式で表される。
v(Y>y)= ΣjΣk vj,kΣi Pj,k(Y>y|mi)Pj,k(mi) (3)
添え字j,kは地震タイプと地震活動の小領域を表す。vj,kはM5以上の年発生頻度である。地震タイプはフィリピン海プレートのプレート内か上面あるいは太平洋プレートのプレート内あるいは上面の地震である.miは0.1間隔の規模(マグニチュード)である。Pj,k(mi)は規模がmi±0.05に収まる確率でGR式から算定する。Pj,k(Y>y|mi)は規模がmiの時にYがyを超える条件付き確率で、mi毎にばらつかせた断層モデルを設定し、評価地点のYが各周期で対数正規分布すると仮定して算定する。
・地震動計算手法と地下構造
地震動計算には統計的G法を用いた。地震本部3)の三次元地下構造モデルから評価地点直下の構造を抽出した。
・地震活動領域、小領域と最大/最小規模
地震本部3)は太平洋プレートとフィリピン海プレートの震源が予め特定できない地震の活動域をそれぞれ16個と9個に区分している。これらの中から関東周辺の活動域を選び、それらを20km四方の小領域に分割した。この小領域が(3)式のkである。vj,kは地震本部3)の0.1°メッシュの発生頻度データから求めた。地震本部は、M7程度以上の地震に対しては0.1°メッシュではなく矩形の断層面を一様に配置し、断層毎に発生頻度を付与している。そのような場合、地震本部の断層中心に断層を配置し、地震本部の断層毎の発生頻度を用いた。最大規模は地震本部の活動域毎の最大規模を用い、最小規模はvj,kが小さく影響が無視できたためM6.0前後とした
・フィリピン海プレート内で発生する地震の震源断層
小領域毎に基準メカニズム(走向,傾斜,すべり角)を設定し、同メカニズムから断層面を張った。他の断層パラメータは中央防災会議に倣って設定した4)。フィリピン海プレート内部のP軸とT軸5)から基準メカニズムを設定した。断層モデルにばらつきを付与した。走向と傾斜は中規模の実地震のCMT解を分析して、基準メカニズムのP軸とT軸回りを±27 °回転してばらつかせた。断層面は共役の2ケースを設定した。アスペリティは断層中心に設け、破壊開始点はアスペリティの底辺左右に設定した。
・フィリピン海プレート上面で発生する地震の震源断層
基準メカニズムの傾斜と走向はプレート沈み込みの方向とその直交方向、すべり角は90°とした。断層パラメータの設定は地震本部レシピ3)に倣った。短周期レベルには経験式6)を用いた。断層の走向と傾斜は中規模の実地震のCMT解を分析して、基準メカニズムのP軸とT軸回りを±15°回転してばらつかせた。M6.8以下ではアスペリティは1つで、破壊開始点はアスペリティ底辺の左右に設定した。M6.9以上では大小2つのアスペリティを設定し、左右を入れ替えたケース、破壊開始点は大アスペリティの底辺左右と小アスペリティの底辺中心に設定した。
・太平洋プレートのプレート内部と上面で発生する地震の震源断層
基本的にフィリピン海プレートと同様に設定した。テキスト数の制限のため割愛し、発表時に述べる。
・新宿における結果
再現期間が500年、1000年、2500年の応答スペクトルを示す。これらの再現期間は性能設計等で基準として多く用いられる再現期間である、高層建築や免震建物の固有周期である周期2秒以上では、再現期間1000年の速度応答スペクトルは70~100cm/s程度であった。
・今後の課題
今回の本研究の断層モデルの走向と傾斜のばらつきには、中規模の実地震のばらつきを反映したが、より大きな地震のばらつきは更なる検討が必要である。また断層パラメータの設定に用いる経験式に関しても今後検討を進める。今回はまだ検討の初期段階であり、今後変更する可能性が高い。
1) https://www.j-shis.bosai.go.jp/
2) 日本建築構造技術協会,2018
3) 地震調査委員会,2020
4) 首都直下地震モデル検討会,2013
5) Nakajima et. al.,2011
6) 佐藤,2016