9:30 AM - 12:00 PM
[S16P-01] An investigation of improving sound pressure level and Resolution in seismic reflection survey using underwater speaker
1.はじめに
反射法地震探査は資源探査や地盤構造の推定、地震防災に至るまで幅広い活用がされている。東京海洋大学探査工学研究室では、海上での反射法地震探査において、振源に水中スピーカーを利用した探査システムの開発に取り組んでいる。水中スピーカーの採用によって、探査システムの小型化、海洋生物への負荷低減が実現でき、東京湾等の船舶輻輳海域における調査が可能となった。実際に東京湾北部を調査した結果、海底下数十m程度まで地下構造を映像化することができ、ガス層の存在も明らかとなった(Tsuru et al. 2019, EPS)。
当研究室では発振波形として非パルス波である、疑似乱数列を用いたランダム波形を使用している。ただし、データ解析の際、取り扱う波形データはパルス波である必要があるため、発振波形と観測波形で相互相関処理を行うことで非パルス波をパルス波に圧縮処理する。
相関波形で得られるパルス波を解析に用いるため、この波形はサイドローブが小さく、シグナル値(ピーク値)が大きいことが望ましい。ここで、相互相関波形は発振波形によって形状が変化するが、どのような発振波形を用いた場合、最もデータ品質の向上に繋がる相互相関波形が得られるかについては検証が不十分である。そこで、本研究では観測データの音圧レベル・分解能向上を目的として、発振波形の最適化を試みた。
2.発振波形の最適化検討
最適化を検討するうえで、まず過去の東京湾での調査データより、減衰(Q値)を推定した。作成した発振波形にその減衰効果を適用して得られた波形を観測波形と仮定し、この2つの波形に対して相互相関処理を行い、波形を評価する。
本研究では、波形を音圧レベルと分解能の2つの観点で評価するために、相互相関波形のシグナル値と発振波形の振幅の比を「音圧レベル評価値」、シグナル値とサイドローブの比を「分解能評価値」として、2種類の評価値を導入した(Figure.1)。
発振波形は、サンプリング間隔や波形長等の条件を変更して複数作成し、それぞれの条件における評価値の傾向を調査した。
3.河川の川底調査
2のシミュレーションで良い評価を得られた発振波形を実際に実地調査で使用した。2022/6/2~6/4の期間で東京湾北部に流入する河川の川底探査を実施し、そこで得られた観測結果を速報として報告する。
4.結果・まとめ
発振波形の最適化検討の結果、サンプリング間隔・波形長の一方のみを変化させた場合、評価値は共に一次関数的な変化をした。波形長は1s増加するごとに、音圧レベル評価値は38.8%向上、分解能評価値は8.4%向上し、サンプリング間隔は0.1ms短縮するごとに、音圧レベル評価値は33.3%向上、分解能評価値は20.7%向上した。
川底調査では、断層やガス層と考えられる地下構造が確認された。一方で、観測データ解析の際に波形長の増加による水平分解能の低下、シミュレーション上ほど音圧レベルが向上していないといった問題が見受けられた。音圧レベルに関しては振源に用いた水中スピーカーの機械特性が原因として考えられ、今後の留意するべき課題といえる。
反射法地震探査は資源探査や地盤構造の推定、地震防災に至るまで幅広い活用がされている。東京海洋大学探査工学研究室では、海上での反射法地震探査において、振源に水中スピーカーを利用した探査システムの開発に取り組んでいる。水中スピーカーの採用によって、探査システムの小型化、海洋生物への負荷低減が実現でき、東京湾等の船舶輻輳海域における調査が可能となった。実際に東京湾北部を調査した結果、海底下数十m程度まで地下構造を映像化することができ、ガス層の存在も明らかとなった(Tsuru et al. 2019, EPS)。
当研究室では発振波形として非パルス波である、疑似乱数列を用いたランダム波形を使用している。ただし、データ解析の際、取り扱う波形データはパルス波である必要があるため、発振波形と観測波形で相互相関処理を行うことで非パルス波をパルス波に圧縮処理する。
相関波形で得られるパルス波を解析に用いるため、この波形はサイドローブが小さく、シグナル値(ピーク値)が大きいことが望ましい。ここで、相互相関波形は発振波形によって形状が変化するが、どのような発振波形を用いた場合、最もデータ品質の向上に繋がる相互相関波形が得られるかについては検証が不十分である。そこで、本研究では観測データの音圧レベル・分解能向上を目的として、発振波形の最適化を試みた。
2.発振波形の最適化検討
最適化を検討するうえで、まず過去の東京湾での調査データより、減衰(Q値)を推定した。作成した発振波形にその減衰効果を適用して得られた波形を観測波形と仮定し、この2つの波形に対して相互相関処理を行い、波形を評価する。
本研究では、波形を音圧レベルと分解能の2つの観点で評価するために、相互相関波形のシグナル値と発振波形の振幅の比を「音圧レベル評価値」、シグナル値とサイドローブの比を「分解能評価値」として、2種類の評価値を導入した(Figure.1)。
発振波形は、サンプリング間隔や波形長等の条件を変更して複数作成し、それぞれの条件における評価値の傾向を調査した。
3.河川の川底調査
2のシミュレーションで良い評価を得られた発振波形を実際に実地調査で使用した。2022/6/2~6/4の期間で東京湾北部に流入する河川の川底探査を実施し、そこで得られた観測結果を速報として報告する。
4.結果・まとめ
発振波形の最適化検討の結果、サンプリング間隔・波形長の一方のみを変化させた場合、評価値は共に一次関数的な変化をした。波形長は1s増加するごとに、音圧レベル評価値は38.8%向上、分解能評価値は8.4%向上し、サンプリング間隔は0.1ms短縮するごとに、音圧レベル評価値は33.3%向上、分解能評価値は20.7%向上した。
川底調査では、断層やガス層と考えられる地下構造が確認された。一方で、観測データ解析の際に波形長の増加による水平分解能の低下、シミュレーション上ほど音圧レベルが向上していないといった問題が見受けられた。音圧レベルに関しては振源に用いた水中スピーカーの機械特性が原因として考えられ、今後の留意するべき課題といえる。